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俺のせいでらっだぁが倒れた。
俺のせいで
俺が無理やり食べさせたから、食べさせたから!!!
彼の姿を思い出すたびに先ほどの光景を思い出して酷い吐き気に襲われる。
────今すぐにでも死んでしまいたい。そう思うがまだ贖罪もなにもしていないのだから死ぬわけにはいかない。
pn「…ちょっと行ってくる。」
gt「ぁ、はい。」
ぐちーつは突然喋りかけられたからか素っ頓狂な声を出して返事をした。普段の俺ならきっと笑っていたと思うが、今の俺にはそんな余裕はない。
トイレに向かって吐瀉物を吐き出す。酸っぱい胃液が口の中に広がる。その吐瀉物の中には青い花弁が混ざっている。お昼に食べたパスタも全て吐き出してしまう。時々訪れる過呼吸。ヵヒュ…と掠れた息と共にぼろぼろと涙と鼻水が溢れる。顔は自分から流れた汚い液体達でぐちょぐちょだ。止まらない吐き気と息苦しさから俺は意識を手放した。
─────────────────
はっと目が覚めると見慣れない真っ白な天井が映っていた。横を見るとぐちつぼと医者らしき人が話している。
gt「らっだぁ!!」
rd「ぐち…つぼ…??」
mb「目が覚めたんですね。」
医者は俺に声をかけると体調の確認をした。好調だと伝えると一連の出来事を話してくれた。その後、安静にするよう言い、医者は病室を後にした。
rd「…迷惑かけてすまん…」
gt「それはいい……いいんだけど…ぺんさんが!!」
ぺいんとがどうしたのだろうか。もしや何か巻き込まれて…!俺は一抹の不安を覚え、ぐちつぼの言葉を待つ。
gt「どこにもいなくて…!!」
rd「どこにもいない?!」
俺は勢いよくベットから飛び出し、走り出そうとした。が、足は思ったように力が入らず、飛び出した瞬間床に座り込んでしまう。何故こんな時ばかり足が動かないのか。
─────動け、動けよ!!
すると突然身体がふわりと浮いた。何事かと後ろを見ればぐちつぼが支えてくれていたのだった。俺が自力で立てたことを確認するとぐちつぼは一歩後ろに下がり、微笑んで言った。
gt「ぺんさんを見つけてきてくれ。お前にしか出来ないことだ。…ちゃんと、想いも伝えてこいよ。」
俺は深く頷き、羽織も帽子も着ずに病室を後に走り出した。どのトイレにもおらず、院内中を探し回った。庭園も探した。でもいなかった。どこにも。俺はそれでも諦めずに走り探していると看護師に止められた。
mb「らっだぁさん!安静にしてくださいと院長に言われたはずでは?」
rd「で…ッも……かひュ……ッ、ぺいん…っとが、ッ!!」
mb「分かったので息を整えてください!!」
俺は看護師によってその場に座らされて背中をさすられた。看護師の温かな手がぺいんとを連想させ、嗚咽が止まらなくなる。
rd「なにッか…ぁ″ッ、グスッ……ぅ″ッはッ……ぁ″っ、しりませ…ん″、か…ッ?」
mb「黄色の瞳が綺麗な方ですよね。あの方なら別の看護師が見つけたのですが…。どうも様子がおかしかったらしく、声をかけたらしいのですが走って何処かへ行ってしまったらしくて…。」
“様子がおかしかった”
この言葉を聞いた瞬間俺はすっと立ち上がって看護師の制止の声を無視して走り出す。だって簡単じゃないか。あいつは迷惑をかけないように何処かに隠れている。そういうやつだから。息も忘れるほど頭の中はぺいんとのことでいっぱいで、無我夢中で走って、走って、走ったんだ。
庭園を囲う草の仕切り。その奥にはちょっとした木々が植えてある。俺はその中へ入り、ぺいんとの名を呼んだ。いつもの声とは程遠い掠れた声で呼んだ。───彼に会いたい。自分の身がどうなろうとも、彼に会って話したい。
人のためにここまで出来たのは初めてだった。こんなに人を好きになったのは初めてだった。沢山の初めてをもっと与えて欲しい。もっと、お前の側に居させて欲しい。
視界が歪み始めた時、か細い息の音が聞こえた。様子がおかしかったのなら───と俺は音のする方へ向かう。違う人かもしれない。でも、小さな可能性にでも賭けてみたかった。
緊張と不安で息が詰まった。胃液が迫り上がってくる感覚がした。足を動かすたびに重くなった。だが俺はそんなことに気に求めないで走った。すると薄暗い木々の中に太陽の光を吸ったようなさらさらの髪が見えた。
pn「─────かひゅ…ッぅ″……、ぁ″ッ、はッ…ぁ………っ」
苦しそうに息をしている彼は目を瞑ってぐったりとしていた。部屋から普段出ないために白い肌は青白くなり、触ったら壊れてしまいそうだった。
rd「ぺいんと……」
俺はぺいんとの名を呼ぶとそっと割れ物を扱うかのように髪に触れた。さらさらとしていて柔らかい髪。するとぴくりと身体が動き、俺は手を離す。
pn「ら…だぁ…??」
弱々しい声でそう言うと口元を押さえて過呼吸になる。俺は慌てて背中をさすってやるがよくなるどころか悪くなる一方で吐瀉物を吐き出してしまった。身体の中にほとんど食べ物がないのか溢れるのは胃液ばかり。胃液はかすかに赤みを帯びていて、吐血をしていることがわかる。
pn「ぅ″ッ……ぇ″…っぁ″、が……はッ………ひゅ……、は………ッ」
咳のたびに青い花弁がひらりひらりと宙を舞って吐瀉物に紛れる。その花を見ると自分も何か込み上げてくる感覚がした。吐瀉物を吐き出したかと思えば全て黄色が綺麗な花だった。ひらりひらりと宙を舞って青い花弁に寄り添うように落ちた。その美しい光景を眺めて俺ははっとした。言わなければ、でも、ぺいんとが───脳内は慌ただしく回転する。だが自分もおかしい今、正常に回るはずもなく、どうとでもなれの勢いでぺいんとを抱き寄せ、そっと唇を合わせてしまった。一瞬口が開いたので見逃さずに舌を潜り込ませる。上顎のざらざらとしたところを優しく撫でてみたり、歯列をなぞったりした。微かにぺいんとから甘い声がしてふと我に返る。さぁっと血の気が引いていく感覚がした。
rd「───!!ご、ごめん!!!」
すかさず口を離すが、銀色の糸が俺たちを紡いだ。ぺいんとの顔を見るといつもは大きく眩しい瞳がまんまるの点になっていて可愛らしい。…て、そんなこと考えている暇なんてなかった。まず弁解と謝罪を─────
rd「あの…ごめんその、な、なんていうか!!い、勢いで!!!ね?!?!本当にごめん!!!」
綺麗なスライディング土下座を一度かますとぺいんとはいつもの高笑いをする。そのいつも通りの姿に俺もついつい笑みを溢してしまう。
pn「アッハハ↑wwwwww別に大丈夫だよwww」
─────今しかない。そう、脳内が言っているような気がした。こんなことして、許してくれたんだ、もしかしたら、きっと…。
rd「あのね…ぺいんと……今言うことじゃないかもしれないけど、言わせて欲しいんだ。」
pn「あ″ッ…?wどうしたんだよ改まって」
rd「俺っ………ぺいんとのことが…!!!」
俺は大切な言葉を紡ぐ前に視界が暗転した。
─────────────────
pn side
rd「俺っ………ぺいんとのことが…!!!」
らっだぁは何かを言う前にその場に倒れ込んだ。俺を探しにきたから…?────やばい、きもちわるぃ…………。俺は口元に手を当てる。なんとか抑えて立ち上がる。人を呼んで、そして、それで、それで、に、逃げなきゃ…。
rd「ま″ッ………て、!!!!」
俺は強引に足首を掴まれ、危うく転ぶところだった。なんだなんだと彼を見れば花を吐きながらこちらを掴んで離さない。そんな力がまだ残っていたのか。
pn「はなして……」
rd「ぃ″や…ッだ!!!かひゅ…ぁ″ッ、はーぁッ……」
なんで、と言おうとすると彼は俺の言葉を遮って叫んだ。
rd「お前のことが!!好きだから!!もう、いなくならないで欲しい…か……ら………」
だんだんと声が小さくなり、最後には力尽きてぐったりとしている。足は解放されたが、俺は動かなかった。それどころか彼のそばに近づいて抱きしめてしまった。
pn「俺も…好きだよ……」
俺は小さな声でそう呟き、彼の頭を自身の膝に乗せる。普段は帽子で隠されている彼の髪をふんわりと撫でる。ポケットからスマホを取り出してぐちつぼを呼び、ナースコールをしてもらった。
────────────────
微かに自分ではない寝息が聞こえ、意識が戻り始める。目を開けると最近見た真っ白の世界が視界を占領していた。身体を起こすとそこには見慣れたオレンジ色の髪が見えた。
gt「らっだぁおはよ。」
突然髪の本人ではない声が聞こえて辺りを見回す。すると少し離れた所にぐちつぼが座っていたのが見えた。
gt「調子はどう?」
rd「めっちゃ元気。」
なんだか肩の荷が降りたような鎖から解放されたような解放感があって気分がいい。何故だろうかと考えると思い当たることは一つ。倒れる直前にぺいんとに告白したこと。恋が実ったからなのか、それとも断られて気持ちに区切りをつけることができそうだからなのか、真実は横ですやすやと寝息を立てている彼のみぞ知る。気になるからと言って起こすのも酷かと思い、俺はぐちつぼと談笑して待った。
数刻して側で布が擦れる音と小さな呻き声が聞こえた。そちらに目をやると寝起きで焦点の合わない綺麗な瞳が映し出されていた。ぼんやりとした瞳は透明な膜に覆われてキラキラと太陽のように輝いていた。
pn「んん…らっだぁ…?」
rd「おはよ。ぺいんと。」
俺はそっと彼の柔らかな癖のある髪の毛を触った。嬉しいのか目を細めて受け入れていてとても可愛らしかった。だがこんな幸せな時間も今から切り出される話題のせいで全て崩れてしまうのかと思うと言いづらかったが、言うしかない。
rd「あのさ…?俺さ、確かぺいんとに告ったと思うんだけど、さ…返事…聞いてもいい…?」
ぺいんとは俺が“告った“という言葉を口にした途端目を見開き、こちらを見た。
…もしやあの時聞いてなくて今知ったのでは…?いやいや、だとしたら俺は相当大きな罪を犯してしまったのかも知れない…。言わなければ拒絶などされることもなくいつも通りに過ごせていたかも知れないのに…。そんな後悔の感情が顔に出ていたのか彼は慌てたように口を開いた。
pn「あ、あの…えぇっと…。よ、よろしくお願いします…//」
ふわりと微笑んで放たれた言葉は俺の中で反響してぶわりと顔に熱が集まった。そんなりんごのように真っ赤な二人を見かねたぐちつぼが大きなため息をついた後に口を開く。
gt「やっっっっっっと…くっついたよ…まじでどれだけ時間かかってんだよ!!ぺんさんはいいけどマッジでらっだぁうざすぎて大変だったんだからな?!」
rd「おい!!!!なんで俺はダメなんだよ!!!」
「らっだぁだから」なんてぐちつぼがいえばどっと笑いが溢れて空気が和んだ。するとどたどたと廊下を走る音がした。成瀬が笑いで俺が目覚めたことに気づき、駆けつけてくれたらしい。
「らっだぁ大丈夫か?!」
rd「成瀬!大丈夫大丈夫w」
成瀬は俺の言葉を聞いて安堵したのかその場に座り込んでしまった。そんな彼に緑のトゲトゲ野郎が爆弾発言をし出しやがった。
gt「あーそうそう成瀬。こいつ重度の花吐き病だっただけだから心配すんな」
「花…吐き病…?え“、てことはらっだぁ誰かのこと好きだったの?!んま!?誰かのこと好きだったま?!」
成瀬は少し考え込んだ後こちらを向いてぺいんとを見て上を向いてまたこちらを向いてこの状況を作り出した元凶に視線を直して叫んだ…
「らだぺんぁ“ぁ“ぁ“ぁ“ぁ“ぁ“!!!!!!!!!」
──────その後、俺たちは看護師さんから説教を喰らい、受付をして帰路に着いた。
忘れられない嵐のような日。忘れられない言葉。忘れられない太陽のような彼。考えるだけで胸が高鳴ったが前のように吐き気はなかった。これが本来の胸の高鳴りかと心を躍らせ、配信のスイッチを入れ、Discordに入った。
rd「おーーーーーーーーす」
「あ、きた」
gt「おい彼女待ってんぞ!」
pn「え???俺彼女?」
rd「hey彼女?w」
pn「hey彼女ぉ?w w」
「いちゃいちゃすんなや。俺らのぺんさんやぞ」
rd「はぁ????もう俺のぺいんとですぅーー」
「うわもう彼氏気取りかよ」
gt「きめーーーーー」
rd「はッ???」
くだらないやり取りをしていると痺れを切らしたのか、はたまた照れ隠しなのかぺいんとは「配信始めんぞ!」といい、自身の配信をスタートした。それに続いて各自配信を始めて挨拶をする。
────付き合ってもほとんど変わってなんていないけれどそれもまた俺たちにはお似合いなのかもしれない。
てことで花吐き病の話はこれにて完結です!ただ続き(二人の初々しい姿)を望む声などあれば書こうかなとは思ってます!完結まで大変ながらくお待たせしてしまってすみませんでした。そして応援し続けてくれてありがとうございました。別の小説もぜひ愛読してくださると嬉しいです!
では〜!
コメント
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うわっえっ、スゥゥゥゥゥゥ尊✨✨✨もうすげぇっすね!!!紗奈さん!!!あの、個人的その、ぺんちゃんがめっちゃ泣いてる苦しんでるシーンがよk(((((((殴 あとDキスまじおっっっっふ( ˆᴘˆ )って実際に言ってしまいましたわ...ぐちーつもまじ頑張ったな...ぺんちゃんはいいのかw確かにぺんちゃん優しかったしね、に比べらっだぁほぼ八つ当たりやもんね笑