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____ hyt ____
「…なにバカなこと言ってんだよ、」
俺は、ぐったりと腕の中で力なく震える仁人をさらに強く抱きしめた。
床には、あいつが流した血と、吐き出された錠剤が散らばっている。
鼻を突く鉄の匂いと、薬品の匂い。
これが俺の知らないところで続いていた、仁人の日常だったのか。
『…はぁ、…っ、…はや、と…』
仁人の意識が混濁し始めている。
白目を剥きそうになるあいつの頬を、俺は何度も叩いた。
「寝るな! 仁人、目を開けろ! 俺を見ろ!」
俺は仁人を抱え上げ、事務所の洗面所へ運んだ。
乱暴に蛇口をひねり、冷たい水をあいつの顔にかける。
『冷たっ…! …はぁ、…っ、やめ、ろ …寒い、…勇斗……寒いから……』
ガチガチと歯を鳴らして震える仁人を、俺は持ってきていた服で包み込み、床に座り込んで抱きしめた。
仁人の左腕の傷跡が、俺の腕に触れる。
その凹凸の一つ一つが、こいつが一人で耐えてきた絶望の数なんだと思うと、胸が張り裂けそうだった。
「ごめんな、仁人。…気づけなくて、ごめん」
俺はこいつの耳元で、何度も謝った。
恋人なんて、名ばかりだった。
一番近くにいたはずなのに、仁人がこんなボロボロの腕で、一人で夜を越えていたなんて。
「…これからは、俺が半分もらうから…その痛みも、苦しみも、全部。俺が一緒に背負うから…」
仁人が、俺の首筋に顔を埋めた。
震える細い指が、俺の背中の服を掴む。
『…勇斗…怖い、…明日が来るのが、怖いっ…』
「怖くてもいい。……俺がずっと、こうしてやるから…だから、俺のそばから離れんなっ,,」
俺は、仁人の傷だらけの腕に、何度も口づけを落とした。
汚いなんて思わなかった。
ただ、愛おしくて、壊れそうで、…絶対に離したくなかった。
仁人の体温が、少しずつ、俺の熱を奪いながら安定していく。
俺たちは、血と涙で汚れた床の上で、夜が明けるまで重なり合っていた。
共依存だろうか…それとも執着? 別になんと呼ばれたっていい。
俺がいなきゃ、こいつは死ぬ。
そして、こいつがいなきゃ、俺は生きてる意味がないんだ。
「…仁人」
『…なに、…』
「愛してる。…死んでも、絶対離さねぇからな」
仁人は何も答えなかった。
ただ、俺の手を、骨が軋むほどの力で握り返した。
to be continued…
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毎回本当に天才でもうすきです??? 続き待ってます!!♪