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羽海汐遠
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自転車和尚
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天楽°
38
#塩レモン
comi
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私達は走って、八雲の元へ急いだ。
「やっぱりっ…あれ相手には厳しいか…」
「とにかく行こう!!」
慶斗君のガイドを頼りに音の方向まで走る。
あの化け物はグースとギリスがいることによって近寄ってくることはなかった。
「八雲っ…」
絶対助けるから…。
しばらく走っていると、慶斗君が急に止まった。
「慶斗君、どうしたの!?」
「いました…」
全員が慶斗君の指す方を向くと、そこには弱っている八雲とそれを見る真弥がいた。
「真弥っ…!!!」
真弥が八雲の方を向きながらこちらに話しかける。
「…来ると思っていた」
「真弥!僕達のリーダーについて、何か知ってるんだろ!?」
「…」
真弥がこちらを向く。
「…エトロア、私とこの女の能力の主」
「その通りだ…真弥…なにか知っているんだろ…!」
「…ああ、もちろん」
「無事なのか…?」
「無事…か。グース、ギリスディア。ただの人間である私が、なぜエトロアの触手を操っているのか、疑問に思わなかったのか?」
「っ…!!」
確かに、真弥は能力者とはいえただの人間なはず。
ギリスやグースやネスティの異型や触手は人外によるものだ…!
「ロアに…何をしたっ…」
「…さあな、知りたければ私を殺すくらいしてみろ。」
「真弥!」
真弥が私の方を向く。
「真弥っ…なんだか変だよ!何に操られているの!?」
「…」
「何か答えてよ!!友達でしょ!?今まで私ばかり相談したり、話をしてきたけど、真弥の話を聞かせてよ!!」
「奈緒っ…危険だ、あんまり喋るなっ…」
悠真が守るように私の前に腕を出す。
叶太が前に出て真弥へ話す。
「憎かったんだろ…自分を虐げる香織や春子、助けたのに何もしない俺や愛菜」
真弥が目を見開く。
「…俺達ちゃんと償うからさ…戻ってこいよ」
「………ふっ」
「…?」
「ふはっ…あははははっ!!!」
「なんだ…?」
「可哀想だなお前らっ!!未だに私がただの真弥だと思ってるのか!!可笑しいよなぁ!なぁ!!」
笑いながらそう言い、八雲の方を向く。
八雲は歯を食いしばって怒りに耐えている。
「や…八雲…?」
「八雲…か、そう呼ばせているのか!!みんなに!!」
真弥が再び私達を見る。
「…私と戦う前に…こいつの顔、見とけばいいんじゃないか…?」
そう言って八雲の手足の動きを封じ、八雲を私達の前へ持ってくる。
「やめ…ろっ…!!この悪党がっ…」
「まあまあ…ネタばらしだって面白いだろ…」
真弥の触手が八雲の仮面を強く叩く。
「ほら、ちゃんと見ればいい、こいつが誰なのか…」
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「えっ…」
「どういうこと…」
その場にいた全員が、驚愕した。
八雲の仮面の下は、真弥の顔だった。
「八雲…?」
「どうだ?面白いだろ、私とそっくりだろ」
真弥は面白そうに八雲の顔を覗く。
「そりゃあそうだ…こいつも私なんだから…」
真弥は私達に向き直り、私達の手足を触手で結んだ。
グースやギリスも、不意をつかれたため避けることができなかった。
「ぅ…!!」
「真弥!!もうやめろ!!」
慶斗君が真弥に叫ぶ。
「…真弥は、今はもう2人だ、ややこしいなぁ」
そう言って慶斗君のおでこを指で軽く弾く。
「説明してやる。簡単なことだ。こいつは私で、私はこいつなんだ。私達は分裂した半人前同士ってことだ。」
分裂…?半人前…?どういうこと?
私達は目の前にいる2人の真弥を前に頭が回らず、ただ黙って見ていることしかできなかった。
「真弥は能力者だった…お前らがすやすやと明日の学校を楽しみに寝ている間、真弥は眠れなかったんだ…日々の苦しさで…」
白いワンピースの真弥は、グースとギリスを除いた私達全員を指さした。
「心当たりしかないだろうな。結果、真弥は能力が分配されるその瞬間…あれは、午前3時くらいだったかな。真弥はリアルタイムでその分配を受けたんだ。」
「っ…!」
「それがロアの能力だったんじゃないのか…?」
「いや、あの日真弥が受けた能力は、『解離』。自身の感情や考えを分裂させることで実体を持つもう一人の自分を作る能力。」
「黙れ!!!」
八雲が真弥に叫ぶ。
「…ここまで言えば分かるだろ、真弥は自分の善と悪を分裂させた。善はそこにいる八雲…まあ正しくいえば善の真弥。悪はこの私。その分裂した現場に…エトロアが来ちまったんだ。」
真弥が下を向く。
「あぁ…ほんと、善良なやつってのは、どうしてこんなに可哀想なんだろうな…。心配して来たエトロアを襲って私が取り込んだんだ!!」
「何っ…!?」
「どういうことだ!!!」
「…」
エトロアさんは…つまり、今真弥の中に…。
「人外さんは確かに強いが、油断した隙になにかされると弱い。お前らが触手で縛られてるのがなによりの証拠だ。エトロアの能力と記憶と人格をもつ私を全力で攻撃する勇気もなかったんだろ。まぁもっとも…攻撃で死なないがな」
真弥がニヤリと笑う。
「さて…私は、こいつに用があるだけだ。あとはお前らを喰らうだけ…」
「やめろ!!!」
「善しかないやつは!!目の前の悪を倒す為に必死なんだな!!何も考えちゃいねぇ!!」
ギリッ
「あ゛っ…!!」
八雲を縛る触手の力が強まる。
「あぁ…よく見ろよ、もう1人の私。」
香織を指さす。
「なっ…なに」
「あいつは…ただ楽しんでお前を虐げていたんだ…嘘や地位を悪用してあらゆる手段でお前を痛めつけた…」
次に悠真。
「あいつはお前の元彼だっけ?お前に振られたことへの恥ずかしさと怒りで香織に手を貸し、お前はこいつの前で脱がされた…」
「やめろ…!」
次に愛菜。
「あぁ…こいつはお前と仲が良かったな…こいつが小学校の頃、少しいじめにあっていたところをお前が助け、お前はずっとそばに居た…お前の時…そうしたかな?」
「真弥っ…ごめんなさいっ…目を覚まして!」
「はぁっ…はぁっ…」
八雲の顔色が悪くなっていく。
次に指差したのは叶太。
「あいつのことも助けてやったなぁ…お前が助けに行ったおかげであいつのいじめはほとんど無くなった。けど…あいつは虐められてたお前に何かしてくれたか…?黙って見てただけだ…」
「…」
そして、私。
「お前は…本気でこいつを守ろうとした。なぜだ?お前は自分の辛さを背に隠してこいつの病み事ばかり聞いていただろ…?ただでさえ耐えなければいけない中で、なぜこいつを守る?」
「真弥っ…」
確かにそうだ。
真弥は辛かったはずなのにいつも私の話を聞いてくれた。
「自分の辛さを我慢したのも…助ける意味ない奴を助けたのも…全てお前の選択だった。私は何度止めた!?」
「黙れ…お前に何が分かる!!」
「分かるさ…お前は私で、私はお前なんだ。お前の選択には常に私がいた。でも真弥の中でのバランスは常に善が先行していた…。私は何度お前を止めた…何度訴えた…何も聞かずに突き進んだ結果がコレだ!!」
「黙れ…」
「自分の過ちを認められないか…お前は善のもとに選択をしたからか。」
真弥が私達に向き直る。
「こいつが純粋な善であるということは、私が純粋な悪であることと同義だ。私は善い行いは嫌いだからなぁ…地球を壊してフィゲルダも壊す…そして何もかも、無くす。」
「そんなっ…」
「…さあ、もういいかな。私はこれからこいつを取り込み、善の部分のみを破壊する。そしてお前らを食って、能力を上げ、ものにする。生き残った保護型の1人が開花したようだしな…」
「….!」
内田さんのことだ。
「触手の中で細菌を出そうなんて考えは甘い。私は細菌すら食い、自分の力にできる。」
「くっ…」
「さあ、さようならだ」
私達の足元から巨大な触手が現れ、巨大な口が現れる。
「ひっ…!!」
「もうだめだっ…」
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「待って!!!」
「…!?」
そこに居たのは春子だった。
「待ってよ…」
「…いないと思ったら…生きてたのか。」
煩わしそうに真弥が言う。
「別にっ…こんな小さい惑星のことなんてっ…ほっとけばいいんじゃないの…!?」
「…」
「フィゲルダっていうのは…もっと大きい…私達の想像を遥かに超える大きなところなんでしょ!?ねぇ!?」
「…」
「私達をほっといて、そこに戻ったっていいじゃないっ…」
「…お前は昔から何も分かっていないんだな」
「…えっ…?」
「私は善じゃないとはいえ、怒りの感情はある。これは復讐を兼ねた私の野望なのだよ」
ビシュッ!!!
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「…ぇ」
頬に生ぬるい何かが着く。
私は恐る恐る、隣を見た。
「いっ…いやぁあああぁあああ!!!!!叶太ぁああああぁああ!!!!」
「っ…」
「ちょっと…こんなのっ…」
叶太の首から上が、無かったのだ。
真弥の隣の触手は、その先端の口を血で濡らし、ぐちゃぐちゃと咀嚼していた。
「かな…た…」
春子が唖然としている。
「ぁあっ…あ゛あぁっ…!!」
私は、これまで失わなかった仲間の死に、泣き叫ぶことしかできなかった。
八雲は目を見開いて、青い顔をしながら叶太の死体を見ている。
残った首から下も触手がぐちゃぐちゃと食べた。
「…『速度』か、良い奴を前菜にできた…」
真弥はニヤニヤと自分の手を見る。
「あぁっ…良い顔だなぁっお前ら!!そうだよっ…その顔だよ!!その顔が見たかったんだよ!!!ははっ…」
「お前っ…」
八雲が手にナイフを生成し、触手を切る。
「ふっ…」
「殺してやる!!!殺してやるぅうぅうあああああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
八雲が真弥に飛びかかる。
「さあ殺せるのか!!!自分自身を!!!」
「ああ゛あぁ゛あああああ!!!!!」
「もうやめてぇえええっ!!!!!」
春子の叫び声が聞こえた直後、私達は全員意識が遠のいた。
コメント
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ああ…もう、第11話、すごかったですね…。特に「八雲の仮面の下が真弥の顔だった」あのシーン、本当に息を呑みました。善と悪に分裂していたという設定も重くて、読んでいて胸が締め付けられました。 それに、叶太が…衝撃的すぎて、言葉が出ませんでした。春子が止めに入った場面も、一瞬希望が見えただけに余計に辛くて。 でも、その中で八雲が「♡♡♡てやる」と叫んで飛びかかるところには、切実さと怒りが詰まっていて、すごく引き込まれました。 奈緒の「真弥の話を聞かせてよ!」という叫びも、ずっと友達として向き合ってきた彼女だからこその言葉で、胸に刺さりました。続き、本当に気になります…!