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うおおお第12話も激アツだった!!🔥🔥 古城の雰囲気めちゃくちゃ怖いのに、米太の絶叫と加奈登の冷静さのギャップが面白すぎて笑ったww そして突然現れたアキさん…めっちゃ強くて謎だし、消えた時は「えっ!?」ってなったよ😳💦 しかもルキアスたちの「あの作戦」って何!? 次が気になりすぎる…! 続き待ってるからね〜!!✨
北実side
寮の中庭には、朝から大勢集まっていた。
昨日のサーカス団との戦闘。
そして、あの鏡の館。
話題は当然それ一色だった。
米太「いや待って、最後のあれ何!?」
米太が両手を振り回しながら叫ぶ。
米太「街ごと消し飛ぶかと思ったんだけど!? Oh my god!!」
加奈登「兄さん、落ち着いて。」
加奈登がいつも通り微笑みながら言う。
加奈登「結果的には助かったんだから。」
米太「いやでもあれはビビるって!」
俺も同意だった。
正直、エイラが強いことは知っていた。
知っていたけど。
あそこまでとは思っていなかった。
南実も苦笑している。
南実「僕もびっくりしたよ……」
国雲「我もアル。」
国雲が腕を組む。
国雲「館ごと吹き飛ばすとは思わなかったアル。」
海斗「しかも周りは無傷だったな。」
海斗が冷静に言う。
海斗「あれだけの出力を制御していたのなら、相当な技量なはずだ。」
日向「すごかったですよね…!」
日向も頷く。
日向「本当に助かりました…!」
翡翠「ヒスイ、ピカーッてしてたの覚えてる!」
翡翠が元気に言う。
翡翠「お城みたいなの、ドーンだった!」
陸斗「語彙力終わってるな。」
陸斗が呆れたように言った。
翡翠「ヒスイまだ子どもだもん!」
海斗「威張ることじゃない。」
海斗が即座に返す。
2人とも呆れつつも、どこか微笑ましげだ。
その横では──
普巳「俺は別に怖くなかったぜ!」
普巳が胸を張っていた。
帝偉「へぇ。」
帝偉が半目になる。
帝偉「昨日『うおっ』って一番でかい声出してたの誰だ?」
普巳「……気のせい。」
帝偉「気のせいじゃねぇ。」
即答だった。
少し離れた場所では、
利亜「太希ぃ……」
利亜が相変わらずくっついている。
利亜「昨日ほんと怖かったんね……」
太希「だから離れろって。」
そう言いながら太希は特に引き剥がさない。
その隣では、
零王「那知〜……」
零王が那知にくっついていた。
零王「ボクも怖かったんねぇ〜……」
那知「お前はいつもそれだな。」
那知はため息をついた。
そんな騒がしい中。
中庭の入口から二人が歩いてくる。
エイラとレイヴンだった。
エイラが穏やかに微笑む。
エイラ「皆さん、おはようございます。」
日向「おはようございます。」
日向が丁寧に頭を下げる。
レイヴンは軽く手を上げるだけ。
レイヴン「依頼、行くか。」
短い言葉。
相変わらずだ。
北実「依頼か?」
俺が聞くと、
エイラが頷いた。
エイラ「はい。冒険者ギルドに面白そうな依頼が出ているそうです。」
その言葉に、
米太が飛び上がる。
米太「Adventure!?」
エイラ「ふふ、元気ですね。」
エイラが少し笑った。
エイラ「準備も大丈夫なようですし、早速向かいましょうか。」
冒険者ギルドについた。
中に入ると、見覚えのある五人組がいた。
?「あっ!」
明るい声が響く。
ランだ。
ラン「みんなさん!」
レン「お、久しぶりじゃん!」
レンも元気に手を振る。
リン「騒がしい……」
リンが呆れたように呟く。
ルン「でもちょうど良かったですね。」
ルンも微笑む。
その横では、
ロンが椅子の上に立っていた。
ロン「なんか面白そうなことある!?」
やんちゃなところは相変わらずだった。
レイヴン「ある。」
レイヴンが一言だけ答える。
レイヴン「古城探索だ。」
ロン「ほんと!?行く!!」
ロンが即答した。
南実「早っ。」
南実が苦笑する。
こうして流れで俺たち勇者パーティーと
『不思議の国のアリス』の五人。
合同で依頼へ向かうことになった。
依頼内容は古城探索。
そして可能であれば、
住み着いた霊魔族の討伐。
霊魔族。
名前や説明は聞いたことがある。
だが、実際に見るのは初めてだ。
日向「大丈夫なんですか?」
日向が聞く。
エイラは落ち着いて答えた。
エイラ「霊魔族は少し特殊ですが、皆さんなら問題ないと思います。」
問題ない。
エイラが言うと妙に説得力がある気がした。
数時間後。
俺たちは目的地へ到着した。
そして。
俺たちは全員同じ感想を抱いた。
南実「……古っ。」
南実が呟く。
目の前には巨大な城。
しかし威厳などほとんど残っていない。
壁には無数のひび。
蔦が絡み付き。
塔の一部は崩れかけている。
窓は割れて、門も半分傾いていた。
今にも倒れそうな城だ。
米太「It’s impossible!」
米太が後ずさる。
米太「絶対なんかいるって!」
加奈登「兄さん、依頼だから。ね?」
加奈登が宥める。
米太「なんでこんな怖い場所に来たの!?」
加奈登「兄さんがノリノリで依頼受けるって騒いだからだよ。」
米太「……あれ?」
加奈登「覚えてないの?」
国雲も城を見上げる。
国雲「べ、別に怖くないアル。」
湾海「……声震えてるけど?」
湾海が指摘した。
国雲「ふ、震えてないアル!」
震えていた。
日向は城を見ながら少し目を輝かせている。
日向「なんだかホラーゲームみたいですね……!ちょっとワクワクします!」
宮雷「日向くん、強いね……」
宮雷が苦笑した。
日和「私はちょっと怖い……でも気になる!」
日和は好奇心の方が勝っているらしい。
翡翠「リクト、ここなんかいるかな?」
翡翠が城を見上げる。
少し不安そうだ。
すると陸斗がすぐ前に立つ。
陸斗「離れるなよ。」
翡翠「わかった!」
海斗も周囲を見回す。
海斗「崩落の危険はあるな。」
翡翠「気をつける!」
空斗は翡翠の頭を撫でた。
空斗「大丈夫大丈夫!とっても強くて頼りになる僕たちがいるし!」
翡翠「ヒスイも!ヒスイつおい!」
利亜が太希の服を掴む。
利亜「太希ぃ……」
太希「まだ入ってもいねぇだろ。」
太希が呆れる。
利亜「でも怖いんね……」
太希「知るか。」
その後ろでは、
零王「那知ぃ……」
零王がくっついていた。
零王「ねえ、やっぱりボク帰りたいんね…」
那知「帰らねぇ。」
零王「そんなぁ……ひどいんね…」
一方。
普巳は腕を組んでいた。
普巳「別に、全っ然怖くないし。」
帝偉「へぇ。」
帝偉が言う。
帝偉「じゃあ一人で先頭歩け。」
普巳「……いや、それは…ほら、危険だからさ…?」
帝偉「怖いんじゃねぇか。」
普巳「違う。」
即答だった。
アリシア5人もそれぞれ反応している。
ラン「お城だー!」
ランは楽しそう。
リン「崩れそうじゃない…?」
リンは現実的。
ルン「危険箇所は把握した方が良さそうですね。」
ルンは真面目。
レン「よっしゃ、久しぶりに探検だー!」
レンは大はしゃぎ。
ロン「ロンが一番乗りー!」
ロンはもう門へ走っていた。
リン「ちょっと、待ちなさいロン!」
リンが叫ぶ。
ルン「先走るな!」
ルンも慌てて追いかける。
北実「いつも通りだな……」
俺は思わず呟いた。
その時、エイラが前へ出る。
真っ暗な城内へ向けて手をかざした。
淡い光が現れる。
光の球がふわりと浮かび上がり、
城の内部を照らし始めた。
暗闇が少しだけ後退する。
エイラ「これで照明代わりになると思います。」
エイラが微笑む。
そして──
古城の奥から何かが落ちるような音が聞こえた。
全員が静かになる。
南実「……北、今の聞いた?」
南実が小声で言う。
北実「ああ、聞いた。」
俺は戦鎚を握り直した。
どうやら、
探索は思ったより穏やかには終わらなさそうだった。
古城の中へ足を踏み入れた瞬間、
外よりも空気が重かった。
湿った匂い。
長い年月閉ざされていたような淀んだ空気。
床を踏むたびに埃が舞う。
天井は高いが、ところどころ崩れていて不安になる。
エイラの光魔法だけが頼りだった。
淡い光が廊下を照らし出す。
その光の届かない奥は、まるで闇そのものだ。
俺は周囲を警戒しながら進む。
隣では南実が妙に静かだった。
北実「南。」
南実「……なに?」
北実「珍しく静かだな。」
南実「いや、だってさ。」
南実は前を見たまま言う。
南実「普通に怖くない?」
北実「怖いのか。」
南実「怖いよ!?」
即答だった。
その後ろ。
米太「…Hey。」
米太の声が聞こえる。
振り返ると、加奈登の服を掴んでいた。
米太「なあ加奈登。」
加奈登「なに?」
米太「…なんで壁に人の手形みたいなのあるの?」
加奈登「本当だね。」
米太「なんでそんな冷静なの!?」
米太の声が大きくなる。
米太「怖くない!?」
加奈登「兄さんの方がうるさくて怖いかな。」
米太「えぇ……」
加奈登は相変わらずだった。
少し先では日向が興味深そうに壁を見ていた。
日向「これ、昔の装飾でしょうか。」
日和「うわぁ……」
日和が覗き込む。
日和「でもなんか不気味だね。」
日向「確かにそうですね。」
二人は怖がってはいるが、好奇心も勝っているらしい。
反対側では利亜が太希の後ろからほとんど出てこない。
利亜「太希ぃ……」
太希「なんだ。」
利亜「後ろになんかいたらどうするんね?」
太希「いねぇよ。」
利亜「いたら?」
太希「その時考える。」
利亜「怖いんね……」
そのすぐ近く。
零王も似たような状態だった。
零王「那知ぃ……」
那知「…離れろ。」
零王「なんか出そうなんね……」
那知「出たら撃つ。」
零王「那知ぃ、頼もしいんねぇ……」
まるで避難所を見つけた子供だった。
前方では海斗が周囲を観察している。
海斗「建物自体はまだ保っているな。」
空斗「兄さん、すごいね。」
空斗が感心する。
空斗「よくわかるなぁ。」
海斗「壁のひびや荷重の流れを見れば大体わかる。そういうスキルだからな。」
空斗「……僕じゃ全然わかんないや。」
空斗が即答した。
翡翠も頷く。
翡翠「ヒスイもわかんない!」
海斗「お前らな……」
海斗が少しだけ呆れた。
陸斗は周囲を警戒しながら歩いている。
完全に護衛役だ。
その時だった。
琉聖が足を止める。
琉聖「……待って。」
全員の動きが止まった。
太希「…どうした?」
太希が聞く。
琉聖は少し不安そうに奥を見た。
琉聖「なんかいる。」
空気が張り詰めた。
那知が銃を構える。
廉蘇も大鎌を持ち直した。
エイラの光が少し前方を照らす。
そして、見えた。
最初は人影に見えた。
だが違う。
片腕がなかった。
顔の半分が崩れている。
足も片方しかない。
それなのに立っている。
胸の中心には青白く光る塊。
心臓の位置。
南実「……あれが。」
南実が呟く。
エイラが静かに頷いた。
エイラ「下級霊魔族ですね。」
その一体だけではなかった。
廊下の奥や部屋の入口、階段の陰から次々と現れる。
骨だけのもの。
上半身しかないもの。
身体の一部が透けているもの。
首が傾いているもの。
まともな姿の方が少ない。
米太「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
米太が絶叫した。
米太「出たぁぁぁぁぁぁぁ!!」
加奈登「兄さん、落ち着いて。」
米太「落ち着けるわけないだろ!?」
加奈登「確かに怖いね。」
加奈登は普通に同意した。
米太「なんで平然としてるの!?」
加奈登「兄さんがいるから。」
米太「おかしい!!」
そんなやり取りをしている間にも、
霊魔族たちはゆっくり近付いてくる。
嫌な圧迫感があった。
生き物とは違うし、魔物とも違う。
何かがおかしい。
理屈じゃない不気味さだ。
国雲も顔が引きつっている。
国雲「……これは気持ち悪いアル。」
湾海「国雲、顔色悪いよ。」
湾海が言う。
国雲「…悪くないアル。」
湾海「悪いと思う。」
清雨も頷いた。
その時。
一体の霊魔族が急に走った。
予想以上に速い。
一直線にこちらへ向かってくる。
日向「来ます!」
日向が叫ぶ。
俺は戦鎚を構えた。
だがそれより早く銀色の光が走る。
叶英だった。
レイピアが胸を貫く。
正確にコアだけを狙った一撃。
青白い光が砕ける。
霊魔族はそのまま崩れ落ちた。
叶英「愛蘭、そこです。」
愛蘭「わかってる。」
愛蘭が即座に追撃する。
黒いバツ印。
動きを止められた別の個体へレイピアが突き刺さる。
いつものように言い合いながらも完璧だった。
叶英「もっと右です。」
愛蘭「言われなくても見えてるよ。」
叶英「見えてないから言っているんです。」
愛蘭「君ほんと腹立つな。」
息だけは完璧に合っている。
北実「よし。」
俺も前へ出た。
戦鎚を握り直す。
下級霊魔族の群れが、
ゆっくりとこちらへ迫っていた。
霊魔族との戦闘は思った以上に長引いていた。
一体一体はそこまで強くない。
問題は数だった。
倒しても倒しても奥から現れる。
廊下の先、崩れた部屋の中、階段の上。
あらゆる場所から這い出てくる。
俺は戦鎚を振るいながら舌打ちした。
北実「多すぎるだろ……!」
コアを狙わなければ倒せない。
それ自体は分かった。
だが、数が多いせいで思うように前へ進めない。
南実も息を切らしていた。
南実「これ終わりあるの!?」
北実「知らん!」
俺も叫び返す。
近くでは。
米太「うわあぁぁぁぁ!来た来た来た!!」
米太が大騒ぎしながら霊魔族を吹き飛ばしていた。
加奈登「兄さん左!」
加奈登が即座に援護する。
米太「Right!!」
米太が飛び込む。
その時だった。
前方から妙な声が聞こえた。
?「おや。」
朗らかな声。
聞き覚えのない声だった。
?「これはまた難儀なことになっているね。」
全員が一瞬そちらを見る。
廊下の奥。
そこに一人の青年が立っていた。
年齢は二十歳前後だろうか。
冒険者らしい服装。
剣を携えた姿。
妙に落ち着いている。
そして。
俺は少し違和感を覚えた。
いつからいた?
誰も気づいていなかった。
まるで最初からそこにいたような。
そんな感覚だった。
南実「誰!?」
南実が叫ぶ。
青年は笑った。
?「通りすがりの冒険者さ。」
言うなり歩き出す。
霊魔族が数体襲いかかる。
だが次の瞬間、青年の動きが変わった。
速い。
俺たちより明らかに速い。
剣が一閃し、正確にコアだけを切り裂いた。
霊魔族が崩れる。
さらにもう一体。
もう一体。
まるで迷いがない。
空斗「おぉ……」
空斗が感心する。
海斗「強いな。」
海斗も目を細めた。
青年は軽く肩を回した。
?「少し手伝おう。」
そして。
そのまま霊魔族の群れへ飛び込んだ。
普通なら躊躇するはずの状況。
だが青年は一切恐れていないように見えた。
霊魔族に囲まれても、傷を負っても怯む様子がない。
むしろ前へ前へ進んでいく。
?「……兄上が見たら怒るだろうな。」
ふとそんな言葉が聞こえた。
だが次の瞬間には、
青年はまた別の霊魔族を斬っていた。
気のせいだったかもしれない。
那知「今だ!」
那知が叫ぶ。
銃声が響き、廉蘇の音が重なる。
叶英と愛蘭が左右から突っ込む。
嗣行の大剣が振り下ろされ、
紅葉の糸が霊魔族を拘束する。
太希の結界が仲間を守り、
利亜が姿を隠し、
琉聖が安全な進路を示す。
エイラの魔法が後方から支援し、
レイヴンが静かに敵を削る。
全員が一斉に攻勢へ出た。
そして。
長い戦闘の末、最後の一体が崩れ落ちる。
静寂が戻った。
南実「終わった……?」
南実が呟く。
加奈登「終わったみたいだね。」
加奈登が微笑む。
米太「助かった……」
米太は床に座り込んだ。
米太「もう霊魔族見たくない……」
加奈登「まだ依頼終わってないよ兄さん。」
米太「嘘だろ。」
本気で絶望していた。
そんな中、青年が剣を納める。
?「皆、なかなか強いな。」
明るく笑う。
北実「…助かった。」
俺が言うと、
青年は少し照れたように頭を掻いた。
?「困った時は助け合いだ。」
日向が聞く。
日向「お名前を伺ってもよろしいですか?」
?「ああ。」
青年は頷いた。
少し考えるような顔をして、
それから笑った。
アキ「アキと呼んでくれ。」
日向「アキさんですね!」
日向が微笑む。
アキは頷いた。
その時。
エイラが一瞬だけアキを見た。
ほんの一瞬、何か引っかかったような顔。
だがすぐに首を横に振る。
気のせい。
そう自分に言い聞かせるように。
そして何事もなかったかのように微笑んだ。
日向「ありがとうございました。」
アキも笑う。
アキ「こちらこそ。」
その後。
少しだけ話をした。
どうやらアキは兄を探して旅を続けているらしい。
昔一緒に訪れた場所を巡っているのだという。
アキ「ここにもいなかったけどね。」
そう言って苦笑する。
普巳「お兄さんとはぐれたのか?」
普巳が聞く。
アキは少し遠くを見る。
アキ「たぶんそんなところかな。」
どこか寂しそうだった。
ラン「でも、きっと見つかりますよ。」
ランが言う。
アキは少し驚いたように目を丸くして、
それから優しく笑った。
アキ「ありがとう。」
休憩を終えて、俺たちは古城のさらに奥へ進む。
目的地は大広間。
霊魔族の発生源があるならおそらくそこだ。
長い廊下を歩き続ける。
誰もが疲れていた。
だが戦闘は一時的には終わった。
少しだけ気が緩んでいた。
そして。
大広間へ続く巨大な扉が見えた時。
海斗がふと周囲を見回した。
海斗「……ん?」
北実「どうした?」
海斗は首を傾げる。
海斗「いや……」
少し考えて。
海斗「アキはどこだ?」
全員が足を止めた。
沈黙。
そして。
南実「……あれ?」
南実が振り返る。
南実「………いない。」
日和「さっきまでいたよね?」
日和が言う。
国雲「いたはずアル…」
湾海「うん、たしかにそこに……」
国雲も頷き、湾海も言う。
確かにいた。
間違いなくいた。
少し前まで一緒に歩いていた。
なのに誰も。
いついなくなったのか分からない。
空斗「帰ったんじゃない?」
空斗が言う。
海斗「いや……」
海斗が眉をひそめる。
海斗「帰るなら一言くらい言うだろ。」
その通りだった。
だが、誰も気づかなかった。
来た時も。
去った時も。
まるで最初からそこにいなかったみたいに。
レン「……変な人だったな。」
レンが呟く。
ラン「でも良い人だったよね。」
ランが言う。
エイラは何も言わなかった。
ただ。
閉ざされた大広間の扉を見つめていた。
その表情はいつも通り穏やかだったが、
どこか引っかかるものを感じているようにも見えた。
そして俺たちは気を取り直して、古城の最奥部──大広間へと足を踏み入れた。
大広間へ続く巨大な扉を押し開ける。
重たい音が古城中に響いた。
中は想像以上に広かった。
天井には、今にも落ちそうな巨大なシャンデリア。
赤い絨毯はところどころ朽ち果て、机や椅子は倒れたまま放置されている。
かつては豪華だったのだろう。
今はその面影だけが残っていた。
そしてその広間を埋め尽くすように──
無数の影。
霊魔族。
そして魔物。
ざっと見ただけでも百はいる。
南実「……多くない?」
南実が顔を引きつらせた。
国雲「多すぎるアル……」
国雲も珍しく苦笑いだ。
米太「Hey…」
米太は一歩下がる。
米太「帰っていい?」
日向「ダメです。」
日向が即答した。
米太「ですよねぇぇぇ……」
米太はロングソードを抜く。
その時。
中央に立っていた一体の霊魔族がこちらを見た。
損傷はほとんどない。
服装も比較的綺麗だ。
他の霊魔族とは明らかに違う。
その霊魔族は手を振った。
?「おー!」
妙に明るい声だった。
?「人間いっぱいじゃん!」
俺たちは思わず固まる。
……喋った。
?「おっ、びっくりした?」
楽しそうに笑っている。
ルキアス「俺、ルキアス!」
にこっと笑う。
ルキアス「よろしく!」
南実「……よろしくじゃないでしょ。」
南実が思わず突っ込む。
南実「敵だよね?」
ルキアス「敵だよ!」
即答だった。
ルキアス「だから全力でいくよ!」
次の瞬間。
ルキアスが手を振り上げる。
ルキアス「みんなー!!」
霊魔族や魔物が一斉に動き出した。
ルキアス「いけいけー!!」
北実「結局そうなるのか!」
俺は戦鎚を構えた。
戦闘が始まる。
真正面から飛び込んできた魔物を戦鎚で吹き飛ばす。
コアを狙って霊魔族を叩き潰す。
だが。
左右から次々現れる。
南実「北!」
南実が俺の背中を押す。
速度が一気に上がる。
北実「今!」
俺はその勢いのまま戦鎚を振り下ろした。
一直線に三体をまとめて倒す。
南実「まだいる!」
南実自身も双剣を振るう。
北実「こんなのきりがないぞ!」
その横では国雲が前へ飛び出した。
国雲「我が相手アル!」
拳が霊魔族の腹へめり込む。
さらに能力を発動。
踏み込みの感覚がわずかに変わる。
重心がほんの少しだけ有利に働き。
次の一撃が信じられない速さで決まる。
国雲「まだまだアル!」
霊魔族を次々と殴り飛ばしていく。
日向は冷静だった。
日向「動きを止めます!その隙に攻撃を!」
能力が発動し、突進してきた霊魔族たちの動きが少しだけ鈍る。
日向「今です!」
陸斗「任せろ。」
刀が一直線に走り、コアだけを正確に斬り裂く。
無駄がない。
日向「米太さん!」
米太「わ、わかってる!」
そう返事はする。
しかし。
米太「What!?また来た!?」
叫びながら拳銃を乱射し、
近付かれればロングソードへ持ち替える。
米太「なんでこんな多いの!?」
加奈登「兄さん!」
加奈登が援護する。
加奈登「右!」
米太「…っ、Thank you!」
何とか防ぐ。
だが普段ほど動きが冴えない。
怖がりすぎて能力が乗り切っていないらしい。
加奈登「兄さん落ち着こう。」
米太「今言う!?」
少し離れた高所。
枢臣がライフルを構えていた。
枢臣「北実、左にずれろ。」
短く告げる。
その直後。
俺の死角にいた霊魔族のコアが撃ち抜かれた。
北実「…助かった!」
枢臣「礼はいらない。」
次弾を装填する。
一切無駄がない。
反対側では。
宮雷が静かに未来を見据える。
宮雷「国雲、斜め後ろに一体いるよ。」
国雲「わかったアル!」
宮雷の予知通り、
背後から来た霊魔族を国雲が迎え撃つ。
国雲「助かったアル!」
宮雷は微笑む。
その横では、
瑛太が帽子へ手を添えた。
瑛太「少しは考えて動いてください。」
何気ない仕草。
だが霊魔族たちの判断が鈍る。
日向「ありがとうございます!」
日向がその隙を逃さない。
瑛太「別にあなたのためじゃありません。」
相変わらずだった。
さらに奥。
清雨の煙が霊魔族を閉じ込める。
清雨「逃がさないアル。」
煙の檻が完成する。
そこへ。
翡翠「ヒスイもやる!」
翡翠が元気よく飛び出しかける。
陸斗「待て。」
陸斗が肩を掴んだ。
陸斗「前に出るな。」
翡翠「でも!」
海斗「俺たちに任せろ。」
海斗と空斗も前へ出る。
三人が自然と翡翠を囲むように動いていた。
戦闘は十分以上続いただろうか。
数はようやく減ってきた。
俺は息を整えながら周囲を見る。
その時。
南実「あれ?」
南実が言った。
南実「さっきの喋るやつは?」
俺も周囲を見る。
いない。
中央にいたはずのルキアスが消えている。
国雲「……逃げたアルか。」
国雲が眉をひそめた。
広間の隅。
一本の廊下の奥に、
一瞬だけ後ろ姿が見えた気がした。
ルキアス「えへへ、ごめんねー!」
そんな声だけが聞こえる。
ルキアス「じゃ、あとはよろしく!」
そのまま姿は見えなくなった。
北実「逃がすか!」
俺が追おうとした。
しかし。
まだ霊魔族が残っている。
日向「北実さん!」
日向が叫ぶ。
日向「先にこちらです!」
北実「……くそっ!」
追えない。
結局。
目の前の敵を倒すしかなかった。
──それから数分後。
最後の魔物が倒れた。
広間は静まり返る。
俺は深く息を吐いた。
北実「……終わった。」
南実「終わったね。」
南実も剣を下ろす。
海斗「だが、逃げた奴は放置できない。」
全員が頷いた。
大広間には、俺たちが入ってきた廊下以外にも五本の通路が伸びている。
どれも暗く、
どこへ続くのか分からない。
エイラ「手分けするしかありませんね。」
エイラが言う。
エイラ「一人では危険ですので、複数人で行動しましょう。」
相談の末、探索班は次のように分かれた。
・俺、国雲、日向、加奈登、枢臣、ラン
・南実、リン、レイヴン、叶英、那知
・海斗、空斗、翡翠、日和、廉蘇
・陸斗、宮雷、瑛太、ルン、ロン
・普巳、帝偉、清雨、湾海、レン
・嗣行、紅葉、利亜、零王、琉聖、太希、愛蘭、エイラ
海斗「じゃあ、一時間探して見つからなければここへ戻る。」
海斗が提案する。
国雲「異論ないアル。」
国雲が頷く。
加奈登「ねえ、兄さん。」
加奈登が米太を見る。
加奈登「……あれ?」
俺も辺りを見回した。
加奈登「…兄さんは?」
全員が沈黙した。
数秒後、広間の柱の陰から
米太「……I’m here。」
という情けない声が聞こえた。
柱にしがみついた米太が顔だけ出している。
米太「一人にしないで……please。」
加奈登「兄さん……」
加奈登が苦笑した。
加奈登「さっきからそこにいたの?」
米太「うん……。」
加奈登「……なんか、かわいいね。」
米太「Out of mindなんだけど!?」
ルキアス side
……危なかった。
俺は崩れかけた廊下を全力で駆け抜けながら、小さく息を吐いた。
ルキアス「いやぁ、最近の勇者って元気だな!」
笑いながら言ってみるものの、内心ではちゃんと理解している。
あいつら、思ってたよりずっと強い。
特に前に立っていた大きな戦鎚の少年と、双剣の少年。
他にも刀使いや銃使い、妙に連携がいい連中までいる。
ルキアス「このまま正面からやり合ってたら、さすがに面倒だな。」
軽く肩をすくめながら、俺は目的の部屋へ飛び込んだ。
そこは古城の奥。
ひび割れた石壁に囲まれた、小さな控え室のような場所だった。
四人とも、ちゃんといた。
壁にもたれて腕を組んでいるヴェルト。
椅子に腰掛けて本を読んでいるレオヴァン。
床に座って鼻歌を歌っているフィーネ。
その少し離れた場所で、静かに周囲を警戒しているノエル。
ヴェルトが真っ先に口を開く。
ヴェルト「……帰ってくるの早かったな。」
ルキアス「いやー、思ったより人数多くてさ。」
ヴェルト「遊んでたんじゃねぇだろうな。」
ルキアス「んー、半分くらいは遊んでたかも。」
ヴェルト「おい。」
即座にツッコミが飛んできた。
やっぱこれだよな。
レオヴァンは本を閉じると、穏やかに笑う。
レオヴァン「どうだった?」
ルキアス「思った以上に実力差があったかな。」
その一言で、空気が少しだけ変わる。
俺は珍しく真面目な顔になる。
ルキアス「下級のみんなだけじゃ押し切れない。」
レオヴァン「そう。」
レオヴァンは静かに頷いた。
レオヴァン「なら、予定通りかな。」
フィーネが勢いよく立ち上がる。
フィーネ「やる!?やる!?あれやる!?」
ヴェルト「落ち着け。」
ヴェルトが頭を軽く叩く。
ヴェルト「まだ話終わってねぇ。」
フィーネ「えへへ。」
全然反省していない。
ノエルが少し不安そうに尋ねた。
ノエル「本当に……やるの?」
ルキアス「やるしかないでしょ!」
俺は肩を回しながら笑う。
ルキアス「あの作戦。」
部屋が静かになる。
レオヴァンは少しだけ目を閉じた。
レオヴァン「出来れば使いたくはなかったけど……仕方ないね。」
ヴェルトもため息をつく。
ヴェルト「潜り込めりゃ、一気に流れ変わる。」
フィーネは拳を握る。
フィーネ「楽しそう!早くやろうよ!あ、私1番ね!」
ヴェルト「…お前は少し黙れ。」
「はーい!」
ノエルだけは、まだ少し困ったような顔をしていた。
ノエル「……僕、こういうの苦手なんだけどな。」
ルキアス「知ってる。」
俺は笑う。
ルキアス「だからこそ頼りにしてる。」
ノエルは苦笑した。
ノエル「それ、褒められてるのかな……。」
その時だった。
遠くから、小さな足音。
五人全員が同時に顔を上げる。
廊下の向こう。
誰かがこちらへ近づいてくる。
ヴェルトが耳を澄ませる。
ヴェルト「……一人じゃない。」
レオヴァンも静かに頷いた。
レオヴァン「五人だね。」
近づいてくる会話が、少しずつ聞こえ始める。
日向「……こちらですね。」
丁寧な青年の声。
那知「慎重に行くぞ。」
警戒した声。
レイヴン「……静かにしろ。」
低く短い声。
リン「そんなに警戒しなくても大丈夫じゃない?」
女の子の声。
叶英「でも油断は禁物ですよ。」
また別の落ち着いた声。
俺は口角を上げた。
ヴェルト「ちょうどいい。」
ヴェルトが短く言う。
レオヴァン「予定変更なし。」
レオヴァンは穏やかに微笑む。
ルキアス「それじゃあ──始めようか。」
フィーネはわくわくした様子で小さく跳ねる。
フィーネ「やったー!」
ノエルは静かに息を吸い、
ノエル「……了解。」
とだけ答えた。
廊下の角から、人影が現れようとしていた。
俺たちは互いに目を合わせ、小さく頷く。
──『あの作戦』を始める時が来た。
to be continue