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スタジオでの練習が続く中、5人で集まる時間もだんだん増えていた。
その日も、曲の途中で一度休憩になった。
元貴は床に座りながら、キーボードの前にいる藤澤涼架を見た。
「ねえ」
涼架が振り向く。
「うん?」
貴は少し考えてから言った。
「涼架ってさ」
「うん」
「なんか…呼びにくくない?」
涼架は少しきょとんとする。
「そう?」
「うん。なんかこう…」
元貴は手をひらひらさせる。
「涼架って言うとちょっと固いっていうか」
高野が笑う。
「分かるかも」
綾香も頷いた。
元貴はそのまま聞いた。
「さ、涼ちゃんって呼んでいい?」
一瞬、少しだけ間が空いた。
でも涼架はすぐにふわっと笑った。
「いいよ〜」
その答えに元貴も笑う。
「じゃあ今日から涼ちゃんね」
綾香がすぐ言う。
「涼ちゃん、そのさっきの音もう一回やって」
「はい〜」
自然に呼び方が変わる。
高野も普通に言った。
「涼ちゃん、そのコードいいな」
「ほんと?」
楽しそうな声。
若井はその様子を少し離れたところで見ていた。
(もう涼ちゃんかよ)
心の中で思う。
でも、確かに。
「藤澤」と呼ぶ感じでもないし、
「涼架」と呼ぶのも少し固い。
若井は少しだけ考えてから、ギターを弾きながら言った。
「……涼ちゃん」
キーボードの前の涼架が振り向く。
「はい?」
若井は少しだけ視線を外しながら言う。
「さっきのとこ、もう一回弾いて」
涼架はにこっと笑った。
「はい〜」
その日から、自然と。
みんなが同じように呼ぶようになった。
涼ちゃん。
スタジオの中で、その呼び方が当たり前になっていった。