「おお、来たぞ来た来たっ! 指先から石になり始めたぞっ! お前らはどうだっ?」
どこか嬉しそうに叫んだバストロの言葉にレイブが答える。
「うん僕も来たよ師匠っ! 今日は背中が石になり始めたみたいだよっ! あはは、背中は鍛えてなかったからぁっ! みんなはどう?」
『グガッ! ハネカラキタァ! グッグッ♪』
『アタシはお尻からだよぉ! 尻尾がもうカチカチィ♪』
バストロが両手の指、確り手首まで石化してしまった無機質な色を見つめたままで笑顔で言う。
「良ーし、じゃあ皆、魔力を高速で流せぇ! ほらほら頑張らないと石になって死んじゃうぞぉ? ギレスラは狂うだろうし、ペトラだって大爆発しちゃうぞ! 神様の期待を裏切るなよ? 頑張れ頑張れぇっ! 流すんだぁ!」
「ううぅーん!」
『グウゥッ!』
『ブヒブヒィッ!』
「ほおおあぁぁっ! ふぅ、良し俺は何とかなったぞぉ! レイブ、お前は大丈夫かぁ?」
いち早くピンチを脱したらしいバストロの声に答えるレイブは未だ必死の戦いの只中のようだ。
「うん、ううぅーん、もっと早くぅ、早く早くっ! グルグルグルグルッ~ゥッ! はぁはぁ、な、何とかなったよおぅっ! ギレスラ、ペトラッ! 大丈夫ぅっ!」
『ギャギャ…… ヨ、ヨユウ…… ハァハァ……』
『は? アタシィ? 全然余裕だったわよ? ふ、ふうぅ~、やれやれぇ……』
何と言う事であろうか。
バストロの指導の下、レイブ、ギレスラ、ペトラの弟子世代スリーマンセルである三者が揃って石化し始めた肉体を或いは黒々と変じた鱗を膨張し始めた全身を、元々のプニプニな潤い溢れるフレッシュラブ(新鮮なお肌)へと再生、いいや若返り宜しく瑞々しく変じさせてそれぞれ答えたではないか!
石化=死、邪竜化=災厄、膨張=迷惑、それぞれ終りであった筈だ……
そんな常識、確実な死、それをこの師弟はたった一度の冬篭りの間の鍛錬、暇潰し的な感じで軽くクリアしてしまったらしい…… マジか、凄いな……
彼等曰く、レイブの中に居てチョイチョイ的確なアドバイスをくれる神様は、うん、まあそれなり以上に優秀だったようで、人類数千年の夢を解決した上で更に軽すぎる感じで言った、無論、レイブ少年の口を借りてである。
「えっとねぇ、これ以上貴様等に教える事は無い、だってさぁっ! あのね、後は各々自分の特性を伸ばして行けば良いぞっ! だってさっ!」
「ははあぁっ!」
ひれ伏して地面に頭を擦り付けているバストロから視線を移したレイブに、数ヶ月ぶりの視線が映る。
金色の美しい虹彩である。
「ジグエラっ! 起きたのぉ?」
金色の虹彩は少し薄く閉じられ掛けて、再びの眠りに誘われながら薄っすらとした声で答える。
『ええ、明日か、明後日か…… もう数日で起きますわよ…… レイブ、冬の間のお話し、楽しみにしていますわよ…… ふわぁあぁ~、お休みなさいぃ……』
「うん、おやすみなさい」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!