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早速昨日と同じように、今度は窓に張っている氷に指を触れた。
「溶けろ」
また、指先に温かさが集中する。
指の先から温かくなっているような、そんな感覚。
今回は前よりも特段に早く、簡単に溶けるようになっている。
「よし、溶けた」
数十秒して、やっと窓に張っている氷を溶かせた。
厚さがあったから余計に時間がかかったた気がする。でも、それでも、氷は溶ける。
歓喜のあまり、笑みが溢れる。
窓に触れて、空気を入れ替えようかと思い、窓に触れるた。
その瞬間、指先から冷気を放ち、窓がまた凍りつく。
………能力の、制御はまだ下手らしい。
触れても凍らないようにするには、これまた意識する必要があるのかもしれない。
ものは試しだ。やってみよう。
昼間の陽の光で既に溶けた窓にもう一度指先を触れてみる。
今度は、「凍るな」と言うに命令を下すように、氷のできないイメージをして。
陽の光である程度温まっている窓は温かくて、指先からジーンと熱を持つような気がした。
「温かい…」
窓を手の平をつけて、思わずそう呟いた。
もう、先ほどのように強くは意識していないが、弱い意思でも、窓は凍っていない。
目頭が少し熱くなる。涙が出そうだった。
これは、悲しみでなんかじゃない。
歓喜に溢れて漏れ出そうな涙だ。
だが、俺はもう泣かない。
これは罪滅ぼしでも、逃避行でも無い。
俺自身の意思で、そう決めたんだ。
何かを守りたいと思うなら、こんな事で泣いている程度じゃ、守れない。
兄さんが教えてくれた。
[誰かを笑わせたいなら、笑え]と。[笑顔は伝染するものなんだ]と。
だから、俺は泣かない。涙も伝染するから。
俺は泣かない。前を向く。上を向く。
強いやつになるって決めたんだ。
そんな事を思考していたら、窓が凍っていた……。
……忘れてた……。
一切意識し無いとなると、さすがに凍るらしい。
これは、面倒だな……。
だけど、何度だって、何度だって、この氷を溶かせば良い。何度も挑戦すれば良い。
ここ数日で俺はそれを学んだんだ。
俺ならできる。
いや、やってのける。