コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
午後の光がやわらかく差し込む公園の小道。二人は並んで歩いていた。
「なろっち、今日もふわふわしてんな」
翔の声はいつも通り穏やかだったけれど、なろの胸は少しざわついた。
「そ、そんなことないよ…ていうかなんか失礼じゃない!?」
ふわふわした自分を見透かされているようで、なろは少し恥ずかしかった。
しかし、その後の会話は徐々に言い争いに変わる。
「翔くんがおかしいでしょ!?なんでそういう言い方するの?」
「いや、ちゃうわなろっちが分からんだけやろ!」
言葉が熱を帯び、二人の距離が少しずつ広がる。
「…翔くん、そんな風に言わなくても…」
なろの声は震えていた。
「もうええ、なろっちなんか知らん!」
翔は背を向けて歩き出す。
なろはその背中を見つめ、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。初めて見る際の怒った姿。
「ッ…どうしてわかってくれないの…」
その瞬間――。
遠くの道路に、猛スピードで車が突っ込んでくるのが見えた。
「翔くん!」
なろは必死に叫ぶ。しかし、翔は振り返らず、なろの声に耳を貸さなかった。
「このままじゃ翔くんが!」
心臓が張り裂けそうになる。なろは足を踏み出した。
「絶対、絶対守る……!」
時間がスローモーションのように流れる。 迫る車、振り返らない翔、そしてなろの決意。
なろは全力で翔に駆け寄り、ギリギリの瞬間に翔を突き飛ばした。
自分は――そのまま車にぶつかる。
強い衝撃が身体を貫き、世界が白く染まる。
翔はその場に立ちすくみ、恐怖で震えながらも心が凍りついた。
「な、なろっち、俺が、俺が話を聞かなかったせいで…!」
自分が振り返らず、なろの叫びに耳を傾けなかったことが、なろをこの危険にさらしたことを、期は即座に後悔した。
意識のないなろを前に、翔は手を震わせながら必死に呼ぶ。
「お願いや一目、覚ましてくれ… なろっち………俺のせいや……俺のせいや……!」
後悔と恐怖、そして自分を責める気持ちが渦巻き、翔の涙が止まらなかった。
周りは静まり返り、風だけが二人の間を通り過ぎた。
それでも翔は諦めない。
目の前で意識のないなろを、全身で後悔と共に守ろうと呼び続ける――。