テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
それから、カルネアデスバスは一度も止まることなく走り続けていた。
窓の外を流れる景色は暗く、今どこを走っているのかすら分からない。
「どうしたらいいんだろ?」
信愛が不安げに呟く。
「何かないか・・・」
龍河はそう言いながら、手掛かりを探すように車内を見回した。
そして、あるものに目を留める。
「ん?なんだ?これは・・・」
「どうかしました?」
信愛が龍河の視線を追う。
「いや、このバスの車内の広告」
龍河は壁面を指差した。
「広告の様に見えて、広告じゃない・・・」
「た、確かにそうですね」
そこに並んでいたのは、商品の宣伝でも企業の広告でもなかった。
家族写真に子供が描いたであろう似顔絵。
そして、何のために飾られているのか分からない、ありとあらゆる品々。
まるで誰かの人生の断片を、アトランダムに切り取って並べたようだった。
「ちょ!これ!」
突然、さくらが声を荒らげた。
彼女が指差していたのは、一枚の新聞記事だった。
「その新聞がどうかしたか?」
焔垂が尋ねる。
「これってあれじゃん!バスジャックの記事!」
「あ!本当だ!」
信愛も記事を覗き込み、目を見開く。
それは以前、茜がインターネットで調べていた、狗頸バスジャック事件について報じた新聞記事だった。
焔垂は記事をまじまじと見つめる。
「こっちは新聞の実物って感じだな」
「でも何でこの新聞が?」
美月が眉をひそめた。
朝陽が考え込むように口を開く。
「やっぱり信愛先輩が言った通りこのバスは
バスジャックに関係してるって事なんでしょうか?」
「そうなのかな・・・」
信愛は小さく呟いた。
そのとき、茜が別の展示物に目を留めた。
「てか、この家族写真って誰の写真なんだろ・・」
額縁に入れられた一枚の写真。
そこには、父親と母親、そして高校生くらいの娘の三人が、幸せそうな笑顔で写っていた。
茜は額縁を手に取る。
信愛も横から写真を覗き込んだ。
「お父さんとお母さん、それから娘って感じだね」
「というか何でバスに家族写真なんだ?」
焔垂が怪訝そうに眉を寄せる。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
龍河は何も答えなかった。
ただ、写真の中の父親をじっと見つめている。
その表情には、何かが引っ掛かっていた。
「馬場さん?」
信愛が呼びかける。
「どうかしました?」
「いや、その写真に写ってる父親・・・」
龍河は記憶を探るように目を細めた。
「どっかで見た気がしてな」
「え?この人知ってるんですか?」
「最近テレビで見た気がすんだよな・・・」
「テレビで?」
美月が聞き返す。
「ええ・・・最近」
龍河はしばらく考え込み、ふいに目を見開いた。
「あ!思い出した!」
全員の視線が龍河へ集まる。
「昨日ニュース番組で見たんだ!」
「ニュース番組?」
信愛が首を傾げる。
龍河は再び写真の父親を指差した。
「この写真の父親・・・」
その顔から、先ほどまでの迷いが消える。
「西・・鉄雄さんだよ」
「西鉄雄って──」
朝陽が記憶をたどるように呟き、すぐにハッと目を見開いた。
「あ!バスの運転手?」
「え?バスジャックの時に拳銃自殺したっていう?」
さくらの言葉に、龍河は静かに頷く。
「ああ・・間違いない」
焔垂が眉をひそめた。
「でも何で昨日のニュース番組で?」
「昨日、ニュースでバスジャックを
振り返る特集が放送されてたんだ」
龍河は額縁の中の父親を見つめながら続ける。
「その時に、当時の西さんの顔写真が紹介されててな」
信愛も改めて写真を覗き込んだ。
「その顔写真が、この父親と一緒って事ですか?」
「ああ・・間違いないよ」
焔垂が確信したように腕を組む。
「ならやっぱり、このバスはバスジャックに
関係してるって事で間違い無さそうっスね」
「だろうな・・・」
龍河は低く答えた。
車内には、再び重苦しい沈黙が落ちる。
新聞記事だけではない。
この家族写真まで、あのバスジャック事件へと繋がっている。
偶然で片付けるには、あまりにも出来すぎていた。
コメント
1件
読んだよ〜!!🌸 第164話、バスの中の広告が全部バスジャック事件の断片だったって展開、めっちゃゾクゾクした😭💕 特に龍河くんが写真の父親を「西鉄雄さん」って見抜いたシーン、鳥肌立ったよ…! 新聞記事だけじゃなくて家族写真まで繋がってるの、偶然で済ませられるわけないよね。続きが気になって今夜眠れそうにないよ〜!!×××さんの伏線の貼り方、マジで天才すぎる⋆♡