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家のドアが音を立てて開き、そこには息を切らしたヒスイが立っていた。
そして、彼女は私の肩を掴んでこういった。
「と、トウカちゃん、お願い、助けて!」
ヒスイは目に涙をためながらも、私を真っ直ぐに見てそう言った。
「何よ急に、それに助けるって、」
「3人目の転生者の事は知ってるよね?」
“転生者”
その言葉に一瞬思考が停止する。
「あ、あの子が、あの子がね…。」
ヒスイによると、三人目の転生者、アイラは
ヒスイの事を訳もなく毛嫌いしているようだった。
ヒスイの事をいじめっ子にした手上げたり、自分のしたことの濡れ衣を着せたりするのだそう。
正直、聞いていて愉快だった。
今まで私の居場所を奪ってきたヒスイが、新しい転生者に居場所を奪われるなんて。
いい気味、ざまあみろ。
心から、そう思った。
「それで? 転生者の事はわかったけど、なんの用? まさか、急用ってそれだけじゃないでしょうね?」
「もちろん、それで、昨日、アイラちゃんに呼び出されたの。だから、着いてきて欲しいなって…。」
「着いてくる?私が? 冗談でしょ。」
「お願い、トウカちゃんしか頼れないの。」
「……。」
正直、迷っている。
このまま彼女を見捨てるか、彼女について行って、どんな目に合うかを見届けるか。
「ついて行ってやれよ、可哀想だろ。救世主様が。」
“救世主様”の部分を強調したカルが、後ろから言った。
「余計なこと言うな」と、後ろに視線を送る。
「いっ、いまのは?」
「なんでもない、さっさと行きましょ。」
カルが絡むと余計に面倒くさくなりそう。
さっさと家を出るのが一番。
可哀想な救世主様を見届けてあげましょう。
強引にヒスイの手を引いて、家を出て行った。
「つ、着いてきてくれる、でいいんだよね?」
「えぇ。いろいろあったけど、転生者仲間だもの。着いていくわ。」
「ありがとう、トウカちゃん。」
なんて、全部嘘。
ありがとう救世主様、これで1週間は笑顔で過ごせるわ。