コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【第六話 小説家】
ひいらぎ公園、午後3時。肌寒い秋の季節。凍えそうになりながらも、暖かいコンビニで買ったコーヒーを2本持ち、朝美を待つ。
「お、お待たせしました…。」
朝美がゆっくりと、お洒落な格好で歩いてくる。俊介もお洒落をした。
「俊介さん、素敵ですよ。その格好」
「ありがとうございます..,。朝美さんも、似合ってますよ…。」
2人は頬を赤らめる。何か話題はないか、と頭を動かす。見つけた。前より頭の回転速度が速くなっている。
「見ました。【桜が散るその時に】。お、面白かった、です!!」
俊介は恋愛小説を見ない。そしてあまり魅力的には思えなかった。ちょっと嘘をついた。
「あっ、面白かったですか!よ、よかったです。あのシーン、良かったですよね…あの…はい。」
朝美も、案の定嘘をついた。何故なら、シンプルにその本を読んでいないから。適当に手に取ってオススメしたから。
「あ、あはは。あそこですよね。あはは。キュンキュンしましたね。はは。」
…話題は悪くなかったが、状況が悪すぎたようだ。すぐ次の話題に変える。
「ぼ、僕、小説家なんです。」
(まだなっていないが。)
「え、そうなんですか!凄いですね!カフェで作業していたのは、小説を書くためですか?」
「そ、そうなんですよ!!」
想像以上に盛り上がった。そして、カフェで言った一言、「小説、興味あります?」を思い出した俊介。話題を出した事に後悔する。
「あ、あのレジで言ったこと、そういう意味だったんですね!!納得です!!」
「あっ」
俊介は恥ずかしさで爆発しそうだ。覚えられている。はやく忘れてくれ。
「あ、あー。す、すみませんね…いきなりあんな事を言ってしまって。朝美さんと話したくて…。話題がなくてあんな事を。」
「びっくりしましたよ。でも、嬉しかったです。」
俊介は言葉を詰まらせた。表に出せない、この恋の感情を、爆発させようとしているからだ。しばらく話して、朝美のケータイから、ピロリン♪と通知音が鳴った。
「あっ、サークルメンバーから…あ、今日活動だ。すみません。私、帰りますね。楽しい時間を、ありがとうございました!」
「ま、待ってください!!ちょっと、お話が。」
「な、何ですか?」
「連絡先、交換しませんか!!」