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ついてないなぁ……。乗り換えるはずだった電車に事故があったらしい。一応この駅からのバスで別の駅まで行けるようだが、そうとう時間がかかるようだ。電車の復旧にどれくらいかかるか分らないが、1時間や2時間程度なら駅で待っていた方がましだ。そのせいか、誰もバス停に向かう人はいなかった。
ただ、俺は先を急ぐ旅ではなかった。大学生の夏休み、特にあてもなくふらふらしているだけだ。それなら、せっかくだから普段は絶対乗ることのないバスの旅も悪くないだろう。バスは定刻通りに到着し、乗客を乗せ始めた。りあえず近くの二人掛けの席に腰を下ろし、発車するのを待った。
俺意外に駅から乗る客はいなかった。バスはすぐに発車した。窓の外を流れる景色を、俺はなんとなく目で追っていた。
途中もほとんど乗客がいなかったが、ある村に通りかかったとき、子どもの一団が乗り込んできた。こんな田舎でもまだこんなに子どもがいるんだな、となんとなく眺めていたが、あるものを見て動きが固まってしまった。
子ども達の一団に、裸の女の子が混ざっていたのだ。その子は四つん這いで、子ども達はまるでペットのようにその女の子を扱っていた。犬か猫のようにその女の子は首輪をはめ、リードを引いている男の子もいた。
あまりに異様な光景に、俺は目を奪われていた。だが、運転手は特に異常を感じた風でもなく運転を続けている。俺の目の錯覚か、とも思ったが、確かに裸の女の子だった。
見間違いではなかった。女の子は四つん這いで、というより犬のように歩かされていた。首輪とリードを引かれながら、おとなしく子ども達に付き添っている。俺はその様子から目を離すことができなかった。
いったいあの女の子は何者なのだろうか? 俺がそんなことを考えているうち、バスは目的地に着いたらしく、子ども達は降りていた。
あの子達はなんだったのだろう? ただの子ども達の遊びだったのだろうか? それとも誘拐か何かか? わからない。ただ、あの子達は女の子をまるでペットのように扱っていた。それこそ犬のように。だとすると、このまま見過ごすわけにはいかないんじゃないか……? そんなことを考えているうちにバスは発車し、女の子の姿は見えなくなった。
俺は混乱したまま、あの女の子がどうなったのかを確かめようと、次のバス停で降りることにした。ここからさっきの女の子が降りたはずの方角に進むと、あの女の子に会えるかもしれない。
この日は天気が良く、しばらく歩いていると汗ばんできた。コンビニでお茶かジュースの一本でも買いたいところだが、こんな村にそもそもコンビニがあるかどうか? と、思っていたら、やけに真新しい自販機があった。自販機は日本全国どこにでもあるんだな、そんなことを考えながら俺はお茶のペットボトルを買って喉を潤した。
「さてと」
俺はひとまず、村を一周してみることにした。だいたい村を一周すると、どれくらいかかるものなのだろうか? 俺は適当に方向を決めて、歩き始めた。
だが、お目当ての、女の子を連れた子ども達の一団はなかなか見つからなかった。バス停とバス停の間がけっこう空いていたからな……。そんなことを思いながら歩いていると、なんだか急に眠気が襲ってきた。
「少し、休むか……」
俺は適当なところで腰を下ろし、少し休むことにした。
どのくらい眠ったのだろうか? 俺は目を覚まして、自分がどこにいるのか一瞬わからなかった。「ここはいったい……? あ、あれ?」
何かおかしいと思ったら、どうやら俺は椅子に縛りつけられているようだった。「え、なんだこれ?」
俺は自分の置かれた状況がすぐ飲み込めなかった。椅子の脚に両足を縛りつけられていて、全く身動きができないようだった。
いったいこれはどういうことなんだ? なんで俺がこんな目に? と、そのときだった。急に部屋の明かりが点き、俺は眩しさのあまり目を細めた。
「お目覚めかな?」
(続く)
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