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チェーンをかけたままで、ドアを開けると、そこに立っていたのは、案の定カイトだった。
「カイト……」
一瞬、久しぶりにその顔が見られたことに、涙が出そうにもなって、
だけど、もう会ってはいけないんだと、とっさにドアを閉めようとした。
そのドアが、彼の手にガッとつかまれる。
「なんで、連絡もくれないんだよ…ミク」
カイトがドアをつかんだままで、低くうなるようにも言う。
何も返せないでいると、
「開けろよ! 開けないと、大声出すからな!」
マンションの廊下内にも関わらず、カイトが不意に声を荒げた。
「ダメ…! こんなところで、大きな声を出したら……!」
公の場で大声を出したりすれば、カイトがトラブルに見舞われるだろうことは明らかだった。
そんなリスクを冒してまでも、私になんて会いたいんだろうかと思いながら、
チェーンを外して、仕方なく彼を部屋の中へ引き入れた。
玄関のカギを締めて、
「……大声なんか出して、誰かに警察でも呼ばれたら、どうするの……?」
咎めるように言うと、
「いい……。……警察でもなんでも、呼ばれたってかまわない……」
彼は睨むような瞳で、私を見つめた。
「……警察が来ても、それでミクルが俺に会ってくれるのなら、それでかまわない……」
「……だって、あなたは人気アーティストで……」
「……いいっ!」
カイトが、私の言葉を遮るように、再び声を荒げる。
「……俺の人気とか、関係ない!! ……人気なんかどうでもいいって、前にも言っただろっ……!」
叫ぶように口にすると、カイトが私の両肩を強くつかんだ。
「……俺には、もっと……、ミクルの方がっ……!」
カイトの手が肩に食い込んで、ギリッと強く爪が立てられる。
肩をつかんだままで、私の身体をぐいぐいと押すようにして、
感情的になったカイトが、部屋の奥へと上がり込む。
「ミクルっ……!」
カイトが私の名前を叫び、
「……なんでだよ! なんで、俺を無視するんだ…!」
ベッドへ力づくで押し倒した。
上から覆いかぶさるようにして、
「ミク…言えよっ! なんで…なんで急に…急になんにも……言ってくれないんだよっ…!」
声を上げ続けるカイトの目から、ふいに涙がこぼれて、私の頬にポタリと落ちる。
「ミクル……」
そうして今度は、切なげな声で名前が呼ばれると、
彼の腕に、ギュッときつく抱きつかれた。