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パチンッ
男が指を鳴らすのを確認して、メンバーは警戒しながら周りを見渡す。
だが….
「何も、起こらない…..?」
不安そうに、佐久間が呟く。
先程のような攻撃も、地面が揺れるもなく、何も起こらない。
しかし、警戒は緩めない。
男の行動全てになにか意味があると思って動くのだ。
鋭い瞳で、周りに視線をめぐらす。
〖キイイイイイイイ!!!!〗
〖ガサガサガサガサ!!!〗
〖ッッッッッ!!!!〗
「…..なっ….!?」
一気に現れた大きな影を見て、8人は固まる。
その大きな影は、瞳を赤く光らせた大量の”動物”だった。
「まさか….!!」
8人は、嫌な予感がして男の方を向く。
男の隣に、”深澤”がいる。
「やっぱり….!」
岩本が、男を睨みつける。
深澤の瞳が、かすかに赤く光っている。
「ふっかの式神を……っ!!」
今自分たちに襲いかかろうとしているのは、深澤の式神だ。
深澤が洗脳されているせいだろう。
大烏以外の式神は、主人の洗脳に耐えられなかったのだ。
〖カア!カア!!〗
これでは、大烏も攻撃ができない。
8人だってそうだ。
式神は、深澤の一部のようなもの。
傷つけられるわけがない。
だが、式神は理性など失い問答無用で襲いかかる。
それに……
「ふっか!!ダメだ!!能力を使いすぎてる!!」
岩本は、深澤に向かって叫ぶ。
深澤の能力は式神だ。
その能力は、凄まじく強い。
大烏は自立できており、深澤の意思関係なしに姿を表すこともでき、深澤の力を借りる必要も無い。
だが、ほかの式神は違う。
それ以外の式神は、”深澤の魂”を借りて姿を現すことができるのだ
だから、極力、戦闘では大烏以外の式神を呼び出さないようにしているのだ。
なのに..
「こんなに、力を使ったら….!!!」
深澤が、倒れてしまう…..
「ふふ….何か言ってるみたいだ….」
岩本の叫びを男は嘲笑う。
そして、追い討ちをかけるように
「…….っぅ….!!」
深澤の腕を抱き寄せ、また能力を使わせる。
深澤の顔が少し歪む。
そんなことなどお構いなしに、男は深澤に能力を使わせ続ける。
「まだまだ足りないだろう?」
「こんなものではない。まだいけるだろう?」
「苦しいかい?これで苦しいなんて思ったら先がキツイよ?」
「はっ…..う゛….ぁ゛…..!!」
苦しむ深澤を愉快そうに眺めながら、深澤に能力をどんどんと使わせる。
「今、初めて私の役に立てたね….?」
最後の男の一言で、深澤から苦しみの表情が消える。
それと同時に、式神の瞳の赤も鋭く光る。
そして、さらに動きも早くなる。
「嘘!?こんなん…キリないって!!」
「絶対傷つけちゃダメだけら!!!」
「わっかってるよ!!!でも、無理だろ!?」
メンバーの焦り声が飛び交う中、岩本だけは…
「…..まずい….!!」
焦りながら、何とか深澤の元へ向かおうとする。
「今、ふっかは能力の限界を超えた….!!このままじゃ….!!!」
迫り来る式神を丁寧に避けながら、男と深澤のいるビルへ走る。
このままでは深澤が、本当に戻らなくなってしまう….
「わかったよ!!」
唐突に、後ろから声がする。
佐久間と阿部が、いつの間にか後ろに立ってた。
何をするのか。
「照、ふっかのとこに早く行ってあげて。」
阿部が優しく笑い、岩本に言う。
「….え?」
岩本が問いかけるより前に、佐久間が叫ぶ。
「….ふぅ…..!!ラウー!!!しょーたー!!!りょーたー!!!こーじ!!!れーん!!!式神はあ!!任せたーーーー!!!!!!」
思いっきり息を吸い込み、叫んだ言葉。
佐久間の大声に、岩本を除いて5人は即座に理解する。
その意図に。
「は!?お前らは!?」
だが、その意図を理解できてない岩本は焦る。
5人に式神を任せていいのか?
そんな焦りを読み取った2人が、不敵に笑う。
それと同時に、
〖カア!!〗
いつの間にか、大烏は自分たちの上を泳いでいた。
「俺とあべちゃんと、大烏。」
「俺らで男を食い止めるよ。」
任せろ、と言った表情で2人と1匹が男の元へ向かう。
「……っ….任せろ….!」
岩本に、深澤が託された。
7人と大烏に感謝をしながら、岩本はビルの階段を上っていく。
「やぁ、悪のボスさーん?」
「遊びに来ちゃった、なーんて。」
佐久間と阿部は、笑顔で、だが、温度の無い声で男の前に立つ。
「…..来ると思っていたよ。でも、君たちだけかい?」
男は誰かが自分の元へ来ることを予想していたようで、冷たい笑顔で返す。
ただ、目の前にいるのは佐久間と阿部のみ。
もっと、それこそ大烏が来ると思っていた男からしたら、もっとも期待はずれな2人だった。
「涼太!!」
「OK!」
渡辺の掛け声で、宮舘が動く。
式神を担当している5人は、調子よく式神を相手にしていた。
「やっぱり、ふっかさんの式神なんよな…」
「優しさが、消えてないんだ…」
「式神の動きも、たしかに遅くなってる!」
向井、目黒、ラウールも気づいている。
式神は、深澤の魂を借りている。
だから、深澤の優しさはまだ消えていない…!!
「この調子で3人がスムーズに進めるようにしよう!」
宮舘の声に4人は頷いて、また式神に向き直る。
「はっはっはっ….」
ビルの階段を自分の足で駆け抜けていく。
能力で、火炎の圧力の移動を使うのが早いが、ここで能力を使うと男にバレる可能性がある。
そうなったら、7人と大烏の協力が無駄になる。
だから、走る。
今が何階かなど知らない。
深澤のもとへ走るだけ。
それ以外、何も考えなくていい。
「はぁっはぁっ….ふっか….!」
みんなが、岩本を深澤のもとへたどり着けるようにしてくれている。
みんなの思いを、岩本は背負っている。
深澤を救い出す。
深澤の笑顔を取り戻す。
それだけを胸に、岩本は走り続ける。
「本当に君たちだけでいいのかい?」
男は、2人に見下すような視線で問いかける。
「手加減、してあげないけど?」
男は嘲笑いながら、手加減なんて言葉を使う。
「ははっ、何言っちゃってんの?」
「そんなのいらないって。」
一方で、佐久間と阿部もずっと笑顔で答え続ける。
2人も、驚いていた。
強敵を前にして、ここまで頭が冷えてるなんて。
人間は、怒りが最高を超えると、一周回ってものすごく冷静になれるのだ。
それもそのはず。
男が手を離さないもの。
能力を使いすぎて、力なく項垂れる深澤。
男が深澤に触れている間は、ずっと能力が発動しているのだろう。
まずは、男に深澤を手放してもらわないといけない。
そうしないと、岩本が深澤に触れられない。
「ていうかさ、お前こそそんな余裕ぶってていいわけ?」
佐久間は、男に対して笑顔で、でも、かなり低い声で言う。
「君たち、今の立場がわかっていないようだ….」
男は呆れながらため息をつく。
それに対して、
「”俺ら”に、多分勝てないよ?」
阿部ば笑顔で、片手を上げて合図を出す。
バサッバサッ!
頭上に落ちる、大きな影。
羽音がひとつ聞こえる度に押しつぶされそうになるほどの威圧感。
空を優雅に泳ぐそれ….
「….やはり…..やはり大烏が来るかっ….!!!」
大烏を目指した瞬間、男は瞳を輝かせる。
そして、
「もう、必要ないかな。」
と、だけ呟き….
「十分役に立ったさ。だから、もう….」
「…..っ!?」
急な男の不気味な微笑みに、思わず2人は固まる。
男は、
「必要ないよ。」
とだけ、冷たく言い放つ。
深澤を床に雑に放り、大烏の方へ向かう。
「……..あべ….ちゃん…..」
佐久間が、うつむきながら阿部の名前を呼ぶ。
「….うん。わかってるよ。」
阿部も、佐久間と同じだった。
「もう、いいよね…?」
佐久間の問いに、
「うん。もう、いいよ。」
阿部は、”許可する”。
感情で戦うことを。
「……っ!」
階段を走り続けた岩本。
ようやく、階段の終わりが見えてくる。
ラストスパートで、一気に残りの階段を駆け上る。
やっと、深澤のもとへ…..
「……ふっ….か…..?」
「…..っ…..っ……カハッ….ぁ゛っ….ケホッゲホッ…..はぁっ…..」
岩本の目の前には、自分の首を締める深澤がいた。
「ふっか!ダメ!やめて…!!」
岩本は急いで深澤のもとへ駆け寄り、手を首から離させる。
痕がつくほど、強い力で締めていたようだ。
阿部と佐久間のおかげで、男はたしかにいなかった。
だが、なぜ深澤はこんなことを?
それが分からない岩本。
それでも、自分がここに来た理由、果たすべき目的がある。
洗脳と酸欠で、焦点の合わない瞳を見つめる。
「…..ふっか。俺の話、聞いてくれる?」
岩本は、優しく深澤のことを”抱きしめた”。
(岩本視点)
まずは、ごめんねが先にきちゃうな….
俺には、ふっかの抱えてた苦しみとか、全部理解できる訳じゃない。
だから、今から言うことを全部偽善だと思うかもしれない。
全部の言葉を、嘘だと感じるかもしれない。
それでも、ふっかに伝えたいんだよ。
だから、聞いてね。
俺と初めて会った時のこと、覚えてる?
『今日から相棒の岩本照です。よろしく。』
俺ら、急に組めって言われたよね。
今思うとさ、俺はあそこから変われたんだ。
ふっかと、出会ったから。
『岩本さんか~!よろしくね!俺は深澤辰哉!みんなからふっかって呼ばれてるよ!』
初めてふっかを見た時、すごいテンション高くて、なんか合わないなって思った。
とりあえず笑顔でテンション高けりゃいいって思ってんだろーな、って。
その時から、もう辛かったんでしょ?
そうやって、明るく振る舞わないと…..
それに、しばらく一緒になってわかったよ。
ふっかは、自分の才能を前に出さないってことに。
それこそ、式神使いなんていう珍しい能力があるのに、それを見せびらかさないんだもん。
むしろ、式神使いっていうのを悔やんでるようにも見えた。
…..それに気づいた時、聞いとけばよかったね。
ふっか自身のこと。
俺はいつも聞くのが怖かったんだ。
ふっかと一緒にいる時間が幸せだったから。
任務の時間も。
消防士と店員としての時間も。
友達として遊んでる時も。
全部全部、幸せな時間だったから。
それが壊れるんじゃないか、俺とふっかの関係が崩れるんじゃないかって……
俺は、ずっと不安だった。
ふっかとの幸せな時間が増えるほど、俺はふっかについて聞けなくなってた。
ふっかはさ、多分知ってたんでしょ?
俺らがチームになること。
ふっかだけは、急に男の声が聞こえてきても動揺しなかったし、俺らがスムーズに進むように動かしてた。
いくら周りを引っ張ることが得意なふっかでも、何も知らない状態だったらできないよね。
最初のうちは良かったと思ってた。
だって、ふっかは前に出てたじゃん。
ふっかも、嬉しかったんだよね?
バラバラなチームを引っ張ることで前に出れるし、連携が取れてない中で自分が大烏を出して目立つ……
最高だよね。
……最高、だったよね。
チームとしてのときを過ごす中で、ふっかは孤独を感じてたんだね。
俺らが強くなるのは嬉しい、でも寂しいっていう矛盾を抱えてたんだね。
新しくラウがチームに入った時、チームとしての力が一気に強くなった。
それに、舘さんと翔太が仲直りしたことで2人の連携が一気に高くなって、それが周りに影響を与えた。
みんな、強くなった。
でも、ふっかは…..変われなかったんだね….
だって、式神使いはどれだけ頑張っても、能力自体が強くなることはないから…..
でもさ…..
あの時、急に俺を呼び出した時。
なんで、呼び出してくれたの…..?
ふっかはさ、心のどこかでいつも助けを求めてたんだよね?
その助けの求め方は、全部不器用だけどね。
大丈夫だって、大丈夫じゃないサインだったし、笑顔だって、無理してるサイン……
そして、あの日、俺に全部話そうとしてくれてた…..
それがどこまでの話かは、分かんないけど….
俺があの時聞いてたら、話してくれたんだよね?
ふっかの抱えてる孤独も、才能を嫌うようになった理由、前に出なくなった理由、男のことだって….
全部、話してくれてたのかなぁ…..
でも、俺は聞かなかった。
ふっかがどうでもいいからなんかじゃないよ。
さっきも言った通り、ふっかといる時間が楽しくて……
俺にとって、ふっかは何よりも大切な存在だったから。
「信じてもらえないかもしれない。そんなの嘘だって思うかもしれない。でも、俺は…..また、ふっかの笑顔が見たい…..苦しさを紛らわす仮面の笑顔じゃない、本物の笑顔…..」
岩本は、深澤を優しく抱きしめながら、自分の感じていたことを伝える。
「………違う……..違う……!本物……?そんなの……最初から…..なかったっ….!!」
深澤は、否定を繰り返す。
だが、それでいい。
深澤は、岩本の言葉に反応して、返している。
きっと、洗脳が和らいできているのだろう。
なら、深澤が自分を肯定できるようになるまで自分の本音を伝え続ければいい。
(深澤視点)
違う…..違うんだよ…..
照…..
俺は、ずっと…..
みんなに嘘ついてたの……
笑顔の仮面を覚えたのは、高校生の時。
藤森先輩が引退して、バスケ部を俺がやめてすぐ。
気づいたんだ。
“笑ってやり過ごせばいい”。
“笑ってれば好印象”。
それが、前に出なくても誰かに見てもらえる。
誰でもいいから、なんかいい人そうだなって思って欲しかった。
みんなと一緒にいる時だってそうだよ。
ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと……!!!!
全部、”仮面の笑顔”なんだよ…..
本物の笑顔なんて、もうわかんないもん….
とっくに捨てた感情なんて、もう…..覚えて、ないから…..
たしかに….照の前だと、ほんとに楽しいなって思う…..
でも、そう思う度に苦しくて….すごい、消えたくなる…..
照の前なら、仮面外せてるのかなって思う度にしんどくなる…..
辛い….
照と一緒に楽しい時間を過ごす度に苦しい…..!
照だけじゃない…!!
みんなと一緒にいる時もそうだ..!
心のどこかで楽しいって思っちゃったら…..
自然と笑顔が溢れちゃったら……
楽しいよりも…..消えたくなるんだよ…..
でも、唯一消えたくないって思えたの….
ボスの…….もう、ボスなんて呼ぶ資格が……俺には…….ない、か……
あの人の前なら、今まで感じてた俺の中の気持ち悪いが消えてくの…..
俺が、俺が嫌だったことを、全部肯定してくれる。
俺の全てを受け入れてくれる。
俺のことが必要だって….
俺は役たたずじゃないって…..
俺の事だけを見てるよって言ってくれたの….!!
だから、あの人の為に尽くしてた…..
あの人の幸せが、俺の幸せ….
そうだ、あの人の幸せは俺の幸せ….!
だから、俺はあの人のためにいっぱい頑張って…..
いっぱい頑張って…..?
俺は、捨てられた……?
もう、必要ないの……?
また、誰からも見て貰えなくなった…..
俺は…..いらない子…..?
「……もう……全部が嫌……俺は、役たたずのゴミなんだ…..」
岩本の腕の中で、髪を掻きむしりながら深澤は、感情的になりながら、詳しくは無いが、確かに本音を漏らした。
深澤の瞳に、光も涙の粒もない。
それでも、確かに岩本を見ている。
「ふっか……そっか…..そうだったんだ…..」
岩本は優しく、深澤の冷えきった手を掴む。
掴んだ手は、震えていた。
怯えるような瞳で岩本を見つめる。
これから、何を言われるのか不安。
こんな俺を知って失望するかもしれない。
岩本にまで捨てられる。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…..
「……嫌…..だ…..」
深澤が最も恐れていたのは、男に捨てられることではない。
岩本に捨てられることだ。
「はは!!さすが伝説!!!私の攻撃が全く効かない!!!!」
男は、大烏だけを追いかけて宙を泳いでいた。
男の能力は、”洗脳のみ”だ。
空に浮くなどありえない。
だが、それを可能にしているのは…..
「絶対に….絶対に手に入れる….!!!」
男の異常なほどの大烏への執念だった。
人間の限界など、男はとうに超えていた。
一方で、完全に烏に夢中になり、まわりなど見えなくなっている男の背後に潜む影が動き出す。
「hack(ハック)」
静かに、背後から響いた声。
大烏に夢中になっている男は、小さな気配を感じて振り返る。
そこにいたのは、阿部1人。
「…..なんだ….君には1番期待していないさ。戦闘向きの能力でもないんだから…」
男は吐き捨てるように言って、また大烏に向き直る。
だが、
「…..いない…..?」
先程までの大烏の姿はどこにもない。
その代わりに、ちょこん、と小さな烏がいた。
(大烏….これが、か?だが、先程までの大きな力は消えていない…..)
男は一瞬、違和感を持った。
しかし、
(まぁいい。この状態、手に入れるチャンスだ。)
〖カア!〗
烏は飛び立つ。
「今度は、鬼ごっこか…..いいだろう。」
男は、小さな烏を追いかける。
「…….ふは….」
男がいなくなった場所で、阿部は静かに笑う。
「思った通り….隙だらけなんだよ。」
先程まで男がいた場所を、冷たく見下ろす。
そして、阿部の後ろから”小さな烏”が現れる。
「本物はこっちだってのに….」
〖カァ!!〗
烏は、大烏へと姿を変える。
つまり、男が今追いかけているのは….
「hack。俺が最近身につけた技のひとつ。信頼してる相手の能力を最大限まで引き上げる能力。」
阿部は、大烏の背中に乗り、”大烏の力”まで完璧にコピーした佐久間の元へ向かう。
『…..なんだ….君には1番期待していないさ。戦闘向きの能力でもないんだから…』
(その通りだよ。俺は戦闘に向いてない……)
阿部は、静かに目を瞑る。
(だからって、下に見てたら痛い目見るんだからね….?)
そして、怒りの限界など超えている阿部は、悪役よりも悪役な笑顔を浮かべた。
「式神の動き….遅くなってる…!!」
ラウールが、周りに向かって叫ぶ。
式神を担当していた5人は、明らかに式神の動きが鈍くなっていることに気づく。
「てるにぃが、ふっかさんのこと止めてくれてるんや!」
向井が、先程まで男と深澤がいたビルを見る。
「うん。2人の計画通りだね。」
宮舘は、そこに男と大烏がいないことを確認して、小さく呟く。
“2人….阿部と佐久間の計画”
それは、唐突に頭に流れ込んできたものだった。
「ラウー!!!しょーたー!!!りょーたー!!!こーじ!!!れーん!!!式神はあ!!任せたーーーー!!!!!!」
佐久間の声が、唐突に響いたのと同時に、5人の頭には、”作戦”が流れ込んできたのだ。
阿部の能力。
Communicare(コムニカーレ)
複数の仲間に同時に情報を送る能力。
その内容は、即席で、佐久間と一緒に考えたというのもあり、作戦ともいえないようなものだった。
舘さん、翔太、めめ、康二、ラウは式神を傷つけないようにしながら、照に近づけさせないようにすること。
阿部、佐久間は、大烏と一緒に男を引きつける。
照がふっかのとこに行くから、絶対に2人の元に誰も行かないように、行かせないようにすること。
ふっかが落ち着いたら、式神も落ち着くはず。
そしたら、俺らと合流。
7人と大烏で男を拘束する。
照が、ふっかを救い出すまでは、何があっても守りきる。
この内容が、一気に5人の頭に流れ込んできた。
今までの戦闘では、ありえないことだった。
今までの場合、ほとんどが事前の作戦のみで間に合うことが多かった。
つまり、阿部がこの能力を使ったということは、この作戦が本当に大事なものなのだ。
それを瞬時に理解した5人は、異議もなく、式神の気を引かせることに集中したのだ。
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