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続き、待ってまーす(゚v゚*)
ループするドラゴンと魔法剣士
今朝は雪だった。
アガベ山脈の麓の村には、雪が積もっていた。村人たちは総出で村の周りの主要道路の雪かきをしていた。雪が降り道が塞がれると、王国からの食料などの物資も届かなくなる。村の薬剤師、エステルの息子シンビは雪かきを手伝うのを嫌がり、村の外れの妖精の泉に遊びに来ていた。妖精と名前がついているが、妖精を見たことのある人は誰もいなかった。
妖精の泉は、冬でも凍らない水が湧き出ている。シンビは泉の水を飲もうと、手で水をすくった。
「あー美味しいな、生き返る」
この泉の水は死者をも蘇らせると言われるほど美味しい。シンビは、空を見上げた。太陽はちょうど南にあり、お昼の時間だがシンビはお弁当を持ってくるのを忘れていた。
「水しかないのはお腹すいて死んじゃうな」
と独り言をつぶやく。泉の周りには木々が生い茂っていた。このあたりの木は、広葉樹で村人がたまに薪割りの材料にしていた。その木々が、しきりに揺れたかと思うと、シンビの頭に木の枝が飛んできた。目を開けているのもやっとの、強い風が吹いた。いたっと、シンビは手で額を押さえる。空がみるみるうちに黒い雲で覆われた。そして、細長い竜巻が泉の中心に現れた。
雲の上から大きな声がした。
「我は竜王、そなたを選んだ」
そう声がすると、途端に風が凪いだ。また雪がちらちらと舞ってきた。薄暗い冬空に戻った。
一体、今のはなんだったんだろう、とシンビは思った。ふと足下を見ると、竜の子供がこちらを見ていた。その竜は蒼い瞳に石英のような体色で、長い翼と太い尻尾をしていた。
「僕は、ローズ。君は選ばれたんだ。僕が君を選んだのではなく、僕の父上が君を選んだんだけどね」
と、その竜が話した。
「君って話す竜なんだね。驚いた。てっきり竜って怖い魔物かと思っていたから」