伸ばしても繋がらない手があることを知ってる。だからもう伸ばすのはやめた。
「ーってなわけで、ザンカとルドの2人で行ってきて欲しいんだわ」
「エンジンは?」
「あー、俺は別の依頼。」
「まぁ教育係のザンカも居るし、依頼自体難しいもんでもねぇ」
「人器の使い方もっと知ってこい!」
そう言ってエンジンは大きな手で頭を撫でた。
「わかった…行ってくる」
フードを軽く整えてゴミ…おれの武器を持ってロビーに向かった。
フォロとグリス、そしてザンカとおれ全員の準備が整って車に乗り込んだ。運転はもちろんグリス。
念の為とマスクを付けて廃墟ビルに入り込む、不気味な風音は荒らし屋の奴らと会った時を思い出す。
あの時はグリスを刺されて、ザンカにも守られた。無意識的に粟だった肌を慰めるようにさすれば少し温度が上がった。
「…ここに班獣が?」
「らしい…」
砂煙の立つ廃墟を逸れないように進んで行けば、個室が出てくる。しかもふた部屋…
「俺はこっちを見るルドはそっちな」
「…わかった」
ドアノブを捻ると乾いた音が廊下にも響いた、耳を劈くような音に混じって一言
「見つけた」
どこからともなくそう聞こえた、まるで地を這うように深く恐怖を引き起こす声。
左右前後を向いても当然何も誰もいない…正しくは掃除屋の仲間以外だけども。
いや…もしかして、上…
そう思って上を向こうとした瞬間に紐が、糸が縄が腕に絡んで捕らえた。タムジーに捕まえられた時みたいに瞬きの間に身動きが取れなくなる。
太い糸細い縄様々な糸が体を雁字搦めにしてきた、抜け出そうと動けば食い込む糸は響く鋭くて簡単に血が滲んでくる。
器用に手袋だけを俺から奪い捨てる、つまり捕まえたのは手袋がなきゃおれは人器を使えないことを知っている人間ってこと。
「ルド!」
異変にいち早く気付いたザンカが隣の部屋から出てきた、けど糸に引っ張られる体は逃げるように離れた。
固定された手を掴もうと手を伸ばしたザンカにも細い糸が囲って手を固定した。あと数センチで手が届くってところで。
コメント
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続きみたいです!
うわ待って最高ちょっと待って、ちょっと待ってすき