テラーノベル
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第9話 「言葉にした瞬間、戻れない」
夜風が、やけに冷たかった。
《Nocturne》の裏口前。 ネオンの光が少しだけ路地を照らしている。
prは動かなかった。
tgも、すぐには答えなかった。
「お前さ」
もう一度、prが言う。
「俺のことどう思ってる」
その声はいつもより低くて、 逃げ道を塞ぐみたいに真っ直ぐだった。
tgは少し困ったように笑う。
「えっと……」
「“いいやつ”とか、そういうのじゃねぇ」
「……うん」
沈黙が落ちる。
遠くで車の音。
それだけがやけに大きい。
tgは視線を落とした。
「prちゃんはさ」
「ん」
「優しいよね」
「……今それ聞いてねぇ」
即答。
でも声は荒くなかった。
むしろ、 必死に抑えてるみたいだった。
tgは小さく息を吸う。
「優しいし」
「ちゃんと見てくれるし」
「危ないとき助けてくれるし」
「……」
「一緒にいると、安心する」
prの指がわずかに動く。
tgは続けた。
「でもさ」
「……うん」
「僕、そういうの……」
言いかけて、止まる。
prは一歩も動かない。
目だけで追っている。
逃がさないみたいに。
tgは困ったように笑った。
「ごめん、うまく言えない」
「いいから言え」
その声に、 少しだけ焦りが混じった。
tgはびくっとする。
そして、小さく言った。
「……prちゃんのこと、好きだよ」
空気が止まった。
音が消えたみたいに。
prの呼吸が一瞬だけ遅れる。
「……どの意味で」
絞り出すような声。
tgは顔を上げる。
少し赤い。
でも、いつもの笑顔も混ざってる。
「えっと……」
「友達としても好きだし」
「……」
「でも、prちゃんといるとちょっと変な感じする」
prの喉が動く。
「変って何」
tgは少し考えてから言う。
「ドキドキするっていうか……落ち着くっていうか」
「どっちだよ」
「どっちも」
あっさり。
その言い方が、 余計にずるい。
prは視線を逸らす。
「……それ、誰にでも言ってんのか」
その言葉が出た瞬間、 自分でも嫌になるくらい声が硬くなった。
tgはきょとんとした。
「え?」
「他のやつにも、そういうこと言うのかよ」
一瞬。
空気が変わる。
tgは少しだけ驚いた顔をしたあと、 ゆっくり首を振った。
「言わないよ」
「……」
「prちゃんには、特別かも」
また、それだ。
“特別”
その言葉だけが、 何度も刺さる。
prは一歩近づく。
tgは逃げない。
逃げないどころか、 少しだけ顔を上げる。
距離が近い。
呼吸が当たるくらい。
「……それ、やめろ」
「え?」
「そういう曖昧なの」
声が震えそうになる。
「期待するだろ」
tgの目が揺れる。
「……期待?」
prは一度目を閉じる。
そして開く。
もう戻れない気がした。
「俺はお前のこと」
「……」
「ちゃんと好きだ」
tgの呼吸が止まる。
prは続ける。
「友達とか、そういうのじゃなくて」
「お前が笑ってるの見て腹立つくらい」
「他のやつと話してるとムカつくくらい」
「触られると、落ち着かなくなるくらい」
言葉が止まらない。
止められない。
「そういう意味で、好きだ」
沈黙。
長い。
tgは目を丸くしたまま、 何も言えないでいる。
prは一歩下がる。
「……引いたなら、それでいい」
「忘れろ」
そう言って背を向けようとした瞬間。
袖が掴まれた。
「待って」
tgの声。
小さいのに、はっきりしてた。
prは止まる。
振り返れない。
「……今の」
tgが続ける。
「もう一回言って」
「……は?」
prの声がかすれる。
tgは少し笑っていた。
でも、目は真剣だった。
「ちゃんと、聞きたい」
――夜が、止まる。
――続く。
ちなみにですね、
この、
宵闇の中のジョーク
が10話目でおわるんすよ、
そのあと、このおはなしの番外編?というか、また、このおはなしの、続き?みたいなのが、でるよん!
ちなそれ20話の最後までがんばってかいた
コメント
3件
あー、あー、あー、もうなんでだよー!!さいこうすぎるだろうーー!!!!
第9話、読み終えました…!prちゃんの「ちゃんと好きだ」からの畳みかけ、すごく良かったです。普段落ち着いてる彼が、言葉を止められなくなる感じが切なくて。tgちゃんの「もう一回言って」で止まる夜の空気感、見事でした。次の10話で一旦区切りなんですね。この先の番外編も楽しみにしてます🌙