雨音を聞くとあの時を思い出す。 夏というのは想像以上に雨が多いと思う。
そう、キッカケは雨だった。
皆が天知さんと一緒に過ごせると思ってワクワクしている中、天知さんが気まずそうに言った。
「申し訳ないんだけど…うち、これから予定あるから帰っちゃうんだよね〜…」
そう言った後、違うマネージャーさんに行ってもらわないと、と天知さんは付け足した。
部員達は驚いたような顔をした後、明らかに不満そうな顔をした。
「葵ちゃんとふたりっきりになれるチャンスだったのにー!他のマネージャーって誰だっけ? 」
一人の部員がそう言うと周りも賛同するように頷いた。
何が「誰だっけ?」だ。あんなに頑張ってる君を忘れるなんて馬鹿じゃないのか。
そう言いそうになったが言葉を喉に押し込めた。
「なら、僕が行くよ。」
「おっ!行ってくれんのか!買い出し頼むわ〜」
そんな言葉を交わしつつ、僕は君を見た。
多分、君も天知さんじゃなくて、ガッカリされているのを悟ったのか、気まずそうな顔をしていた。
「僕と行こう」
「うん…行こう」
ドキドキする心を隠しながら君に話しかけた。
買うものを確認すると、僕らは体育館を出て歩き始めた。
「…葵ちゃんじゃなくてガッカリしたよね…買い出しに付き合わせちゃってごめんね。」
君が突然言い出した。
「そんな事ないよ。藤花さんもマネージャーとして僕たちのこと支えてくれてるの、知ってるからさ。」
なんなら、部員の中で一番君のこと見てる気がする。なんて考えながら僕は言った。
「葵ちゃんじゃないって知ったとき周りの人がガッカリしてるの分かったからちょっと不安で…」
「僕は寧ろ君が…」
そう言いかけたタイミングで雨が降ってきた。
「藤花さん!急いであそこに!」
「う、うん!」
僕達は急いで、バス停に駆け込んだ。
「ビックリした〜…荷物は大丈夫?」
「何とか…荷物は濡れずに済んだよ。」
少し強めの雨で帰るにも帰れず、僕たちは困り果てていた。
「うーん…どうやって帰ろう…」
「おーい!紅!」
悩んでいると急に名前を呼ばれた。誰かと思って見ると、そこには友人の朔がいた。
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