テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
猫塚ルイ

コメント
1件
あっ……これ、すごく良かった……! 冒頭の優しいキスから一転、ナオミの激しい口づけに飲み込まれる穂乃果の心情描写がめちゃくちゃ刺さった。心臓が跳ねる感覚、溺れそうでやめてほしくないっていう甘くて苦しい感覚、細かい仕草でちゃんと描かれてて臨場感やばかったわ。 んで、途中で止めるナオミの“違う”って焦った反応にドキッとした。理由が「ゴム切れ」っていう生々しさもあって、逆に真剣さが伝わる。じれキュンっていうタグ通りの展開、続きが気になりすぎる🔥
カフェから帰ってきたリビング。カーテンを閉め切り、間接照明だけが灯る部屋で、二人の影がソファの上に一つに重なる。
その唇に、ナオミの男らしくて温かいそれが、優しく触れる。
それは最初、小鳥が啄むような、慈しむような口付けだった。
穂乃果の小さな唇の形を確かめるように、何度も、角度を変えて優しく食む。
穂乃果の唇から漏れる微かな吐息も、震える瞼も、ナオミは愛おしそうに見つめている。
(――このまま永遠に続いて欲しい)
穂乃果がそんなことをぼんやりと思った瞬間、ナオミの大きな手が後頭部に回り込み、ぐっと深く引き寄せた。
「んぅ……っ」
予期せぬ強さに、思わずくぐもった声が漏れる。
唇を割って入り込んできたナオミの舌が、穂乃果の熱い口腔を余すところなく探るように蠢いた。絡め取られた舌が、甘い痺れを伴って翻弄される。歯列をなぞられ、上顎をくすぐられ、ナオミの巧みな動きに、穂乃果は息をするタイミングすら見失ってしまった。
(こんな息も出来ないような激しいキス、初めて……っ)
溺れそうだ。苦しい、でもやめて欲しくない。
心臓が喉元まで跳ね上がり、頭の芯が甘く蕩ける。頭がぼうっと霞がかっていく。
まるで獲物を捕らえた蛇のように、ナオミの口づけは執拗で、情熱的だった。
ナオミは穂乃果の小さな頭を大きな掌で支えたまま、角度を変え、舌を絡ませ、時には強く吸い上げながら、穂乃果の全身の感覚を、その熟練したテクニックで暴き立てていく。
時折、喉の奥で小さく立てるナオミの低い呻き声が、直接耳を犯すように響いて、穂乃果の下腹部を甘く疼かせた。
長い長い、貪るようなキスの嵐が終わりを迎えた時、二人の間に銀の糸が細く伝う。
「は……っ、あ……っ」
「はぁ……っ、穂乃果……っ」
肩で大きく息をしながら見つめ合う二人の視線の先で、ナオミの喉仏が、ごくりと露骨に上下するのが見えた。潤んだ穂乃果の瞳には、劣情に歪み、けれど何かを耐え忍んでいるような、複雑な色を滲ませるナオミの男らしい表情が映り込んでいた。
(あぁ……この人に、すべてを奪われてもいい――)
そんな表情を見せられたら、胸がきゅんと甘く疼いて、どうしようもなくなってしまう。
穂乃果の切なげな視線を受け止めたナオミは、低く、熱い吐息を漏らしながら、耐えかねたように視線を逸らした。その逞しい腕が、小さく震える。
「……駄目よ。今日は、これ以上は……っ」
かすれた声でそう言い捨てると、ナオミは乱暴にシャツを羽織り直し、ソファから立ち上がろうとした。
「え……?」
取り残されたソファの上で、穂乃果は一瞬、頭が真っ白になった。
急激に離れていく体温と、背を向けようとするナオミの大きな背中。
どうして、急に拒まれてしまったのか。
「どう、して……」
急激に押し寄せてきた不安に胸を締め付けられながら、穂乃果は慌ててソファの上に体を起こした。はだけた衣服をぎゅっと胸元で掻き集め、潤んだ瞳でその背中を不安そうに見つめる
「やっぱり……私じゃ、つまらなかったですか……?」
消え入りそうな声で、ぽつりと尋ねる。
自分には、ナオミを満足させるような大人の魅力なんてないから。だから、途中で嫌になってしまったのではないか。そんな最悪な想像が頭をよぎり、視界がじわりと滲みそうになった。
その瞬間、ナオミの背中がびくりと大きく跳ねた。
ゆっくりと振り返ったその顔は、まるでもの凄く痛いところを突かれたかのように歪んでいる。
「……違う、違うわよ、穂乃果。アンタのせいじゃないの……っ」
ナオミのその言葉に、穂乃果の胸の奥から、せきを切ったような熱い感情が溢れ出した。
自分を拒んだのではない、彼の中に宿る何かが、こんなにも苦しそうに彼自身を堰き止めている。その理由を暴き、彼を繋ぎ止めたい一心で、穂乃果は自ら手を伸ばした。
「じゃぁ……なんで……っ、なんで止めるんですか……?」
必死に声を絞り出す穂乃果の手が、小さく震える。
ナオミは頭を抱えるようにして低く呻くと、前髪を乱暴にかき上げ、ソファの縁に固く拳を押し当てた。その瞳は、いっそ凶暴なほどの劣情を孕んだまま、けれど必死に理性の手綱を引いているのが一目で分かった。
「……この間、ゴム……使い切っちゃってたのよ」
喉の奥から絞り出すような、酷く掠れた地声だった。ナオミはきつく唇を噛み締め、情けないと言わんばかりに顔を歪める。
「アタシがちゃんと準備してなかったのが悪いの。アンタを傷つけるわけにはいかないでしょ……っ」
「っ……!」
ナオミの言葉が示す意味を理解した瞬間、穂乃果の頬が一瞬で沸騰したように熱くなる。