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🩵「勇ちゃん昨日どこ行ってたん?」朝の教室。
窓際の席で頬杖をついていた勇斗は、塩崎大智に声を掛けられて顔を上げた。
塩崎は、佐野の信頼する友人の1人。
🩷 「んー? コンビニ」
🩵「いや、帰り道と逆方向やん 」
🩷 「よく知ってんね」
🩵「お前、昨日ずぶ濡れで帰ってきたやん。しかも学ラン着てなかったし」
🩷 「……あー」
勇斗は机の上に頬を乗せた。
🩷 「貸した」
🩵「誰に?」
🩷 「吉田」
一瞬、教室が静まり返った。
「……は?」
「西陵の吉田?」
「お前、あいつと会ったの!?」
勇斗は面倒くさそうに耳を塞いだ。
🩷 「うるさ……」
🩵「いやいやいや! 何で!? 喧嘩した!?」
🩷 「してない」
🩵「は!?勇斗が!?」
🩷 「俺、そんなに喧嘩ばっかしてるイメージ?」
🩵「するやろ!!」
勇斗は笑った。
確かに、普段なら顔を合わせた時点で、どちらかが喧嘩を売っていたかもしれない。
けれど、昨日は違った。
壁際で、痛みをこらえながら睨み返してきた仁人。
差し出した学ランを拒みながら、結局は肩に掛けられたままにしていた仁人。
お茶を受け取るとき、ほんの少しだけ指先が触れたこと。
そんなことばかり、妙に鮮明に覚えている。
🩷 「……また会いてぇな」
ぽつりと零れた言葉に、太智が目を見開いた。
🩵「え?」
🩷 「ん?」
🩵「今、何て?」
🩷 「何も?」
勇斗はいつもの笑顔を浮かべた。
けれど、机の下で握った手は、ほんの少しだけ熱を持っていた。
同じ頃。
西陵高校の教室では、仁人が不機嫌そうに机の中を探っていた。
目の前では参考書を捲る曽野舜太がいる。
💛 「……ねぇ」
❤️「何?」
💛 「消毒液って、どこで買えばいいと思う?」
❤️「は?薬局じゃね?」
💛 「……だよな」
昨日もらった袋を、鞄の奥から取り出す。
絆創膏の箱には、何のメッセージもない。
ただ、必要なものが入っているだけ。
それが、何だか腹立たしかった。
💛 「……余計なことばっかしやがって」
小さく呟いて、仁人は箱をしまった。
借りは返す。
学ランも、消毒液も、お茶も。
全部返して、あいつとの関係を終わらせる。
そう決めたはずだった。
なのに。
昨日、勇斗が最後に見せた笑顔が、頭から離れなかった。
💛 「……クソ」
仁人は机に突っ伏した。
このときは、まだ知らなかった。
昨日の出来事が、ただの偶然ではなかったことも。
自分を狙っている連中が、これからもっと厄介な動きを見せることも。
そして。
自分がいちばん嫌いなはずの男に、何度も助けられることになるなんて。
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コメント
1件
あおいです🌷 第5話、拝読しました。 勇斗があの仁人に学ランを貸したって話、教室の空気が一瞬で変わるところがすごく鮮明でした。「また会いてぇな」ってぽろっと零す勇斗と、机に突っ伏す仁人の対比がもう…じわじわきますね。消毒液の袋にメッセージがないことに腹を立てる仁人の心情、すごく繊細で好きです。借りを返して終わらせるつもりが、頭から離れない笑顔。次が気になります!