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2「In The Blue Forest」
館を出てから不思議と体が軽い。
気持ちが弾んでいる。
小鳥たちと共に東へと向かって歩いた。
「いい天気」
思えばこうやって外に出るのは数年ぶりだ。
深く息を吸う。
吐く。
朝特有の、光を孕んだ鋭い空気が肺を刺した。
周りを舞う青い鳥や、優しく逞しく咲いた青い花が美しい。
青に囲まれている。
おれの好きな色。
館や森の方は心配ない。
おれの分身の青鬼たちが守ってくれるはず。
彼らは強いからきっと大丈夫だ。
鬱蒼と茂る森の中を進むうちに、ふと気配を感じた。
おれの近くではない。
森の入り口。
この森の守護者であるおれは森に入ってくる命を見ることができる。
森の生き物と視覚を共有することもできる。
視覚共有で入ってきた何かを観察する。人間だ。
青鬼の森と呼ばれ、人間が寄り付かなくなってから百数年ぶりに、人間がこの森に入ってきたらしい。
ちょうどいい。
これも何かの縁だから、彼を最初の友達にしようか。
いや、人間の寿命は短いからな…。
どちらにしても人間の入ってきた方角は東、おれが向かっている方向だ。
いずれ出会うだろう。
その時に決めればいい。
歩調を変えることなく青い道を進んでいく。
花が咲いて、鳥が鳴く。
なんて平和なんだろう。
ところが、暫くして聞こえてきたのは、
悲鳴と怒号だった。