ジリリリリ────
6時に設定した目覚ましを止めて背伸びをする。俺はお手洗いに行った後に顔を洗い出かける支度をする。俺のトレードマークの「ぺ」と書かれた黄色いパーカーではなくワイシャツにぶかぶかの淡い青色のカーディガンを着ている。正直ぶかぶか過ぎて肩が出してしまうので恥ずかしいのだが、先日らっだぁがもう着ないからと言ってこのカーディガンをくれたため、着ないわけに行かないのである。…まぁ、らっだぁの匂いがほんのりするから着たいってのもあるけど……。そして、ズボンは少しゆったりとしたものにした。身バレ防止のためと検査時に邪魔になったりしないように前髪を日常組コラボのバッドバツ丸くんをヘアピンで止め、淡いオレンジ色の縁の丸メガネをかける。最後に寒さ対策として青が少し混ざった白いマフラーを巻けば完璧だ。
俺は他の身支度を終えて駅のホームへ向かう。早朝のため外は静かでなんだかワクワクする。駅のホームに着くと新幹線が来ていたため俺は慌ててあらかじめ取っておいた指定席に座る。新幹線の揺れが心地いいのか俺は船を漕ぎはじめる。段々と視界が暗くなっていき俺は眠りについた。
次は───東京。東京。
はっと目を覚ます。俺は急いで降りる準備をきてぐちーつに連絡をする。
【もうそろそろ着きます。】
【了解。駅前で待ってます。】
ぐちつぼさんはびっくりマークなどをあまりつけない。だからこそ良くない発言をしていないか本当に心配だ。らっだぁが一度配信でこの話をしていた時は少しもやもやしたなぁと回想していると東京に着いた。新幹線を降りて改札に向かう。改札を出るとぐちーつが待っていた。
pn「ぐちーつぅ〜!」
gt「ぺんさん!リアルではお久しぶりですね!」
pn「滅多に会わないもんなw」
俺たちは久しぶりに会えた喜びで会話が弾んでしまい気づくと30分ほど経っており慌てて病院に向かった。
────────────
──────………
医者「───花吐き病だね」
pn「やっぱりそうなんですか…」
医者「今のところ症状が軽いから心配することはないよ。」
そう言ってお医者さんは処方箋を用意してくれて無事に診察を終えた。
gt「重症じゃなくてよかったっすね」
pn「本当にな〜」
俺たちはカニピンとらっだぁと決めた集合場所に向かいながら病院でのことを話す。軽症でも長続きすればいずれ悪化するから早めに解決しておきなさいと忠告を受けたが…。俺とらっだぁは友人で男同士。解決するには告白しかないとぐちーつに言われたが言った瞬間人生が終わる気がする。先が思いやられ、大きなため息をつく。すると微かにだが誰かが俺たちを呼ぶ声がした。そちらに目を向けるとピンク髪の女の子の様な服装をした男がこちらに手を振っている。
「──さーん!ぺんさーん!」
pn「カニピン!」
俺はオカマみたいな奴の元へ向かう。正直女の子にしか見えない。黙っていれば可愛い女の子だ。
「生ぺんさん初めて見たわ!!!」
rd「ぺいんと腕毛見して〜」
pn「きも…ッw」
いつぞやのやり取りを会うたびに行う。この瞬間が正直一番幸せだと感じる。この会話を覚えていてくれている事実が、心の中がじんわりと暖かくするからだ。こんな他愛のない話を永遠に出来たらいいのになんて、我儘だろうか。
gt「じゃ、集まったし行きます?」
「お、いーねどこ行くのぺんさん?」
pn「え?俺?」
rd「お前が出かけようって言い出したんだろwなんか行きたい場所があったんじゃないの?」
pn「あ″〜………ぇっと〜……」
チラッとぐちーつを見る。予定をもうぐちーつと済ませてきてしまったなんて言えるわけない。頼む、助けてくれ!!と見つめてみるが鼻で笑ったかと思うと「え??決めてないんすか」と言った。そう、見捨てられたのだ。最低である。その後も口籠もっているとらっだぁが口を開いた。
rd「もしかして俺たちと遊びたかっただけなの?もーぺんちゃんってばぁ〜!!!」
「え、キモ」
rd「はぁぁああ〜??????」
pn「アハハwww…!」
何かが来る感覚。喉奥から吐瀉物の味がして口元を抑える。まずい、ここで吐き出したりなんかしたらバレてしまう。────やっぱ、無理!!
gt「あ″!ぺんさんすいません!!」
pn「へ─────ッ??」
ポンッと背中を押されて前に倒れかけたが、誰かに支えてもらった。誰だろうかと顔を見るとそこには青い瞳の綺麗な彼だった。らっだぁの顔を見た途端すぅっと吐瀉物の感覚が薄れていく。そうか、嫉妬から来てるから…でも今は嬉しかっただけのはず…ということは定期的に起きたりもするのだろうか…。───それにしても、なんだかあったかいな…。俺はその暖かみをもっと感じようと擦り寄った。すると心地の良い波動がして瞼が重くなっていく。
rd「ぇ〜ッと………ぺん、さん…??」
pn「──────へ……ッぁ″!!!ご、ごめんらっだぁ!!」
花吐き病のことを考えていたら今の状況を忘れていた。そうだ、今俺はらっだぁの胸に体を預けている状況だった。だからあんなに暖かく心地が良かったのか…。もっと、触れていたかったなぁ…。
──────────────
rd side
rd「…………」
俺はぺいんとを横目で見た。ぽけぇっと上の空で目尻が垂れていて可愛らしい。それに加えて、俺が着ないからと言ってあげたカーディガンを着ていたり、大き過ぎて萌え袖になっていたり、普段は隠している左目が顕になっていて正直、誘ってるようにしか見えない。そんなぺいんとに魅入っていると気を利かせたぐちつぼが口を開いた。
gt「あ″〜っ…、なるせ?俺行きたいとこあんだけど一緒に行かね?」
「ぐちーつから誘ってくるなんて珍しいじゃん。勿論いいけどこの2人はどーすんの?」
gt「らっだぁが行きたい場所あるって昨日裏で言ってたからそこ行くってよ。」
流石ぐちつぼ。昔はアンチだったなんて想像も付かないほどの配慮っぷりである。まぁ俺のためではなくぺいんとのためだとは思うが。
gt「じゃ、そういうことだから俺ら行くわ!!」
「じゃ、用事終わり次第集合なー」
そう言って2人が立ち去って行った。ぺいんとはというと、まだぼーっとこちらを眺めているだけだ。俺はそっと自分に寄せて軽く背中を叩いてやる。するとぺいんとは赤子のようにうとうととし出し、俺に体を預けるように眠りに落ちた。人に身体を預けるとすぐ寝てしまうこいつ。本当に心配だ。変な人にそのうち連れてかれてしまいそうで。
rd「…好きだよ。ぺいんと。」
ぼそっとそんな言葉を呟き、ぺいんとを姫抱きして公園のベンチに向かう。公園に着いたらまずぺいんとをそっとベンチに下ろした。あゝ、なんでこんな今日は可愛らしいんだろうか。俺はそっとピンから溢れたさらさらな前髪をながす。女の子のように可愛らしい寝顔、一般人よりも長い綺麗なまつ毛。見ていると少しずつ体内から吐瀉物が迫り上がってくる感覚がした。
rd「ぅ″ぇ………」
ひらりひらりと向日葵のようなぺいんとの瞳と似た色の沢山の花が彼の頬に落ちる。俺は花を手に取り、ふぅっと息で飛ばす。花はふわふわと宙を舞って花壇に落ちた。花壇には沢山の青いパンジーが咲いている。それを見ておれは大きなため息を吐いた。まるで俺のぺいんとへの想いを映し出しているようだった。
rd「好きだなぁ……。」
視界が微かに滲みだし、つぅっと熱の籠った液が頬を伝って彼の瞼に落ちた。辛い、苦しい、痛い。吐瀉物が迫り上がってくる感覚がまた溢れ、ぼろぼろと花を吐きながら涙を流して彼が目覚めるのを待った。
────────────────
pn side
pn「ん……ぁれ………」
気がつくとベンチに横たわっていた。空は雲ひとつない快晴で綺麗だ。が、突然空は見えなくなって別のものが視界一面に広がった。
rd「あ、ぺんちゃん起きた?」
pn「ぅ″わ″ぁ″ァァ?!?!?!」
俺は慌てて立ち上がってらっだぁを指差した。
pn「な、な、なななんで膝枕…?!」
焦って呂律が回らない。頑張って言いたいことを言い切れば次は口を餌を求める金魚のようにぱくぱくさせてしまう。徐々に頬から耳へ。耳から全身へ熱が広がっていく。俺はなんてことを!!!嬉しくて胸が暖かくなって、吐瀉物が迫り上がってきて───────
pn「ぅ″げッほ……」
─────あ。気づいた時にはもう遅くて。ひらひらと宙を青い花弁が落ちる。バレた、絶対に。
pn「ぁの…これは………」
rd「ぁ、花吐き病?そっか〜…花吐き病か〜……やっぱストレス?」
pn「ぁ″、うん!そうなんだよ〜www仕事のし過ぎでこうなっちまってw」
そうか、花吐き病にも種類があるから…。俺は自分の花吐き病の原因を仕事のストレスということにした。勿論ストレスなんてない。まぁメンバーのみんなへの誹謗中傷を見たらストレスにはなってしまうかもしれないけれど。
rd「まぁ最近明晰夢とか配信とか頑張ってたもんな。お疲れ様。」
彼はふんわりと優しく微笑んだ。とても綺麗な笑顔で、つい魅入ってしまう。意識が上の空になってきた頃、スマホが鳴った。ぐちーつからだ。通話開始を押すとぐちーつが返答を聞く前に喋り出す。
『2人とも用事終わりましたー?』
『終わったよ〜』
らっだぁは俺を割り込んで返答する。そのままスマホを取り上げて俺の代わりに電話をしだした。2人は数言会話して電話を切った。何を言っているかあまり聞こえなかったが、一瞬『ぺいんと』という単語が聞こえた気がした。
rd「んじゃぺんちゃん行くよ〜」
pn「はぁ??どこに。」
「ぐちつぼたちの所〜」と言うと俺の手を掴んでスタスタと歩き出す。俺の手を…掴んで……?またしても俺は口をぱくぱくとさせるが俯いて歩いた。道中そんな状態でも人にぶつからなかったのは偶然なのか、それとも彼が道を空けてくれているからなのか。真相は彼にしか分からない。
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──────…………
カランカランとよくある入店時のベルの音が鳴る。それん聞いた店員がこちらへ来て人数を問う。
rd「ぐちつぼで予約しているところの連れなんですけども〜」
mb「あっ、はーい!ではこちらにどうぞ〜!」
店員さんは向かう方向を指差した後、スタスタと歩き出す。ぐちつぼの身長が高すぎて緑色の頭が近づくほどよく見えてくる。「ごゆっくりどうぞ〜」と微笑み店員さんは去っていった。
rd「2人ともお待たせ〜」
「おっせーぞらっだぁ!!」
gt「ぺんさんお疲れ様です。」
pn「そっちこそお疲れ〜」
思い思いに会話をした後注文をする。ドリンクバーはもちろんみんな頼んだのだが────
rd「俺ドリンクバーだけでいいよ。」
gt「えぇ???ちゃんと食べろ???」
「そーだぞ死んじまうぞ??」
pn「らっだぁ少しは食べね…?」
最近らっだぁが食事している姿を見た記憶がない。ダイエットなわけないし…てことは病気ってこと…??俺の頭は彼の体調で頭がいっぱいになった。俺から出来ることなんて食を勧めるくらいしかなくて。それすらも嫌かもしれないのに俺が出来ることなんて本当にない。だからこそ、彼の安全を願うことしかできない。
──────…………
「お待たせしました〜」
料理の盛られた食器が少しずつテーブルを埋めていく。だが4分の1のスペースは飲み物が一個置かれているだけだった。そんな光景を見てみんな一度口を紡ぐが料理が冷めてしまってはお店に失礼なので感謝を伝えて食べ始める。美味しい、とは感じるが何か物足りなかった。取ってきた飲み物を飲んでみんなを眺める彼。そうだ、俺はらっだぁに一口でもいいから何か食べ物を口に入れて欲しいんだ。
pn「らっだぁ!!俺のやつ美味しいから一口食べないか??」
rd「え!食べる食べる!!!」
俺はクルクルとパスタをホークに絡めて彼に差し出す。らっだぁは一瞬硬直したように見えたが、ぱくっとホークに食らいついた。そこで俺は気づいてしまった。これは所謂【間接キス】というやつではないだろうか…。しかも、あーんまで………。だんだんと耳に熱が集まり朱色に染まる。ちらっとらっだぁを見ればらっだぁの耳もほんのり赤い気がした。
rd「美味しいわこれ!!ありがとねぺんちゃん!」
そう言って彼ははにかむとバタッと言う音と共に倒れた。俺はらっだぁが倒れる瞬間、とてもゆっくりに見えて。そんな現実を認めたくなかったのか何度も脳内で再生された。
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gt side
らっだぁは重力を無視してぶっ倒れた。脈はあるし呼吸もしているが、顔色がとても悪く生きた死体のようだった。
gt「らっだぁ!!」
mb「大丈夫ですか?!救急車呼んできます!」
小さな人だかりの中、俺と成瀬くんは必死にらっだぁに声をかける。少しすると救急車のサイレンの音が聞こえてきて、担架にらっだぁは乗せられて救急車に乗った。俺たちも救急隊に続くように救急車に乗らせてもらう。救急隊はらっだぁに何度も声をかけ、心臓マッサージを続ける。その間、ぺんさんはずっと無心で彼の顔を眺めるだけだった。
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───────…………
病院に着き、医者に診てもらうと診断結果が出た。原因は花吐き病。知ってはいたが重度の花吐き病で何年も患っていたため、身体中花に蝕まれてしまったらしい。取り除けるものだけ取り除いてくれるとのこと。医者のその言葉に俺は安堵の息を溢す。だが安心してはいられない。これ以上蝕まれてしまってはこいつの身体が保たない。なんとかしなければ……。
遅くなってごめんなさい!!!!色々ありましてまじで遅くなってしまいました………。次は一ヶ月以内に投稿できるように頑張ります。
あと今回誤字脱字の最終確認などを行なっていないので所々おかしい箇所が多い方思いますので教えてくださると助かります。
では〜!
コメント
4件
ストーリーめちゃめちゃ最高ですね! 続き楽しみに待ってます🥰ゆっくり頑張ってください✨️✨️