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わをん
85
M_Yuzu
286
自分の撮影をひとまず終え、ラウールは楽屋に戻って来た。とはいえ、同室の向井と目黒はまだ帰って来ていない。
自分の楽屋に戻りかけて、彼は思案した。
(…あべちゃん戻ってたよね)
ふと思いつく。
(あべちゃん達のとこ行こ♪)
踵を返し、廊下の奥の何部屋か隣の楽屋に向かった。
ノックをしかけてラウールは、手を止めた。人の気配がしない。岩本も戻っている筈だが、話し声もしない。
(いないのかな?)
ドアノブに手をかけ、薄くドアを開けてみる。部屋の奥に阿部の姿が見えた。
(なんだ、いるじゃん)
ラウールは表情を明るくして、そのまま中に入ろうとした。
が、彼はハッと動きを止める。
部屋には岩本もいた。
そこそこ広い部屋なのに、2人はやけに近くにいた。
岩本が阿部の顎に手を添える。
顔が近づく。
阿部は自然に目を閉じた。
次の瞬間、二人の唇が重なった。
(は????)
目の前で起きたことが理解できず、ラウールは静かにドアを閉め、フリーズした。
(ん????)
自分は今何を見たんだ、と混乱する。ドアの前で頭を抱えた。
そうこうしている内に、廊下の向こうから向井が戻って来た。
「ラウ、何してるん?」
当然の疑問を向井は口にする。ラウールはそんな彼に慌てて駆け寄り、口を手で塞いだ。
「!?」
「こうじ君、しーっ!」
驚く向井に、自分も声を潜めて言う。そして口を塞いだまま、彼を問題のある楽屋の前に引きずって行った。
「こうじ君、こっそり中見て。確認して」
囁き声で促す。
「えぇ、何?こわ…」
向井は戸惑いながらも、そうっとドアを開ける。薄く開けたドアの隙間から中を覗いた。
「………」
しばしの後、向井はゆっくりドアを閉めた。
数秒、何も言わない。
2人は音を立てないように、ドアから離れる。
「何が見えた?」
ラウールが尋ねた。
「あべちゃんと照にぃが………」
向井は今見た光景を、説明できる言葉を探した。本当にこの言葉で合っているのか、と何度も考える。
「…ちゅー、しとったなぁ…?」
しかし結局、それしか出てこなかった。
「だよね!?してたよね!?」
困惑気味の向井にラウールは詰め寄る。
「しかも結構、本気の奴やったで」
「えっ、そんな感じだった?」
言われてラウールはドアの方を見やり、また覗きに行こうとした。が、向井がそれを引き止める。
「ラウはもう見たらアカン」
「俺、もう成人してるし」
「でもアカン」
嗜める向井の顔は、少し赤かった。
「どうした?」
廊下で2人がコソコソ言い合っていると、背後から声がかかった。目黒だった。
「めめ」
向井は口の前に指を立てて見せる。不思議そうな目黒にラウールが駆け寄り、耳打ちする。
「?」
目黒は何が何だかわからないまま、ドアの隙間から中を確認した。
そして静かにドアを閉め、2、3歩歩いて、膝から崩れ落ちた。
「阿部ちゃんが…穢れた…」
ショックを受けた様子で呟く。
(俺よりスゴイの見たんやな)
向井は目黒の様子から察した。
「一回楽屋戻ろう」
ラウールが促す。3人は静かにその場を後にした。
自分達の楽屋に戻りドアを閉める。
3人とも何も言い出せず、しばらく無言だった。
「…あべちゃんと照にぃは…そういう関係ってことやんな?」
沈黙を破って、向井が切り出した。
「…でもそれなら腑に落ちるわ」
ラウールは、これまでの様々を思い出す。
「距離近いなあ、とは思ってたし」
肩が触れそうな近さで話して、顔を見合わせて微笑み合っていた2人は、言われてみれば恋人同士の空気を纏っていた。
「…いつからよ」
未だに、目撃したものの衝撃に打ちのめされながら、目黒がぽつりと口にする。あの親密さは、昨日今日でどうにかなった、という訳でもなさそうだった。
「昔から?みんな知ってんのかな?」
「もしかして、知らなかったの俺らだけ?」
「ちょっと聞いてみる?」
3人は顔を見合わせる。
「…行こ」
こうしてはいられないと、彼らは楽屋を後にした。
「照と阿部が付き合ってるかって?」
年下組3人は、待機中のゆり組に突撃した。突然の質問に、宮舘と渡辺は顔を見合わせる。
「…付き合ってるのかは知らないけど、」
渡辺と目で会話した宮舘は、前置きをして切り出した。
「エレベーターで、ドアが閉まる直前に手繋いだのは、見たことある」
「え、何それ、エモい」
ラウールが情景を思い浮かべて、溜息混じりに言う。
「阿部が、さり気無く手を寄せて、照の手握って」
「え〜、あべちゃんから行くんやあ」
同じく、その様子を想像した向井は、胸をときめかせて言った。
「あれを見てから、俺らはあの2人は、付き合ってんなって思ったんだよ」
「本人達から何か、報告された訳じゃないけどね」
渡辺の言葉に宮舘が補足する。
「それ結構、前の話?」
目黒は尋ねた。
「いや。見たのは最近。まあ、元々仲は良かったけど」
宮舘は淡々と答える。渡辺が一口飲み物を飲んで、ニヤリと笑った。
「で、お前らは、何を見たんだよ」
そして尋ねる。
彼は、3人が何かを目撃したであろう事は、分かっていた。
「………だいぶ、濃厚なキスしてた」
目黒が遠い目をして答える。思い出すとまた、心にダメージを受けた。渡辺が高い笑い声を上げる。
「あいつら同じ部屋にいたら、そらそうなるわ」
あぁ、もう始まってんだろうな、と彼は笑いながら思った。
「楽屋別にした方がいいかもね」
「無駄だろ」
宮舘の言葉を渡辺がばっさり切り捨てた時、深澤と佐久間が通りかかった。
「ふっか、佐久間」
宮舘が呼び止める。
「どした。みんな集まって」
「あれ、照とあべちゃんは?」
2人だけいないことに気づいた、佐久間が尋ねる。年下組が顔を見合わせた。
「照と阿部に言っといて」
宮舘の柔らかい微笑みとそのセリフに、深澤はなんとなく嫌な予感がした。
「うん?なんて?」
「楽屋でサカるなって」
渡辺が吹き出す。深澤は色々察して、渡辺の笑い声を背に、慌ててその場を立ち去った。
「え、お前ら、何か見たわけ?」
取り残された佐久間が、恐る恐る尋ねる。
「阿部ちゃんと岩本くんがキ…」
「あー!やっぱ、言わなくて良いや!」
目黒が言いかけるのを慌てて遮って、佐久間も深澤を追いかけた。
深澤は早足に楽屋に向かった。
(アイツらホントに…!)
どうせ仕掛けたのは岩本だろう。ひとこと言ってやらねば、と深澤は息巻いた。
が、
楽屋に辿り着いてドアノブに手をかけた瞬間、彼の第六感が働いた。今、入るのはマズイ。そんな気がした。
そんな時、部屋の中から、甘く岩本の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「!!」
深澤は文字通り飛び退いた。じりじりと後ずさる。
「おい、深澤」
追いかけてきた佐久間が声をかけると、深澤は険しい顔をして、戻れ、とジェスチャーで示した。
「お?」
「下がれ、下がれ!」
足を止める佐久間に向かいながら、小声で言う。
「どした、顔赤い」
「察しろ!」
佐久間の腕を掴んで、深澤はひとまず戻るしかなかった。
「後で詰める」
「あべちゃんも?」
「阿部ちゃん、は〜」
言いかけたところで、さっきの声を思い出してしまう。
「…あぁあ、もう、聞きたくなかったわ〜!」
気まずすぎて、早く忘れたかった。
「とりあえず照を詰める」
「りょーかーい」
佐久間は軽く返事をした。
収録後、深澤に呼び出された岩本が楽屋に入ると、そこには宮舘、渡辺、佐久間、そして年下三人まで勢揃いしていた。
「……何このメンツ」
嫌な予感しかしない。
「お前さ」
渡辺がニヤニヤしながら口を開いた。
「あんま楽屋でサカるな」
「……は?」
岩本が固まる。
ラウールが真っ直ぐ手を挙げた。
「俺、第一発見者」
「俺、第二」
向井が続く。
「俺、第三」
目黒まで手を挙げた。
「詰めが甘いなあ」
佐久間が笑いながら言った。
「…………」
深澤にだけバレたと思っていた、岩本の顔から血の気が引く。
「照?」
深澤が肩を叩く。
「言い訳ある?」
岩本は数秒黙ってから、
「……スミマセンデシタ…」
と、綺麗に頭を下げた。
その瞬間、全員が吹き出す。
そこへ、
「ねえ、ひかる?俺、先に帰るけどさあ、」
タイミング悪く阿部が入ってきた。
「あ」
部屋中の視線が一斉に阿部へ向く。
阿部は数秒固まり、
「え……何?みんなして、どうした?」
きょとんとして、全員を見渡した。
「ねえ阿部」
宮舘が穏やかなトーンで切り出した。渡辺が隣で笑いを堪えている。宮舘はにっこりと微笑んだ。
「楽屋でキスはしない方がいい」
「…………んんっ?」
突然の指摘に、阿部は耳まで一気に真っ赤になる。
「え、ちょ、違……」
「違わへんかったで?」
向井がすかさず言う。
「ちゃんと見た。結構長かった」
ラウールも真顔で追撃する。
「濃厚だった」
目黒が致命傷の一撃を放つ。
阿部は一瞬よろめいて、その場にしゃがみ込んで、両手で顔を覆った。
「終わった……消えたい…」
「無理」
渡辺が即答する。
「ひかるの馬鹿…」
小さく阿部が言う。
「……いや、ごめん」
打ちひしがれる阿部を見て、 岩本は隣で気まずそうに謝った。
「これは俺が悪い」
それからそう呟く。
「そこは認めるんだな」
深澤の一言で、和やかな空気に包まれた。
「でもさあ!」
顔を真っ赤にしたまま、阿部が立ち上がり声を上げた。
「覗くのもどうかと思うよ!?」
一瞬静まり返る。
「「それはそう」」
次の瞬間、全員が声を揃えて言い爆笑した。
そんな中、岩本は阿部の肩を抱き寄せる。
「次から気をつけます」
そして、そう宣言した。
「次もする前提かよ」
呆れる深澤のツッコミに、また笑いが起きる。
こうして、本人たちが隠し通すつもりだった秘密は、その日を境に、メンバー全員の”公然の秘密”となった。
コメント
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⛄️らしさ全開で大好き✨✨✨
本当にありがとうございます。 最近ずっと読んでいました。 いわあべのペアが大好きなので、しかもお話の流れとか、言葉遣いとか、大好きです。今回のお話も、めっちゃ好きな展開でした。今後のお話も楽しみにしています。
