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ゆり組…🥺🥺
デビューしてから数年が経ち、それぞれの活動が増えてきた。
グループとしての仕事だけでなく、個人の仕事も増え、メンバー全員が多忙を極めている。
それは、俺と涼太も同じだった。
付き合っていることはメンバーにだけは伝えていたし、隠すつもりもなかった。
ただ、アイドルという立場上、世間に公表できるはずもなく、グループとしての関係性を崩さないように細心の注意を払ってきた。
それでも、これまでは問題なかった。
——いや、本当は少しずつ、何かが変わり始めていたのかもしれない。
「最近、涼太とまともに話してないな……」
雑誌のインタビューの撮影を終え、楽屋に戻りながら、ふとそんなことを思った。
グループの仕事がある時はもちろん顔を合わせるし、必要最低限の会話もする。
だけど、前みたいにくだらないことで笑ったり、2人だけの時間を過ごすことが、極端に減っていた。
——減った、というより、なくなった。
お互いに忙しいんだから仕方ない。
そう思おうとしたけれど、何となく胸の奥がざわつくのを止められなかった。
「おつかれー」
そんなことを考えながら楽屋の扉を開けると、すでに何人かのメンバーがくつろいでいた。
佐久間がソファでスマホをいじりながら「あ、翔太お疲れ」と軽く手を挙げる。
「お疲れ」
渡辺も適当に返事をしながら、自分の荷物をロッカーにしまう。
その隣では、目黒とラウールが何やら真剣に雑誌を眺めながら話していた。
「この衣装、めっちゃかっこよくない?」
「わかる。絶対舘さんが着たら最強だと思う」
自然と「舘さん」という単語に意識が向く。
ちらりと視線を向けると、涼太は少し離れた場所で、ふっかと談笑していた。
(……別に、普通じゃん)
そう思おうとして、また胸の奥がちくりと痛む。
昔は、楽屋に入れば自然と隣に座っていたのに。
いつの間にか、そんな当たり前だったことすらなくなってしまった。
「しょっぴーてさ、最近だてさんと遊んでる?」
突然のラウールの声に、ハッとする。
「……え?」
「いや、なんか最近あんまり2人でいるの見なくない?」
そう言われて、俺は無意識に涼太の方を見る。
涼太もこちらを見ていたが、その表情は読めなかった。
「そりゃまぁ、忙しいし?」
なんでもないように笑って答えたつもりだった。
でも、目黒がぼそっと「最近の2人、ちょっと変じゃない?」と呟いたのが聞こえた。
佐久間も「確かに、前みたいにくっついてる感じが減ったかも」と同意する。
「喧嘩したの?」
ラウールの率直な言葉に、思わず「してねぇよ」と返す。
「じゃあ、なんかあった?」
「……別に」
そう言ったものの、自分でも違和感は感じていた。
別に、嫌いになったわけじゃない。好きじゃなくなったわけでもない。
ただ、何かが前と違う。
それを言葉にするのが怖くて、考えるのをやめた。
「まぁ、2人の問題なら俺らが口出しすることじゃないけどさ」
阿部ちゃんの静かな声に、曖昧に笑うことしかできなかった。
ふと涼太の方を見るとは静かに座ってスマホを眺めていた。
(涼太は……何も思ってないのかな)
少し前なら、こういう時、涼太の方から「どうした?」って聞いてくれた。
だけど今は、何も言わない。
(俺が、何か言うべきなのか?)
でも、何を言えばいいのかわからなかった。
「なあ翔太、次の収録の台本確認した?」
その時、ふっかがふいに話しかけてきた。
「あ、うん……」
考えそうになった気持ちを振り払うように、ふっかの方へと視線を向けた。
何となく、涼太の目を、見ないようにしながら——。