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とてもムーディな深夜の境内。ふわりふわりと浮かぶように照らす幾つかの橙色な灯りが、並び歩く俺達の身体を、いま以上に引き寄せ合うように仕向けているかのようだ。実際に俺の腕は…庚さんの胸に抱かれている。
「…今夜は月があるので明るいですねぇ。…八門さまの初出陣としては淋しいものがありますけど。でも…かのえはデートのようで嬉しいです♡」
「え?はははは。ああ…月が出ている夜は来ないんでしたっけ?侵入者。(寂しくはないでしょ。…初日くらいは平穏に終わって欲しいし…)」
その右腕を、むにっと抱き込むおっぱいの感触に心ここにあらずな俺なのだが、女体の神秘についての新たな発見と体感に猛省していた。女性の乳房とは柔らかいゴム毬のようなイメージだったのだがとんでもない。跳ねたり揺れたり凹んだり。そこは色っぽく形を変えながらも、実はしっかりと芯があるのだ。圧し着けば圧しつくほどに伝わる反発感。素敵過ぎる。
「そうですねぇ♪。月明かりがあると〜盗みに入っても見つかりやすいですからねぇ。でもぉ、まったく来ない訳ではないのですよぉ?。なので夜回りは欠かせないのですぅ♪。次は正面へ回りましょうかぁ。うふふ♡」
「え?あ、はい。(…ずっと右腕を抱かれてて…ずっとむにゅむにゅ圧し当たってるし。かのえさん…このままだと…また勃っちゃいますってば!。それに夜回りって言いながら、鎮守の森じゃなくて参道を?。なんかおかしくないか?。泥棒なら茂みに隠れて近づくもんじゃないのかなぁ?)」
オレの初勤務は月が昇ったと同時に始まった。幾つかの石灯籠の灯りが照らす砂利道を二人寄り添って歩いている。夜回りのための正装なのか?俺もかのえさんも袴姿だ。基本的に下着を付けないので、股間がぶらぶらしてどうも落ち着かないのだが、それでも涼しく意外と快適だったりする。
そして侵入者に対応する武器として俺が渡されたのは、ただの真っ直ぐな白木の棒で、彼女は何にも持っていない。泥棒程度ならこの棒でも追い払えるか。そう考えていたところで…俺が拾われた裏門の確認が終わった。
「うふん♪。あっはぁ♡八門さまぁ?。そこの石階段に腰を下ろしてぇ少しイチャイチャ致しませんかぁ?。それとゆうのも先程から…先端が過度に擦れてしまって♡。とても恥ずかしく濡れそぼってしまいましたぁ♡」
「いっ!?今は仕事中だからね?かのえさん。(夜回りを開始してから1時間くらいかなぁ?。ずっと誘惑してくるんだよなぁカノエさん。そりゃ俺だってしたいよ?イチャイチャ。でも…それだけで我慢できる自信が全く無い。…女の子の言う『いちゃいちゃ♡の範疇』も分からないし…)」
そして半月が見下ろす境内に戻ってから向かったのは、純白の鳥居が立ち並ぶ表参道だ。参拝者たちは皆、この玉砂利の敷かれた道を歩いてくる。ごりごりっと…雪駄越しに伝わる玉石の硬さが足の裏に絶妙に心地よい。
「…へえ。凄いな。…こうゆう佇まいを荘厳って言うんだろうなぁ。」
「うふふふっ。恐れ入ります。…さ。ここからが本番ですよぉ?」
「え?。(…かのえさんが『本番♡』とか言うと、けっこうエロいな。いかんいかん!部屋に帰るまでが夜回りだ!。気を引き締めろ!レオ!)」
耳に染み入るほどに静まりかえった鎮守の森。囲まれている全長約三百メートル程の二車線くらいな幅の参拝道。俺達は早速…1つ目の鳥居を潜った。白いとゆうこと以外は何の変哲もない鳥居だが、その先にも似た大きさの鳥居がある。全部で四つの大きな鳥居は…直線上に立ち並んでいた。
「あ♪ヤツカドさまぁ?。三番鳥居の向こうにナニか見えませんかぁ?」
「え?。…鳥居の向こうって。………何かいるっ!?。………なぁ?かのえさん。なんか………ウジャウジャいるんだけど。……あれって……なんなの?」
境内から1つ目は4番目の鳥居になる。それを潜った先にある3番目の鳥居の向こうに蠢く物体があった。それも百や二百ではない。押し合い圧し合い、折り重なるようにして、鳥居の向こうで藻掻いている様に見えた。
その物体は色も白かったり赤かったり、青かったり黒かったりして、見ているだけで顔を顰めてしまう。更には人の形だったり、獣だったり、大型昆虫だったりして、とにかくこの世の者とは思えなかった。しかもその殆どに人面が貼り付いていて…窪んだ目玉がギョロリとこちらを見ている。
「うふふふふっ。すごく不気味でしょお?。あれは俗に言う魑魅魍魎の類ですねぇ。人の抱く恨みや辛みや拗みや悪意が産み出した悪鬼や怨霊たちですぅ。これが日本中に蔓延るとぉ、国が滅ぶと言われていますぅ。それこそ国土そのものがぁ、残らず海の藻屑になるそうですよぉ?怖いですよねぇ。なので〜この白獅子大社に誘き寄せてぇ〜退治しているのです♪ 」
「ここで?。…あのぶにゃぶにゃした奴らを?。…でもどうやって?」
「鎮守の森は大きな結界。魑魅魍魎たちが神殿まで行くにはこの参道を通るしかありません。そして1つ目の鳥居から4つ目の鳥居は害虫駆除の罠みたいな物なのです。そして今、4つ目の鳥居を背にするわたし達が居るココこそは聖域への絶対防衛線になります。そして、あの3番鳥居を抜けてここまで辿り着く魑魅魍魎は必ず肉体を持っているのです。つまり…」
ちょうど二つの鳥居の中間まで足を進めた俺達は、3番目の鳥居が破魔の門として堰き止めている化け物たちを眺めながら話している。魔物たちに押されても、ぐにゃりぐにゃりと伸縮して受け流す透明な破魔の門の膜。
なるほど、あの膜を突き破れるほどの力がなければ4番目には辿り着けないとゆうシステムらしい。そして4番目の鳥居の破魔の門の結界の膜は更に強力なのだろう。しかしそれは最終防衛線とも言える。だからここで。
「神殿や御神体を護る4番目の鳥居を潜らせるわけにはいかないから、実体を持つ化け物をここで祓うわけか。でも…どうやって誘き寄せているんだ?。…あんな化け物たちが欲しがるお宝が、ここにはあるってのか?」
「それは秘密で〜す♡。…でもわたしはとっても嬉しいです。今夜から一人で見張らなくても良くなったなんてぇ♪。ありがとうございます八門さま♡。かのえは日ノ本一の幸せ者ですぅ♡。もうちゅーしちゃいます♡」
「わ?わ?わ?。…かのえさん。…あんまりからかわないでよ。(うー!若さならではなムラムラが!。…もしも暴発したらどうするつもりだよ?)」
「む〜っ。なんで避けるんですかぁ。ディープなキスとかしたいのにぃ。」
この美人さんはどこまでが本気なんだろう?。こうしてグイグイ来るかと思えば、いきなり淑やかになるし。神殿や鬼門の確認が終わるまでは一言も話さなかったのに、ここに来て抱き着いてくるし。もしかして情緒の危ない人なのか?。それでも俺からすれば…女神みたいな女性なんだよな。
「うっ!?。ほっ!ほらほら、かのえさん!?。…あそこのデカいやつ!なんか桃色な膜を破りそうなんだけど?。(げっ!?かなりキモいぞ?。頭が二つで…腕が…4本もある。…体にも顔が沢山で…めっちゃグロい…)」
『グウルルル……グゥウアウウア…。……ブフゥウウウ…グルッ!…ルッ!』
結界の膜をぬるりと抜けてきたその灰色な影は、めちりめちりと鳴りながら肉体を作り上げてゆく。薄紅い蒸気を放つ黄土色な肌にドス黒い粘液が垂れていた。そしてボコボコと全身に浮き上がる無数の人の顔。酷く苦悶に満ちていた。肩巾広く筋肉質なのに腹だけはガリガリで…背骨の形が分かるほどに深くボコリと凹んでいる。背丈は3メートル近くあるだろう。
二つの頭と横並ぶ顔はどちらも同じで割りとイケメンだ。そして異常に盛り上がった肩には、当然の様に腕が2本ずつ付いている。それ以外は人間の男と似たり寄ったりなのだが…驚くべき違いがもうひとつだけあった。
「!?。ふふふふ…いきなりの大物ですねぇ。…八門様は四番鳥居の向こうに逃げてください。…コイツは三等級にあたる怨霊です。残念ながら初陣な八門さまでは…手に追える相手ではありませんわ。(…人魂換算なら…二千…と言ったところでしょうか?。瘴気まで纏っているとは厄介な…)」
『グルッ!ウルルルゥ。……メッ!メスゥ!?。人ノ牝カァ…グブフゥウウ。…オイ!…ウッウッ!後ロヲ向イテ!ケッ尻ヲ!出ェ。ブチ込厶!』
「しかも人語を!?。キサマの様な化け物に!女と見られるだけでも反吐が出るっ!。早々に払ってや!?。…あの…ヤツカドさま?。あの…え?」
「ここは下がってくれかのえさん。…こーゆー奴が…俺は一番許せねぇ…(何だよそのデカさは!?怨霊のくせに巨根なのかよっ!?クソがっ!。そんな汚えーもん!嫁入り前の女のコに見せてんじゃねぇ!殺すぞ?)」
怨霊や魔物とゆうものは実にけしからん!。初対面なうら若き乙女に!そんなグロテスクな物体を見せつけるだなんて!。しかも隆々として天を突くソレは、異常に長くて先っぽだけがデカい。そんな異物を〜庚さんのどこに突っ込む気だぁ?。俺でさえまだ!見た事も!触れた事も無いのに!
『オオオ!オッ牡モ゙イタノカ!オッ牡ノ肉ハ!オッ俺ニ゙クレ!兄者!!』
『分カッタワカッタ。…オ前ハ本当ニ硬イ肉ガ好キダナ?。牝ノホウハ俺ガ、ハメ殺シテカラ喰ウカラナ?後カラ欲シイトカ言イダスナヨォ?』
『メッ!牝ノ肉ハ!ブニブニダ!カラッ!。オッ!オデハ!牡デイイ!』
『フッフフ。オ前ハ良イ弟ダナァ。ヨシヨシ!サッサト捕マエテ!ブチ込ンデヤロウゼ!。先ズハアソコノ牝カラダァー!。ウヒャッハーッ♪』
『ウン!分ガッタヨ!兄者!。ヤ!ヤヤヤッ!!ヤルゾーーッ!!!』
耳鳴りを起こしそうなキンキン声で、何やらゴチャゴチャと相談していた双頭の巨人は突然、嬉々とした顔で襲いかかって来た。双子なのかなどどうでもいい話しだが、全く同じ顔が二つ並んで、全く同じ笑顔で迫って来る気持ち悪さには背筋が凍る。しかし俺は今!過去イチに憤怒していた!
「……こぉら二つ頭ぁ〜。てめぇ人間でもねぇくせに〜俺のかのえさんになんて口をききやがるぅ〜。しかも汚え突起物を2本も見せつけやがってぇ。…あのなぁ?セックスってのは愛情なんだよぉ?お互いの愛しみなんだよぉ?。だからぁ…本数が多けりゃいいってもんじゃねぇんだよぉ!」
かのえさんを後ろに押しやっていた俺は、その巨人と言っていい怨霊の前に立ち塞がる。なんとも不思議な感覚で恐怖など微塵も感じない。どころか鳥肌が立つ程の高揚感さえあった。初めての実戦だ。思い切りいこう!
俺は怒りに任せて手に握っていた白木の棒を一閃する。確かな手応えと同時に、その怨霊の右腕が肩から刎ね跳んだ。そしてもう二本の影が、ぼとりぼとりと落ちてくる。それは刹那にどろりと溶けて…黒い霧になった。
『グッギギャ!?。………ア?。……アアアアアーー!?。ナ!ナイッ!。オッ!?オデノ!チチチ!チンボガァアアア!?。ヒッ!酷イイイッ!』
『兄者!痛エヨオー!。ヂ!ヂンボト!ウッ!?腕ガ無クナッダァ!?』
「何が酷いだよぉ。俺のかのえさんに〜あ〜んな下品な言葉を吐いたんだからなぁ…チン◯が無くなるくらい当然だろぉがぁ!?。ああーっ!?」
俺は更に追撃する。恐怖など欠片も感じない憤怒の中、白木の棒を袈裟斬りに振り下ろして返す刀で斬り上げた。奴の巨体がその刀傷に沿ってぶくぶくと泡立ち始める。怨霊ならではの再生能力かと…俺は目を見張った。
『兄者!兄ジャーァ!?。オッ!オデノ!身体ガ!ボコボコッテ!?』
『ヒッ!?ウッ!?。カ!?身体ガ!ト!溶ケテ!。イッ。ヤァアア!』
「そりゃ致命傷だったってコトだろうな。『人を呪わば穴二つ』って言うけど、あんなの2本も下げてっから罰が当たったんだよ。…お疲れさん…」
ジュワジュワと鳴りながら沸騰して消えてゆく二つ頭。もう二度と会うこともないだろう。気づけば3番目の鳥居で足止めを食らっていた魑魅魍魎たちも、幾分、数を減らしている。その全てが結界を変形させることもできないで只ただ藻掻いていた。このまま黙っていても鳥居の浄化作用で消えて無くなるのだろうし、朝日が昇れば塵に還される。…不憫な奴等だ…
「お・れ・の・かのえさん♡ですよぉ。スゴイ凄いスゴいですぅ♡決して弱くはない三等級を瞬殺しちゃうだなんてぇ♡。ああ〜ん♡帰ったら寝かしたげませんからねぇ♡。セックスは愛情でぇ♡互いの愛しみ♡なんですよねぇ?。だったら1日中でもひとつになれますよねぇ♡八門さまぁ♡」
突如として俺の背後から抱き着いてきた庚さん。鳩尾に回された両腕と背中に圧し当たった高反発が一気に身体をプレスする!。息が…止まった。
「うぐぐぐぐぐっ!?かのえさんっ!死ぬから!?そんなに締め付けると死んじゃうから俺っ!?。…はぁ〜はぁ〜はぁ〜。もう。かのえさんは〜力加減が課題なんだよなぁ。ん?大丈夫?。顔が真っ赤になってない?」
「かのえは決めました!一生ヤツカド様に着いていくと!。だから貰って下さい!。身体が柔らかいのでどんな体位にも対応できますっ!ほら!」
「うわっ!?。…あの〜かのえさん?。…それって…何してるのかなっ?」
4番目の鳥居を背後に、かのえさんが右脚だけを高々と真上に上げる。ピンッと伸ばされたつま先と、その真っ白な生脚に、妖艶に絡み付けられた白く長い腕。妖しい微笑を浮かべる彼女が俺を誘うように真っ直ぐに見ている。紅い瞳と桃色な唇が艶を放つように浮かび上がっていた。エロい…
「I字バランスですっ!。なのでどこからでも挿入して頂けます!。これはかのえの!真剣な求愛と捉えて頂いて結構ですから!。…あれ?お気に入りませんでしたか?。では鏃の様なブリッジなどご披露を。きゃん?」
「そんな事しなくても…俺はかのえさんが好きだよ。でもなぁ…黒羽さんも良いんだよなぁ。…う〜ん。(…こう言っておけばエロい事はしなくなるだろう。…薄暗くて良かったぁ。…上がった袴の裾の隙間からアソコが見えそうだったし。あーあ。今夜はひとりで悶々としそうだなぁ。はぁ…)」
また理由のわからない姿勢を取ろうとするかのえさんの頭頂部に、俺は軽く唐竹割りを決める。これ以上、女体の神秘を見せつけられたのでは眠れなくなってしまう。只でさえ…俺の下半身は暴走気味なのに。そう言えばセルフなんていつヤッただろう?。…覚えがないから数年は前だろうな。
「えー?嬢さまのこともお好きなんですかぁ?。それは仕方ないので良しとしておきます。知らせたらきっとぉ呼び出されちゃうかもですねぇ?」
「いっ!?。今は黙っててくれ。頼むから。(う…ヤブヘビだった…)」
「はぁい♪。でもぉ〜タダじゃ駄目ですよぉ?。はい、八門さまはこの椅子に座りましょうねぇ。…はい。そのお膝の上にはかのえが座らせていただきまぁす♡。んはぁん♡。おパンツ穿いてないからダイレクトォ〜♡」
「え!?わ!?。まさか当たってる!?。(やば!半起ちなのバレた?)」
「う〜そで〜すよ〜♪。うふふふっ♡。八門さまって可愛いっ♡」
「あは。…あはははは。(う〜。この場で押し倒してやろうかあっ!?)」
こんなそんなで、俺の深夜の初出勤は無事に終えるのだった。丑三つ時を過ぎるまではここで監視しなければならないが、社畜時代と比べればなんてことも無い。持ってきたパイプ椅子に腰を下ろして、その膝に乗っているかのえのお尻の素敵な感触と、伝わる温かさをありがたく感じている。
職場がガラリと変わっても、即座に順応できるのも社畜の資質のひとつだろう。それにこの現場には心強い味方だっている。孤独ではないのだ。
こうして今も俺の膝に乗って、甘えるように胸に頬ずりしているかのえとゆう美女が、初体験なほどに可愛くて堪らない。年上に見えるのに少女みたいだったり、とても強いのに儚くも見えたり。そしてエロさも素敵だ。
俺にとっては人生で初めての転職。その業種はどうあれ、俺なりにヤッていけそうな気がした。なによりこの破魔の鳥居を、神社を、たった一人で守ってきたとゆう彼女を尊敬している。俺で良ければしっかり支えてあげたい。これが男の庇護欲とゆう物か…どうしても護ってあげたくなった。