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「ただいまー……」

寮のドアを開けた瞬間、遥は違和感に気づいた。

……静かすぎる。あのうるさい奴の声が、どこにもない。

「……あれ?奏太は?」

遥が静かに問いかけると、翠珠が首をかしげる。

「ちょっと前に、出ていった。『ジュース買ってくる!』って……でもそれっきり戻ってきてない。」

ルゥも、腕を組んで小さくうなる。

「おかしいわ。奏太、そんなに静かに出て行くタイプじゃないのに。」

遥がふと立ち止まった。

見慣れた玄関の靴箱、その一角に――

奏太の学生証が、ぽつんと落ちていた。

しかも、そのすぐ隣に、真っ白な羽根が一枚。

「……これは……。」

嫌な予感が胸を締め付けた。

「遥……これ……。」

梨亜もそれに気づき、表情を曇らせる。

「……まさか……。」

遥は息が止まりそうになる。

奏太が――いない。

森へと駆け出した2人は、すぐに霊力の痕跡を追い始めた。

まばらに残る、奏太の霊力。

近づけば近づくほど、それは弱く、途切れ途切れに……。

「……急がないと。」

梨亜が杖を握りしめ、前を睨む。

その時――

遥の視界が、ふっと霞んだ。

体が硬直し、呼吸が詰まる。

「――っ、遥!? 大丈夫!?」

梨亜が駆け寄り、慌てて杖を掲げる。

「ヒール!」

優しい光が遥を包み、息が戻る。

「……すまない、助かった。」

遥は深く息を吐き、気を取り直す。

そのやりとりを見ていた翠珠とルゥが、心配そうに叫ぶ。

本来、使い霊の声は主人にしか聞こえないはずなのに――。

「大丈夫なの!?」

「無理しちゃダメだよ!」

その必死な声に、遥も梨亜も苦笑した。

「……翠珠、ルゥ。頼む、先生に救護班を呼んできてくれ。」

「任せて!」

「すぐ戻るから!」

2匹は勢いよく森を駆け抜け、静寂の中に足音が消えていく。

残された2人は、再び森の奥へと足を踏み入れる。

血痕と白い羽根は、さらに奥へ――

まるで何かに引きずられるように、続いていた。

やがて、静まり返った空間で――

倒れている奏太を見つけた。

「奏太……!」

遥は駆け寄り、彼を抱き起こす。

その体は冷たく、弱々しい。

だが、まだ生きている――その確信だけが2人を支えた。

「ヒール!」

梨亜がもう一度回復魔法をかける。

その光が消えた時――。

すっと、奏太の体が霧のように消えていった。

「……嘘だろ……?」

遥の目が大きく見開かれる。

そこには、さっきまで奏太が倒れていた場所から

さらに森の奥へと続く、大量の白い羽根と、

より濃い――真っ赤な血痕が残されていた。

「まだ……引きずっていくつもり……?」

梨亜の声が震える。

遥は刀を構え、

梨亜は杖を握り直す。

「……行くぞ、梨亜。」

「……うん。」

仲間を取り戻すために――

2人は再び、闇の奥へと走り出した。

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