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コメント
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うおおおおお!!第3話めっちゃ熱かったです😭💥✨ 勇者マジ強すぎて草。いやマジで「辞書に無給の休日出勤はない」発言で完全に心臓持ってかれました!しかも魔王も勇者もシステムの駒っていう核心ヤバすぎでしょ!でもそんなシステム全部ブッ壊して「世界壊して作り直す」って宣言してからのグランドリセット、もう鳥肌しか立たんかった…最終的にちゃんと追加報酬の交渉忘れないの本当に好きです、仕事人すぎる(笑)そんな隠居勇者の今後ガチで気になるんで続きめっちゃ待ってます!!🌸✨
王都の空が割れた。
それは、物理的な現象ではない。空という概念そのものが、巨大な刃で切り裂かれたかのように左右へ分かたれ、その亀裂から溢れ出したのは、星々をも呑み込むような漆黒と、秩序という名の暴力的なまでの光だった。
出現した二つ目の魔法円環。それは魔王城にあった窓とは比較にならない。王都全域を覆い尽くさんばかりの巨大な魔法陣が、幾重にも重なり合いながら、静かに、しかし確実に世界書き換えようとしている。
『――アステリオスは、地上の知的生命体による抵抗値を確認するための触媒に過ぎない。規定値以上の戦闘能力を確認。これより、地上の再定義を開始する』
複数の声が重なり合った、感情の欠落した合唱が空から降り注ぐ。 王都の住人たちは、先ほどまでの魔族の侵攻とは質の違う、根源的な恐怖に叩き伏せられていた。膝をつき、祈る気力すら失い、ただ空を見上げる。
「再定義だぁ? …かっこいい言葉を使えば、自分の都合が通ると思ってるタイプなのかな」
バルコニーから飛び出した勇者は、重力の影響を完全に無視し、垂直に空へと昇っていた。 彼女の周囲では、風属性魔法が激しく渦巻き、空気抵抗による発熱さえも魔力で強引に冷却している。
「おい、そこの合唱団。聞こえてるんだろ。私の睡眠時間をこれ以上削るなら、君たちの喉笛、一人残らず掻っ切るけどいいかな」
勇者の声は、空を覆う巨大な魔法陣に対しても、変わらず不機嫌で、事務的だった。 すると、円環の奥からそれが降りてきた。
光り輝く翼。しかし、それは鳥の羽根ではなく、幾何学的なクリスタルが連なったような無機質な構造体。顔と呼べる場所には目も口もなく、ただ一つの巨大な魔法の瞳が埋め込まれている。 伝承に語られる天使とは程遠い、殺戮に特化した自立型魔法兵器――それが、空を埋め尽くすほどに現れた。
『個体名:勇者。貴殿の能力は、現在の文明レベルにおいてエラー値に相当する。削除対象として優先度を最高に設定』
「削除ぉ……? はん、やってみなよ。私の辞書に無給の休日出勤という文字はないんだ」
勇者は空中で静止すると、長剣を正眼に構えた。 刀身はすでに、白と紅の魔力が臨界点を超えて溢れ出し、周囲の空間をチリチリと焼き焦がしている。
無数の天使型兵器が、一斉に光の槍を放った。 一つ一つが城門を一撃で粉砕するほどの威力を持つ一閃。それが、雨のように勇者目掛けて収束する。
「[虚無の殻]」
勇者が短く呟くと、彼女の周囲一メートルに、透明な球体の壁が出現した。
光の槍がその壁に触れた瞬間、爆発すら起こさず、ただの無へと消えていく。属性を問わず、あらゆる事象をなかったことにする防御魔法。魔力の消費量が尋常ではないため、通常の魔法使いなら一秒と維持できない代物だ。
「さあ、次はこっちの番だ。お前たちの主人が誰かは知らないけど、修理代が高くつくことを覚悟してね」
勇者は加速した。 光の壁を突き破り、天使たちの群れの真っ只中へと突っ込む。 彼女の剣が閃くたび、神の使いとされる兵器たちが、バターのように容易く両断されていく。 [崩壊]を付与された剣先は、防御障壁も、高密度の外殻も、すべてを無意味な塵へと変えていく。
「一、二、三……。ああ、数えるのも面倒だ。まとめて消えてよ」
彼女は空中でコマのように回転しながら、魔力を全方位に放出した。
「[極光の太陽]」
王都の夜が、一瞬にして真昼へと変わった。 膨大な熱量と光が球状に広がり、周囲にいた数百体の天使を瞬時に蒸発させる。 だが、空を覆う魔法円環は、なおも新たな兵器を吐き出し続けていた。
『抵抗は無意味である。我らは秩序。我らは世界の意志である』
「世界の意志? 笑わせないでくれよ。世界が私に働けって言うなら、そんな世界、私が壊して作り直してやる」
勇者の紅い瞳に、わずかな暗い愉悦が混じる。 彼女は、自分がただの勇者ではないことを知っていた。
代々魔王を倒してきた一族。だが、その真実とは、世界を管理する上の連中が、定期的に地上を間引き、管理するためのリピーターとして作られたシステムの一部。 魔王も勇者も、所詮は同じチェス盤の駒に過ぎない。
だが、今代の勇者は、あまりにもシステムを逸脱しすぎていた。 彼女が隠居を望むのは、平和のためではない。自分を縛る運命という名のプログラムを、金と領地で上書きし、完全に無効化するためだ。
「……気づいてるんだよ。アステリオスを殺した時、あいつの魔力がどこに流れたか」
勇者は、さらに高度を上げた。 魔法円環の中心――そこが、この異常な魔法の発動源であり、地上のシステムを監視している場所だ。
「アステリオスの魔力は、私の中に吸収された。魔王を殺すたびに、勇者は強くなる。それは、いずれ勇者が魔王に代わる、次の監視者になるための準備だろう?」
空からの声が、一瞬、沈黙した。
#ドライ
1,898
#主人公最強
杯雪乃
1,748
#勇者
りな
120
「でも残念。私はそんな重役、引き受ける気はない。私は私の領地で、美味しいお茶を飲んで、昼過ぎまで寝る。……その邪魔をするシステムなら、ここで叩き壊す」
勇者は長剣を頭上に掲げた。 彼女の髪が、魔力の奔流によって逆立ち、白く輝く。 瞳の紅は、もはや深紅を超えて黒ずみ、破壊の衝動を物理的な圧力に変えて放っている。
「[終焉の否定]」
それは、魔法の円環がやろうとしていたリセットを、逆に円環そのものに対して行う魔法だった。
勇者の剣から放たれたのは、もはや光ですらない。 すべてを否定する漆黒の奔流。 それは空を割り、二つ目の円環の中心を、迷いなく貫いた。
バリバリ、と空間が砕ける音が王都中に響き渡る。 完璧な秩序を誇っていた魔法陣に、蜘蛛の巣状の亀裂が走り、円環から溢れていた光が、濁った泥のように崩れ落ちていく。
『――エラー。深刻なシステム破損を確認。管理個体勇者の……パ、パラメーターが、計測不能……』
合唱団の声がノイズ混じりに歪み、やがてかき消えた。 空を覆っていた巨大な円環が、まるで割れた鏡のように砕け散り、光の破片となって夜の闇に吸い込まれていく。
勇者は、ゆっくりと降下した。 空には、最初から何もなかったかのように、平穏な星空が戻っていた。魔王城の窓に映っていた、あの皮肉なほどに透き通った星空が。
「……。これで、本当に終わりかな」
彼女は王城のバルコニーに再び降り立ち、膝から崩れ落ちる国王を一瞥した。 剣を鞘に納める。その手は、わずかに震えていた。 さすがの彼女も、世界のシステムを相手に残業をした代償は、小さくなかったらしい。
「陛下。……今度こそ、終わりです。あ、追加報酬の件、忘れないでくださいね。もし踏み倒そうとしたら……」
勇者は空を指差した。
「さっきの空みたいに、このお城とか、この国。消しちゃいますから」
国王は、もはや声も出せずに、ただ何度も激しく頷いた。
勇者はそれを見て、満足げに、しかしひどく疲れた様子で鼻を鳴らした。 東の空が、わずかに白み始めている。 彼女にとっての長い、長すぎる一日が、ようやく終わろうとしていた。
「……帰って、寝よう。明日の昼飯は、絶対に誰にも邪魔させない」
少女は、朝日を背に浴びながら、重い足取りで城の中へと消えていった。 それが、後に史上最強の隠居勇者と呼ばれる伝説の、本当の始まりだった。