テラーノベル
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高い審判台の上からは、二人の気迫がより鮮明に伝わってきた。
コートの四隅を見渡し、私は必死に視線を動かす。
「……プレイ!」
私の声を合図に、遥の強烈なサーブが炸裂した。凌先輩はそれを難なくリターンし、低く鋭いラリーが続く。
「……おい、朝倉。さっきのはインか、アウトか」
突然、すぐ下から低い声がした。
驚いて視線を落とすと、小谷先生が審判台の梯子に足をかけ、すぐ後ろまで登ってきていた。顧問としての厳しい視線が私の手元の記録用紙を覗き込んでくる。ミスをしたら怒られる……というマネージャー特有の緊張感で、背筋が凍りつく。
「えっ……あ、イン……です。ギリギリ、ラインに乗っていました」
「ほう。よく見てるな。……じゃあ、次のはどうだ」
先生は私のすぐ肩越しにコートを凝視し、ジャッジの正確さを試してくる。二人の対決を正しく裁かなければならないプレッシャーと、先生の放つ独特の威圧感で、私は息をするのも忘れそうだった。
「……紗南! どっちだよ!」
遥の叫びで我に返る。
凌先輩が放った絶妙なドロップショット。遥は必死に食らいついたが、ボールがバウンドした場所は――。
「……アウト! ポイント、凌先輩!」
私が宣告すると、凌先輩が爽やかな笑顔でこちらを見上げた。
「ありがとう、紗南ちゃん。ちゃんと見ていてくれたんだね」
「……チッ、今のがアウトかよ。……っていうか、先生」
遥はラケットで肩を叩きながら、不服そうに審判台を見上げた。
「そこに先生がいたら、紗南が緊張して見間違えるだろ。邪魔っすよ」
遥の身も蓋もない物言いに、先生は「……フン、そうか」と短く答えると、悠々と地面に降りた。
けれど、去り際に先生が「……正解だ。よく見ていたな」とボソッと呟いた。それは、厳格な先生からの、珍しい「合格点」だった。
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