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カイトからは、その後も何度か電話があったけれど、
私は一度だけ、留守電に移籍の件で伝えなければならないことを入れてからは、
彼と、連絡を取り合うようなことはなかった。
日にちがたてば、忙しい彼のことだから、いつの間にか私のことなんてきっと忘れてしまうだろうと思っていた。
一週間が過ぎ、二週間が過ぎて、
幾度となく届いていた彼からの連絡は、途絶えがちになっていった。
(私は彼に近づき過ぎてしまったから……。だからもう離れることで、このまま忘れてくれればいい……)──そう思った。
彼とは、また仕事で会うこともあるかもしれないけれど、
その顔が見られるだけでも、彼が元気でいてくれるだけでも、いいと感じた。
カイトが、いつまでもずっと歌っていられるのなら、私はその姿をそっと見守っていられればいいと……。
そうして、彼と距離を取ろうとして、半月ほどが経った、
ある夜──、
ピンポーン……
夜遅くに、自宅のインターホンが鳴った。
一度鳴ったインターホンは、
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーンと、
立て続けに何度も鳴って、私は慌てて、玄関へ走り出た。