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先生は何事もなかったかのように普通に接してくれるのに、私は先生のことになるとすぐに心が乱れてしまう。
すると先生が口を開いた。
「おっ、ネネ…今帰りか?」
「あ、はい……」
先生が私に声をかけてくれるだけでも、私はとても嬉しく感じてしまう。
先生と一緒にいるだけで心が満たされていくようだった。
「ネネの家ってここからそう遠くなかったよな?もう暗くて危ないし車で送ってっててやろう」
「え、でも悪いですよ……」
「いいから遠慮すんなって」
そう言って先生は半ば強引に私を車に乗せてくれた。
しかもその席は先生の隣、つまり助手席で、それが彼女みたいでとても嬉しくて高揚した気持ちでシートベルトを閉めると
「それじゃ行こうか」
そう言って車は発進した。
私は先生が運転する横顔をじっと見つめてしまう。
すると先生は私が気まづくならないようになのか、軽く話題を振ってくれて、家に送られるまで丁度いい暇つぶしとなった。
「いつも思うけど先生って結構細いですよね、ちゃんと食べてますか?」
「まあ一応食べてるけど……仕事大変でなぁ」
私は先生の体調を心配した。
もちろん変な意味ではなく純粋に心配していると、そんなか?と目を泳がして頭を搔くその仕草がなんだか可愛くて、ついクスッと笑ってしまう。
「な、なんだよ……」
少し恥ずかしそうにする先生も愛おしく思えた。
(やっぱり私、先生が好きなんだな……)
そんな思いを抱きながら車に揺られているとあっという間に私の家に着いた。
「ありがとう先生、わざわざ送ってくれて」
「いや、全然いいよ」
そう言って先生は車から降りて私の頭をポンっと優しく撫でる。その行為だけで胸が高鳴った。そしておやすみなさいとと胸元で小さく手を振ると、先生は微笑んで振り返してくれた。
そうして車がまた発信していくのを見届けると、私は先程の先生との余韻に浸りながら家の中に入った。
それからも毎日先生とは一緒に帰るようになり、前よりも距離が近くなったように感じるのは私の自意識過剰だろうか。
でもそれでもよかった。
先生の彼女になれたような気がして幸せだった。
だけどそんな幸せな日々は長く続かなかった。
「ネネちゃん、最近先生にべったりすぎじゃない?そんなに懐いちゃってまあ」
ある日の放課後、私が帰る支度をしていると友人にそう指摘された。
「べ、別にそんなんじゃないけど……」
「先生だって男なんだから変な気起こすかもよ?」
そう言われてドキッとする。
確かに普通なら教師と生徒なんて有り得ないし……
もし先生が私に対してそういう気持ちを抱いてくれているなら嬉しいけど、でもそれは私の自意識過剰で先生はただ生徒に優しく接してくれているだけだ。
それに私は先生の「生徒」だ。
それ以上でもそれ以下でもない存在なんだ。私はそう自分に言い聞かせた。
「あはは、それはないよ」
私は苦笑いしながら教室を出て家路についた。
(はぁ、何か気分落ちたなぁ)
私は落ち込んでいた、原因はわかっている。
この前友人に言われてからというもののずっと考えていたことのせいだ。
先生にとって自分はどういう存在なのか。
ただの「生徒」としか思われていないのかと悶々としていたのだった。
「私ってそんなに魅力ないかな……」
思わず独り言を呟いてしまうほどに私は自信を無くしていた。
確かに自分で言うのもなんだが容姿は悪くない方だとは思うし、スタイルもいい方だと思う。
それに最近になって少しだけど胸も大きくなった。
それでもやはり歳の差というのは大きいもので
高校生と教師の恋愛なんてあるわけない、いや、あってはならない。
それなのに、先生との交流が増えれば増えるほどに私の恋心は徐々に大きくなっている気がする。
それを認めたくはないんだけど。
翌日、全ての授業が終わると、私はいつものようにすぐに帰る支度を済ませて教室を出て行こうとするが
今日も斉藤先生に声をかけられないかなと期待してしまっている自分がいた。
しかし、先程まで教壇で生徒と話していた齋藤先生は、私よりも一足先に教室を出ていったので
私は肩を落として、机の横の銀フックにかけていたスクールバックを肩にかけて教室を出た。
私の1年C組の教室は2階の壁際にあるので、反対の、階段がある方に体を向けて歩き出するとそこで隣のB組の教室に入っていく齋藤先生の姿を目撃してしまい思わず足を止めた。
しかし1人では無い、先生の前には女生徒がいて、すぐに私のクラスメイトであり友人の大野小春だと気付く。
(え、なんで齋藤先生と小春ちゃんが……?)
先生はいつものように楽しそうに顔を綻ばせていて、小春ちゃんが教室に入ると先生もまた教室に入って扉を閉めた。
私はその2人の様子が気になって教室の扉についている四角いガラス窓から教室の中の様子を覗くと、先生と小春ちゃんが向かい合って何か話しているのが見えた。
(何話してるんだろう……)
しかしここからでは会話の内容は聞こえない、私は少し不安になりつつも、2人の様子を伺う。