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「ええっ?!えへへへ……かっこいいりひとさんにそんなこと言われちゃったら、じゅんくん困っちゃうなぁ…」
両手で赤くなった頬を押さえながら
嬉しさを隠しきれずにふにゃりと微笑む姿が可愛すぎて、本気で理性が危うくなる。
思わず腕を伸ばしてその細い腰を抱き寄せそうになるが、拳を握りしめてグッと堪えた。
ダメだ。
今日はこれから、彼が楽しみにしていたデートなのだから。
ここで手を出したら家から出られなくなる。
それにしても、純一のファッションセンスは相変わらず素晴らしい。
この絶妙な引き算と全体のバランス感覚……
もし俺がこれと同じ、オーバーサイズのゆるいコーデをしたら、間違いなくただの
「だらしないアラサー」としてダサくなる気がする。
けれど、目の前の恋人は、ただ可愛いだけの存在ではないことを俺は誰よりも知っている。
社会復帰してまだ数日
日々の業務や理不尽な暗黙の了解に打ちのめされながらも
毎日全力で向き合う彼の姿勢は、まさしく職場の誰よりも誠実で勤勉だと聞いている。
そして、そんな健気な彼が、俺の前でだけ見せるこの無防備なギャップ。
俺の理性よ、頼むからあと数時間は耐えてくれ。
「んふふ……!りひとさんが今日もすっごくカッコいいから、じゅんくん、早くぎゅーってしてもらいたいな…♡」
ふいに純一がトロンと目を細めて、上目遣いで甘えた声を漏らした。
……やはり、そう来るか。クソ可愛い
昨日あんなに泣いた反動もあって、今日の彼は甘えの欲求がいつも以上に強い。
「えーと、今日はデートだし…ここじゃなくて、目的地に着いたらしてあげるから、ね?」
これから街中へデートに行くというのに、人目のない自宅の玄関先で
こんなに可愛い恋人と全力でハグなんかしてしまったら
きっとスイッチが入って
ベッドに連れ戻して立てなくなるまで抱き潰してしまう気しかしない。
それは心理士としての理性ではなく、雄としての本能が警鐘を鳴らしている。
「えー!やだっ、いまがいいのぉっ!」
「ふふ……ほら、まずは靴履いて?出発しようよ」
「むぅ〜〜っ、おあずけってやつですか……りひとさんのいじわる」
はあああ……可愛すぎる。
あまりの尊さと健気さに、物理的に胸が痛くなってきた。
心臓が苦しいレベルで脈を打っている。
危うくすべての予定を投げ打って抱きしめ
二度と外界へ離したくなくなりそうになるが、何とか大人のプライドで堪えた。
そして二人で連れ立って玄関を出て
近所のケーキ店までの道のりを、歩幅を合わせながら並んで歩き始める。
◆◇◆◇
休日の午前中
平日と違ってビジネス街へと向かう車も少なく
穏やかな陽射しが降り注ぐ中
そっと手を繋いで歩く純一との時間は、何にも代えがたい最高に幸せなものだ。