「ロロ、何かあった?」
「へ?」
赤い蛇が瞳の中で渦巻く。
風が肩までの黒い髪と共に踊る。
「なんで?」
「うーん。なんか、緩くなった、気がする。」
多分、俺とロロが喧嘩した日、ロロの中で何かが変わったんだと思う。
その変化がどんなものかは分からない。
でも、それが良いものであると、思いたいな。
「んー。そう?」
「うん。だって、前はこんな感じじゃあなかったと思うよー?」
俺の下半身に抱きつくようにして寝るロロがゆっくり見上げる。
「そーかな?、、、いや?」
「嫌じゃないよ。」
ネコみたい。
友人というよりは、弟みたいだな。
やっぱり冷たいロロのほっぺをつつく。
「へへへ、」
相変わらず、ロロの目の薄いくまは消えない。ためしに優しく擦る、、、消える訳ないか。
「なに?なんかついてた?」
「んーん。何でもないよ。ただ、、
ーーーーーコンコンッーーーーーーーー
「二人ともいるーー?」
扉の外からルーニオさんの声がした。
「はーい、今開けます!」
そう言ってドアに向かおうとしたが、ロロが既に開けていた。
早っ!
「なに?」
「シクロロ君おはよう。カルツェル君にちょっと話があるの。良いかしら?」
「え、俺ですか?」
「えぇ。明後日から出張でしょ?その事について説明しようと思ってね。」
そ、、、そうだったぁー!!!!
明後日から出張だ!!!???
じゅ、準備何もしてない!!!!!!!
ルーニオさんがクスッと笑う。
なるほど、お見通しってことか、、、。
なんだか恥ずかしかなって目を逸らす。
「な、なるほど、、。わかり、ました。」
最初はめっちゃ嬉しかったくせに、準備してないとか、最低だ、、、、!
「ルツ。俺、ひとり?」
ロロにも伝えていたが、忘れていたようだ。
「うーん。そうだね。ロロ、大丈夫?」
「あら、私が居るわよ?」
「べっ、べつに一人でいい!!」
ドスドスと音を立ててロロが部屋に入る。
怒った?
「もー!まぁ、私がちゃんとみておくから大丈夫よ、心配しないで。」
そういえば、最近はロロがルーニオさんにもなついてるみたいだな。前はすごい警戒してたのに、今じゃ一緒にスイーツ食べに行ってるし!
そう思うと胸の奥がチクっと痛んだ。
「はい、ありがとうございます。」
ロロの方を振り返る。
足を組んでテレビを見ていた。こちらの目線に気づくと風船のように頬を膨らませる。
「、、、むんっ!」
そう言ってまたテレビを見始めた。
なんだよ、むんっ!って。
「じゃあ一通り準備が終わったら言ってちょうだい。仕事の内容を説明するから。」
「はい。ありがとうございます。」
扉が音を立てて閉まる。
テレビの音だけが聞こえている。
妙に静かな部屋で、少しの間動かない。
しばらくして、
「、、、いつ帰ってくるの?」
「え、あー。三日間だよ。」
「、、、ふーん。」
テレビでは物騒なニュースがながれている。
『〜区にて、謎の爆発が発生。現在、テロの可能性を視野に調査を進めていくとの情報です。なお、この爆発による負傷者の情報はまだ分かっておりません。』
よく見るリポーターがヘリコプターに乗り上から爆発した場所を解説し始めた。
上から見ると知っている場所だった。
「うわ、ここ行ったことある。爆発かぁ、怖いね。最近物騒だなぁ。」
本当だよ。物騒なニュースばっかりだ。
この前は焼死体が発見されたし、謎の集団自殺もあったし、通り魔がいるし、パソコン会社がハッキングにあうし、、、。
本当物騒だよ。
「大丈夫。ルツには関係のない世界だよ。」
「、、、?うん?」
よく分からない返事だった。
あっ、違う違う。
準備しなくちゃいけないんだった。
「えーと、何がいるんだ?うーん。」
「着替え、歯ブラシ、タオル、ハンカチ、ティッシュ、絆創膏、湿布、お財布、それと、、」
「まってまって!ロロ!!こんな要らないよ!てか、バックに入らないから!!」
バックに入らない荷物が床に並べられていく。
これ絶対要らない、、、うちわ?なんで?
「、、、いるもん!」
無理やりバックに詰め込もうとするロロを止める。ぜっっったい要らない!!
三日間で使う訳ない!!!!!!!
「だいっじょうぶ!!、、絶対使わないっってば!!」
「いーーーるーーーー!!!!!万が一ってことがあるのーー!ー!!!!!」
「絆創膏20枚なんて、いつ使うんだよ!!!そんな怪我する、訳ない、でしょ!!」
「わかん、ないでしょっ!!」
「そんな、使うなら、包帯だろ!!、」
「あっ!包帯!!!」
「いーらーなーいー!!!!」
思いつくな!!
ぐっ!力強いな!!絶対使わないだろ、!
使うならどんな濃厚な三日間だよ!!
「ちょっと!大丈夫なの?すごい大きな音したけど!?」
床に並べられていた荷物は、部屋に爆発したかのように散らばっていた。
顔を見合わせる。
「「、、、、、、、、、。」」
どちらも息を切らせている。
「まずは片付けよう。」
「、、、、ぅん。」
真顔だった。
「よーし!こんな感じかな!!」
結局、絆創膏10枚と、湿布、うちわを入れた。
だが、初めの二分の一に減らすことができた。
ロロがこちらを睨んでいる。頬が張り裂けそうなほど膨らんでいる。
なんだか気まずい空気になってしまった。
「そろそろ準備できたかしら?」
ルーニオさんの声が空気を入れ替えてくれた。本当に救い!
「はい!終わりました!!」
初めての出張を考えるとまた、新しい気持ちが芽生えた。足が浮くような、肩が軽くなるような気分だった。
楽しみというか、そんな感じだった。
そうして、ドアノブに手を掛けた。
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