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「そんな訳で、さあどうぞ。お茶も自家製だ」
そう言われても、葛餅のような感じの餅がちょっと茶色い以外、見た目は普通のものと変わらない。
お茶も、麦茶っぽい感じだし。
「いただきます」
ということで、先輩を含め6人で食べてみる。
うん、餅はちょっと固めの葛餅だ。
普通に美味しいとしか言い様が無い。
あんこと一緒に食べると、まさに普通に美味しい。
きなこの方は……あ、ちょっとだけ普通のきなこと違う香りがするかも。
でも。
「何かドングリという感じはしないですね。普通に売っている、美味しい冷たい和菓子という感じで」
「ちょっと餅の方は、あく抜きをやり過ぎた。もう少し渋みを残した方が、らしいかもしれない」
「でも上品で美味しいです。あと、このきなこの方が、遠くで山の香りを感じます」
先輩はウンウン頷く。
「きなこはスダジイを潰しただけだから、素直にドングリ味なんだ。砂糖は加えているけれどさ。ちなみに餅はマテバシイ。昨年はマテバシイが豊作だったからさ、マテバシイからデンプンを取り出したりもしたんだ。流石にこれで在庫切れだけれど。
あとあんこ。本当は野生の小豆を使いたかったんだ。粒が小さくて集めるのが大変なんだけれど、普通の小豆より絶対美味しい。ただ小さいから集めるのが本当に大変で、昨年も結局1回、ぜんざいを作っただけで使い切ってしまった」
小豆も野生があるのか。
あと、このお茶もだよな。
そう思ったら、美洋さんが代わりに質問してくれた。
「この麦茶も、何か採取した野草なんですか。何か市販の十●茶を濃くしたような感じですけれど」
「それはジュズダマ茶。これも昨年からの貯蔵品。猫じゃらしとドクダミの葉も、ちょっと入っている。これが最後かな」
そんな怪しげな内容なのに、味はある意味普通の感じなのが面白い。
確かに、市販の十●茶を濃くした感じだけれど。
「これってでも、相当に手間かかっていませんか。餅もそうですけれど、きなこやお茶とかも」
「そうでもないさ。お茶は昨年度に作って冷凍したものだし、餅も昨年中に作ったマテバシイデンプンの残りを使っただけだ。きなこは確かに、ドングリの殻をむく時間がかかったかな。まあ一度フライパンで煎れば簡単だけれど。それをすり鉢ですりすりしただけで」
いや、それだけでも充分手間がかかっていると思う。
そんな訳で。
「美味しかったです」
全員が完食した。
先輩はタッパーとゴミ類をまとめて片付けて。
「次は12時半に来る。今度は野外採取ものではなくて、普通の料理なんだけれどさ。まあ期待して待っていてくれ」
そう言って、扉の外へと姿を消す。
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