テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#衝撃のラスト
山根利広
1,673
52
418
「ほんとお疲れねー、はい。明日からも精出して! 生姜マシマシ唐揚げー」「助かります、美佳子さん」
虹雨と由貴は除霊と喫茶店のウエイターの仕事で毎晩九時過ぎまでヘトヘトである。時に霊がよく出るのは夜なので朝帰りもザラである。
その時は冷蔵庫に食べたいものを適当に入れておき、美佳子が現れる夜のうちに作ってもらい朝に食べるという日が続いた。
「こっち来てからずーっとこんな感じやで。ありえへん、ブラックや」
「由貴、何言うとる。俺の方が除霊しとるからしんどいんや。これ食べたら塩風呂入るわ」
「は? 俺はこの後3本撮りしたやつを編集せなかんのや。徹夜やで」
「あん? 俺はその三本の仕事の報告書を書いて朝イチに所長のところに持ってかなかんのや。その後すぐ喫茶店の手伝い……」
と二人は疲れのあまり言い争いが増えたような、前と変わらないような……。
「もう無駄な争いはしたない。さっさと食べて風呂入って寝るしかない」
「そやな。ごめん、美佳子さん」
美佳子は首を横に振る。
「なんか最近幽霊界も騒がしいわねぇ。ずっと働きっぱなしだもん」
「俺らの活躍が増える、それを動画で流す、それ見た人が依頼する、仕事をする、それな。本当嬉しいのやらなんなのやら。他の霊媒師よりも俺ら指名が多いんや」
「ほんと無理しないでね」
「ありがとうございます……」
ツンツンしながらもちゃんとお礼を言う虹雨だが、やはり相当疲れているようである。
虹雨がたっぷりの塩風呂に浸かっている間に由貴は片付け、そして編集作業。
得意でもあるし好きでもあるがそれを今まで仕事としてなかった。よく趣味を仕事にすると良くないとは聞いていたがそれはその通りだ、でも自分の動画を見て面白いです、編集最高です、カメラの画質良いです! とコメントがあるとやりがいを感じる。
由貴も加わって少しずつファンも増えて今では依頼だけでなくファンレターやプレゼントもいただいたり、塩風呂の塩やお守りも。
「これって料理に使えるかしら」
美佳子が今日届いていたプレゼントの塩を見て言う。
「それ、渚ちゃんにも言われた。食べられないと書いてあったら乾燥剤入ってるんや。虹雨が愛用してるのはキッチンソルトだから使えるけどな」
「ふぅん」
と言いながら由貴をじろっと見る美佳子。
「なんなん」
「渚ちゃんとは仲良くなった?」
「一応仕事の先輩やし、よくしてもらってる……」
「でもコウちゃんは由貴くんは渚ちゃんに一目惚れしたって」
「!!! 虹雨ー!!」
由貴は浴室に走っていった。
「さて、私は帰りましょうか………由貴くんも悪くはないけどねえー」
と、ドロンと美佳子は消えた。
虹雨と由貴は眠い目を擦って朝イチの真津喫茶店に訪れる。
「おはようございます、もう用意してありますよ」
と喫茶店の一人娘、渚が出迎えてくれた。そう、この女性のことを由貴は好きなのである。
だが渚の目線は虹雨の方にある。
渚は虹雨にぞっこんである。彼女は2人とはそう歳は変わらないが恋愛経験があらず、ここに現れた虹雨に一目惚れしてから周りのサポートもあり少しずつ前進しつつもある。
虹雨と由貴がこの喫茶店で手伝わせているのも渚の恋愛を実らせるためのものでもあったのだが由貴も渚に一目惚れ、していて肝心の虹雨は全くである。それでも渚は近くでいられるからとうれしく思っているのである。
2人が喫茶店の一つの席で朝ごはんを食べていると美帆子がやってきた。そして一緒に渚もおかわりのコーヒーも注ぎにきた。由貴はニコッと虹雨の分のコップを渡すと渚はそうじゃないっていう顔をする。
虹雨は軽く会釈。それが彼女にとって幸せなのである。
「報告書、できました」
「ありがとう、お疲れ様……本当なぜか依頼が立て続けに増えてしまって大変かもしれないけどこの調子でコンスタンスに仕事が入っていけば独立させようかと思っているわ」
「えっ、独立?」
由貴はビックりしている。虹雨の方を見ると彼はハイ、と何故か冷静な顔をしている。
「虹雨知ってたのか」
「知ってたのも何も……いつまでもここにお世話になるのもな。まぁ喫茶店は来ますけど余裕ができたら渚ちゃんを秘書として雇おうかと思っている」
「渚さんを!!!」
由貴はびっくりして立ち上がって渚を見る。
「ハイ、大学は経済学部を出ていまして……喫茶店でお手伝いしてますけど大学出てから数年間は会計事務もやってました。二年前に職場が休業を強いられたのをきっかけにここで働いていたけど……こんな私でも雇ってもらえると嬉しいですわ」
すると由貴が渚の手をぎゅっと握った。
「嬉しいです、渚さんはレジの締めの時もすごく早いし普段の喫茶店でも業務も的確丁寧、もしパソコンとか得意だったら編集作業も手伝って欲しいし……ねぇ、虹雨!」
だがすぐ渚は手を振り解き、虹雨は苦笑いしている。
「楽しようとすんな。動画もいずれかは誰かもう1人違うクリエイターをと思っているけど俺らと相性のあるやついるか? しばらくは俺ら2人でやって渚ちゃんは事務作業をしてもらうだけだ。それにまだ仕事が順調、そして余裕が出てからと言ってるだろ。冷静になれ、らしくないぞ」
「ごめん、渚さん……手を握っちゃって」
「べ、別に。それに私は2人よりも年下ですし、さんとか丁寧語とかはやめてください……」
渚は顔を真っ赤にした。由貴も顔を真っ赤にしながら席に座った。
コメント
1件
お疲れさま!第34話、読んだよ〜。虹雨と由貴、相変わらずブラックすぎるスケジュールで笑ったけど、その中で美佳子さんのツッコミや由貴の渚さんへの片思いがバレるシーンはほっこりしたわ。渚さんが虹雨にぞっこんなのに由貴は気づいてない感じ、もどかしくて応援したくなる。独立の話も出てきて、これからどう動くのか楽しみ。最後の渚さんの真っ赤な顔、めっちゃ可愛かった(笑)。