テラーノベル
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一同が部屋へ戻ると、朝陽はどこか落ち着かない様子で信愛を見つめた。
「白縫先輩、どうかしましたか?
なんか慌ててる雰囲気でしたけど?」
信愛は少し照れくさそうに笑い、頭をかいた。
「あ、いや、なんというか急にその空気
吸いたくなっちゃって、あは・・あはは・・・」
朝陽は意味が分からず首を傾げる。
「え?く、空気?」
そのあまりにも予想外の返答に、朝陽の目は点になった。
「そうなんだよね・・・あはは」
信愛は何気ない仕草で皆を見渡し、アイコンタクトだけで静かに合図を送る。
先ほど部屋を見つめていた女性が霊なのか否か。
目的なんなのか。
それらが一切わからない中、不用意な発言で朝陽の不安を煽る訳にはいかないからだ。
そんな意図を察したさくらは、心の中で頷いた。
(なるほど・・さっきの
おばさんの事は黙っとくって事ね)
茜もすぐに理解し、小さく頷く。
「そうなんだよね、信愛って急に
突拍子も無い事する人なんだよ」
「そうそう!昔っから天然なんだよね!」
一人だけ話についていけない焔垂が、怪訝そうな顔をする。
「は?何言ってんだよお前ら、さっきのおば──」
言いかけたその瞬間。
──ぐにっ。
茜の指が焔垂の脇腹を容赦なくつねった。
「うぎっ!」
茜は笑顔のまま、鋭い視線だけを焔垂へ向ける。
(バカ!空気読め!空気を!)
その無言の圧力に、焔垂はようやく状況を理解した。
「あ、そういえばそうだったな・・あはは」
朝陽もつられて苦笑する。
「あはは・・そ、そうなんですか」
焔垂は頭をぽりぽりとかきながら誤魔化す。
「ま、まあ、人それぞれですからね」
◇ ◇ ◇
朝陽の部屋では、テーブルの上に並べられたケーキを囲み、一同が和やかに談笑していた。
笑い声が絶えない時間はあっという間に過ぎ、食べ終えた皿だけがテーブルに残る。
朝陽は空になった皿を手に取り、立ち上がった。
「なら空いた皿、持っていきますね」
信愛も反射的に腰を浮かせる。
「あ、手伝うよ?」
しかし朝陽は穏やかに首を横へ振った。
「あ、いいんですよ、 先輩たちは
お客さんですから、ゆっくりしててください」
「そ、そう?ありがとう」
信愛が微笑むと、朝陽は軽く会釈をして食器を抱え、部屋を後にした。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
扉が閉まる音が響くと同時に、信愛は深く息を吐く。
「はぁ・・なんとか誤魔化せたね」
ほっとした様子で胸を撫で下ろす信愛だったが、依然としてあの女性の姿が引っ掛かったままだった。
「でも誰だったんだろ?さっきのおばさん」
茜も腕を組み、小さく唸る。
「うー・・・ん」
静かな空気が流れる。
茜は何気なく部屋を見渡し、本棚へ視線を向けた。
「てかさ?朝陽くんが持ってる本って
難しそうなヤツばっかだね」
そう言って一冊の本を手に取る。
「これなんかも難しそう」
表紙には『終戦の歴史』と大きく書かれていた。
茜は興味本位でページをパラパラとめくっていく。
表紙から察するに、どうやら中身は玉音放送や、ポツダム宣言を深掘りして解説している内容らしかったが、茜には一切内容が理解できないようだった。
「うわぁ〜・・・難しそ〜・・・ 」
その様子に焔垂が慌てて声を上げた。
「お、おい!人の本勝手に読むなよ!」
「あ、やばっ!」
茜は慌てて本を閉じ、本棚へ戻そうとした。
そのとき。
本の間から、一枚の紙がひらりと床へ落ちる。
「ん?何それ?」
さくらが身を乗り出す。
紙を拾い上げたさくらは、不思議そうに首を傾げた。
「ん?何が?」
「これだよこれ」
よく見ると、それは一枚の写真だった。
さくらは写真を手に取り、信愛へ差し出す。
「写真みたいだね」
「写真?」
信愛は写真を受け取り、視線を落とす。
そこには、30代前半ほどの女性と、4、5歳くらいの男の子が、公園らしき場所で笑顔を浮かべながら仲良くピースサインをしている姿が写っていた。
どこにでもありそうな、幸せそうな親子の記念写真だった。
「なんだろ・・・この写真」
信愛は首を傾げながら写真を見つめる。
「浦添くんの本の中にこの写真があったの?」
「うん・・茜が呼んでた本に挟んであったみたい」
さくらは静かに頷いた。
コメント
1件
うわ、今回めっちゃ息詰まる感じだった!信愛たちが朝陽に霊の話を隠そうとする連携プレイ、特に茜が焔垂をつねるところで笑ったわw でも最後の写真、あの女性と朝陽が映ってるっぽいよね…これが今後の鍵になるんかな。続きが気になる🔥