ふわりと浮いたマフラーはあの頃を思い出させられるようでただ辛かった
あの頃よりも今が幸せだとそう確実に言える
だけど…ただ…あの頃の冬景色は彼奴さえも連れ去り春を告げたのだろうか…
あの日は…何時だったろうか…自分が9か10の時だったろうか…
孤児院では自分が最年長だった
そんな時新たな最年長の青年が現れた
歳は11か12だった
最初は最年長の座を奪われたとムカついた
それに嫉妬は沢山した
だけど…何故かソイツに惹かれたんだ
冬景色の中そいつは外を見に丘に行っていた
『おい…風邪引くで』
「お、心配してくれるんか?」
『…シスターが言っとっただけや』
少し睨みつけると
「辛辣過ぎんw!!?まぁ、…でもそれが君の優しさなのかもね…」
『……別に』
「なぁ…トントン…君は夢はあるん?」
夢…一つだけある…だけどシスターにはやめろってそう言われていた
『…お前に関係ないやろ』
「ええやんか、」
しつこくなりそうだな…なら…
『………はぁ……軍人』
「軍人かぁ…そう、…とんちならきっと良い国の為に働く軍人さんになりそうやなぁ」
ずっと…ずっとシスターに辞めろって言われてい夢、…なのに、こいつはなんで否定しない
『…なんで否定しないんや』
「それに君はなりたいんやろ?否定なんて出来んひんよ」
その青年は照れながら笑った
『そう…、』
それに釣られて少し笑った
此奴…意外と良い奴なのかも…?
そう思い始めた…、
そう思い始めてから2年、まぁとっくのとうに仲良くなり、今では友と言える存在となった
こいつは、色々なことを知っていた、それを先生と呼ばれる人のように俺にたくさん沢山教えてくれた
毎回毎回、授業というものをしてくれた
だから大先生とあだ名を付けた
『おらぁ、鬱ぅ、…早くするんだよ、』
「ひぃ、…ま、待ってとんちぃぃ!!」
今は、大先生がやらなきゃいけない書類をやり忘れてそれを写してる最中、
早く出さなきゃいけないのに、こいつのせいで遅れた…、
最近は此奴、何故か夜まで何処か行ってて課題をやってない…、
『はぁ、…ええわ、』
そんな会話をしていた時、大先生が口を開く
「ちょっと外行ってくるわ」
『…はよ帰ってこいよ』
「……………ん、」
でも、少し気になってしまって、
俺は、大先生の後を追い掛けたんや
そしたら、大先生は貴族の車に乗ろうとしていた
これが意味するのは引き取り、
『大先生?なんで、』
「…、んふ、…w、見ちゃったかぁ…、」
「ごめん、…、僕、此処を偵察に来たただの貴族なんや」
『…、そう、…なんか、…』
少し悲しげな表情を浮かべて君は言う
「とんち、僕と親友になってくれる?」
『…、知らへんわ、w、』
「とんち、…また会えたら、とんちと親友になりたいな、」
『はぁ、…また会えるに決まっとるやろがい』
『んなら、コレ』
そう言いながら俺はマフラーを大先生に渡した
「え、…これ、とんちの」
『次会う時に返してくれりゃあええねん、』
『返してくれるやろ?大先生』
「しょうがへんわ、またねとんち、」
『またな、大先生』
そう言って、少し悲しげな表情をしながら笑って彼奴は冬景色に消えていった
大人になってから、彼奴が何処に行ったのか分かった
あの車は、貴族の車なんて高価なものでは無い
あれは、…きっと、……
拷問場所へと向かう、車だった
平民は貴族の車だと思うようにされていた
だから、彼奴は分かっていて悲しげな表情をしたのか?…分からへん、
やけど、それだけは許さへん
だから、彼奴を死ぬ気で探した
だけど、…彼奴は何処にもいなかった
何年も時は過ぎていった
軍に入った
軍に入った理由は、友を探したいから、…彼奴は貴族と名乗ったやったら、もしかしたら外交で一緒になるかもしれない
そのひとつの可能性を信じて俺は、軍へと入った
今のこのマフラーはグルッペンが俺が此処に来た時に寒いだろうと言ってくれたもの
毎回、冬になり夜の星を見ていると思い出す
マフラーがひらりとまって、最後に見たあいつの 笑顔を思い出してしまう
今日は戦争の日だった
自分は珍しく、前線に出ていた
敵を倒した、後はボスのみという連絡から直ぐにボスが居るという部屋まで向かった
味方兵がボスを鳥匿ながら、痛めているそうだ
『お前ら、よくやったなあとは、…俺が…』
目と目があった瞬間、声が出なかった
そいつは大事そうに赤色のマフラーを抱えながらこちらを向いて、
「…とんち?」
そう、呟いた
『…、だい、…せん、…ぁ、…、』
取り乱しては行けない、
軍に、私情を出してはいけない、
それは分かっていたけれど、…、
『……、兵のやつらや、…すまんけど、外に行ってくれや、』
そう、俺は言ってしまった、…、
『…だいせんせ?…』
「…とんちぃ、?…とんちや、…、」
ふわっとした、ヘラヘラとしたそんな笑いを見せながら俺に殺さへんの?と言ってくる
『…、確かに…、俺は軍のやつや、それに俺は、書記長や…』
『だから、…お前と言うボスを殺さなあかん、』
『やけどな、…俺には…そんなん…、出来ひん、』
「…、とんち、…でも、君はやらなきゃいけん問題や、なぁ、…とんち最後の先生の授業や」
『最後の授業なんて、…知らへん、…ッ』
「とんち、」
『…………、…』
「コレで僕を殺してくれへん?」
短く長い剣を渡される
それを、…手に持たされてこちらを向いてニコリと笑う
だから、…俺は、…
その剣を向けたその瞬間、大先生は俺から剣を奪い取って
「ごめんね、とんち」
そう言葉を零して、大先生は
「とんち、」
『…なんやねんッ!!』
「僕達…っ、…って親友?」
『そうに決まっとるやろッ!!!』
「そか、…、」
此奴は俺のために?…あぁ、
何をしているんだ
そのまま大先生を担いで走って軍まで向かう
『神ッ、はよ見てくれッッ!!!』
「…分かった、」
『…はぁ、はぁ…っ、…ぁ、』
凄い走ったせいなのか、それとも自分がやってしまったことの重大さに気づいたせいなのか、
分からないが、…凄く息が吸いづらかった
そんな時、前から近づいてきたうちの総統が話しかけてきた
「トン氏、」
『……なんや?』
「お前、今回の任務での暗殺対象のボスを殺さず、持って帰ってきたようだな」
『…そうやけど、…』
「…、お前は彼奴をどうしたい」
『……、仲間に入れたい、』
「…、なぜだ?」
『アイツは、俺の先生や、それに親友でもある』
『彼奴を見つける為に俺は此処に入った』
『それに、仲間に慣れへんのやったら、俺はアイツと一緒にこの軍を去るで』
『それは、絶対に変えへん』
「ふ、っ、フハハハハハハッww!!!良いだろう!!そいつを仲間に入れてやる」
あぁ、…
『ありがとうございます、グルッペン総統却下』
「お前にそう言われるのは好きではないやめろ」
『そうかい、…w、…ありがとうなグルさん』
「そうだ、それでいい」
あの後は、大変だった
色んな人に説明して、お願いして
ワチャワチャしながらももう、彼奴は相棒だとかが出来て、弟分が出来て
幸せそうだった
そんなことを思い出しながら、雪の景色を眺めていた
彼奴を奪い去ったこの雪は、好きにはなれない
だけど、……新しい道を記してくれたものでもあることは十分承知しなければいけない
後ろから声を掛けられる
「とんち」
『んぉ、大先生やん、』
『もう大丈夫なんか?』
「うん、大丈夫や」
『なんでお前、…あの時目に刺したんや?』
「…あー、…なんか、目刺したら死ねるかなって、…」
『…はぁ、…死ねるわけないやろ…、』
そう呆れてる俺を見て大先生はそういえばと
「なぁ、とんちコレ」
そう言って差し出してきたのは真っ赤な俺のマフラー
『これ、…』
「…ふふ、w、返さなアカンものやろ?」
そうにこりと笑った彼奴を見て
『そうやな、…返してくれてありがとう』
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