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羽海汐遠
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天楽°
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#塩レモン
comi
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「…………」
とはいえ、私達は何もできずにいた。
圧倒的な強さを前に、何をしろというのか。
「…内田さんの細菌は、使えないの…?」
「直接触れて注入することができれば…空気感染だと皆死ぬ」
「…便利な能力も、使いようによっては身を滅ぼすってわけか」
悠真が遠くを見つめながら言う。
私はふと春子の方を見た。
「…春子が開花して、なにか変わらないかな」
「さぁね。開花したらなにか変わるかもしれないけど、開花する条件が分からないんじゃあ厳しいよね」
ギリスが石で遊びながら淡々と答える。
「内田さんは死がトリガーだった。春子は致命傷を負ったけど発動しなかった。つまり負傷は関係なさそうだ。死を試すのは無理だし。」
「…」
「…本当に、殺すしか、無いんすか」
慶斗君が俯きながら質問する。
「…それ以外、もう今は道がないと思う」
「…」
「どのみち…近いうち真弥は…我々を殺しに来るだろうな…」
「待っててもしょうがない」
八雲が立ち上がった。
「別にそこで待ってれば?私が殺してくる」
「っ…!?無茶だ…そんなの…」
「無茶とか無理とか関係ないね。」
八雲は手から青い剣を出し、それを私達に突き付けた。
「手伝えなんて言ってない。ただ邪魔をしないで。邪魔するやつは私の敵。そこで黙って待ってたって、私は文句言わない。」
「八雲…」
「…じゃあ」
八雲は走って行ってしまった。
「追いかけないとっ…」
「やめとけ…殺されるぞ」
「でもっ…」
「これでもし八雲が本当に倒してくれたら…それはそれでいい事じゃない?」
香織が私にそう言った。
「それに助かったってどうせ地球上には、私達しかいない」
香織は遠くを見つめた。
「…結局助からないんじゃない?」
「そんな簡単に諦めていいの!?」
「…簡単に諦めれるような事だから、八雲を止めなかった」
「…!」
「本来他人に運命を任せるなんて、私絶対嫌だし」
「…」
確かに、八雲の勇気は一体どこから来てるのか分からないが、任せてみるのも良いのかもしれない。
「…もう休もうぜ」
「うん…どうせ終わるなら、ゆっくり休みたいよ…」
皆が段々と諦めていった。
「っ…」
香織の言葉に一理あると思いながらも、私はじっとしていられそうになかった。
そこで突然、グースが私を見る。
「…そういえば、あの八雲という女は…どこから来たんだ…?」
「…分からない、突然来て、突然助けられて…突然….居なくなった。」
「…どこから来たのかも、何者かも知らない、仮面すら外さない。」
「…変じゃないか?」
ギリスが立ち上がる。
「彼女の行動全て。」
「…どういうこと?」
その場にいた全員がギリスの言葉に耳を傾けた。
「ネスティの空間支配に突っ込んでまで、なぜ君達を助けたんだ?」
「…お人好しなんだろ」
「ほんとにそれだけ?君達は本当に彼女を知らないのか?」
「全く知らない…顔も見せてくれないし 」
「なぜ?」
「ぐちゃぐちゃだから…って」
「顔を見られたくないがための嘘の可能性は?」
「…無くはない」
「正体を…知られたくないが…他者は助けたい…か、まるでロアだな…」
「でもあれはロアじゃないな、ロア並みの強さだったら能力を継ぐ時に記憶以外に多少人格まで………」
ギリスが目を見開く。
「人格…….まで….」
「…?」
「ロアの……人格は…….どこ…?」
グースが思い出したように話す。
「…奈緒、お前も見たと思うが…真弥の能力を見ると、前身が無いと…書いてたな…?」
「うん…」
ギリスがハッとした顔でこっちを見る。
「ロアはまだどこかで生きてるっ…!!」
「えっ…でも、能力が継がれたということは死んだんじゃないの…?」
「いやっ…能力の漏洩が起きた原因は…フィゲルダの結界に傷ができたからだ…」
「っ…!そうなのか!?」
私達は身を乗り出してギリスの話を聞く。
「思い出せグース!!フィゲルダの結界に傷ができたと報告されてから僕達より先に偵察に出たのはロアだ!!それで連絡が取れなくなって、そこで僕達が3人で出た!」
「…!!」
「僕達は能力を回収するついでにロアの捜索をしてただろ!!」
ギリスの表情が明るくなる。
「ロアは死んでなかったんだ!!能力が継がれていたから死んだと思っていたが…能力だけ失った状態でどこかで生きてる!!」
「…そんな上手い話があるのか…?」
「あるさ…!ロアを探そう」
「ちょちょちょちょ…」
叶太がギリスとグースを手で制する。
「能力が無い状態で生きれるのか…?こんな状況で?ハートさんは人間じゃないんだろうが、真弥が殺戮を繰り返してる中で生きれるとは到底思えねぇよ…」
「…やってみる」
「奈緒…?お前マジで言ってんの?」
「もしかしたらエトロアさんが真弥を殺せる唯一の希望かもしれない」
「…」
「ギリス…私は、協力する。」
真弥を助けられるならと、私はギリスとグースに協力することにした。
「…俺も行く」
悠真が手を挙げる。
「…俺も」
叶太も。
そうして次々に手が上がり、最後に残ったのは春子。
「…春子…?」
「あのっ…私っ…」
震えている。
「皆と違って…能力もなくてっ…弱いからっ…怖いの…」
「…!」
確かに春子には怖いはずだ。
理解不能な状況で、戦う術がないのだから。
「その…反対はしないからっ…ここにいたい…です…」
「…うん、春子、気をつけてね」
「…!うん」
私達は春子を安全なところに置いて、ハートのジャック、エトロアを探しに行くことにした。
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「探すっても、手がかり1つないじゃないすか」
慶斗君がギリスに言う。
「…そうかもしれないね、でも同族の僕達なら何かを感じることはできるかもしれない」
「…はぐれないようにしよう」
「真弥には、私達が見えてるのかな…」
愛菜が少し怯えながら言う。
「空間支配を使えるなら…..有り得なくは…ない…」
全員が色々な推理をして答えを探しながら歩く。
私は歩いている間、八雲が気になって仕方かたなかった。
八雲…もう真弥と会ったのかな…
まさかもう死んだ…?
いや、分からない、八雲なら戦えるかもしれない。
「…奈緒?」
悠真が肩を叩く。
「あっ…ごめん」
「いや…考え込んでたから」
「うん…」
「……何度も言うけど、俺の事助けてくれて、ありがとな」
「お礼なんていいよ…助かったんだし」
「…なんで俺の事なんか助けたんだよ、俺は真弥をいじめた挙句家を燃やす作戦に手を貸したんだぞ」
悠真は自分の行いを恨むかのように自分の腕を強く握りながら言った。
「…悠真だから、とかじゃなくて、危なかったからだと思う。」
「…」
「内田さんや香織は、もう見捨てるつもりだったんだって。確かにそれは正しかったと思う、状況的に。」
「ああ」
「でも私は…それはできなかった」
「…」
「同じ生き残る仲間なのに、見捨てるなんてできないよ」
私は悠真と目を合わせた。
「…!」
「それが例え親友をいじめた悪い人でも。」
「…」
「…真弥が許しても、私は許さないよ」
「…わかってる」
「ずっと反省して生きて。私学校生活で何度刺そうか迷ったよ」
「「え!?」」
こっそり聞いていた香織と愛菜が驚いた表情でこちらを見る。
「…そりゃそうでしょ、ずっと嫌だったよ。ずっと憎かったよ。どんな理由があっても人をあんな風に貶めるなんて許されないよ。」
「でもあんただって黙って…」
「真弥が何もするなと、言ったから。」
「え…?」
私は、ずっと真弥に守られ続けてきた。
今は、なぜか自分の意見をハッキリと述べる勇気があった。
「真弥を助けたいって、ただそれだけで何も考えずに動いていた私に、真弥は『私は平気だから、助けないで』って言ったの。私に標的が向くから。」
「…」
「それに甘えてた私も十分同罪だけど、それでも、私は何があってもあんなことは許されないと思ってる。」
「っ…」
3人が俯く。
「…でも、何があっても人を見捨ててはいけないのは、相手が真弥であっても、そのいじめっ子でも、同じでしょ」
「…!」
私は、3人に真っ直ぐ自分の気持ちを、考えを伝えた。
怖がってできなかったこと。
「…奈緒」
「謝る相手は、私じゃないから」
「…うん」
「わかってる」
「真弥を殺したら、埋葬を手伝って。ちゃんと一緒にっ…」
自分が言っておきながら、真弥を殺すという苦しい決断に涙が溢れてきた。
「奈緒…」
悠真が私の背中をさする。
「真弥をっ…殺したら…埋葬をっ…手伝ってそれでっ…!ちゃんと…謝って…」
「…うん」
3人の目は、前より優しくなっていた。
それに少し喜んでいたのも束の間。
ドォォォン!!!
「なに!?」
慶斗君が能力を使う。
「…ここから西に7km離れたところで…音がしました」
そして慶斗君が少し経って、焦ったように私達に言う。
「女性のうめき声がっ…多分八雲さんのものっす…」
「八雲っ…!!」
「全員急ぐぞ!!」
私達は八雲を助けるために走り出した。
「………………」
コメント
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おお…このエピソード、めっちゃグッと来ました。八雲の突っ走る決意と、残されたメンバーの「諦めと希望」の狭間の揺れが凄くリアルで…特に奈緒が悠真たちに「許さないけど見捨てない」って自分の言葉で言えたあの場面、ずっと真弥に守られてきた彼女の成長が感じられてじーんとしました。春子の「怖いからここにいたい」って正直な告白も胸に刺さる。ギリスの「ロアは生きてる」発想はお見事!設定の伏線回収が気持ちいいですね。八雲の正体も気になる…顔を見せない理由って、やっぱりロア人格と関係あるのかな。次話が待ち遠しいです!