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「姫様完了いたしました」
「参りましょう主様」
「我が君」
「始めましょう…ここの開拓を」
ねぇ主様…明日は晴れますか
ガタガタ…ゴト…ガタガタ…ゴト…
ガタガタ…ゴト…ガタガタ…ガタガタ…ゴト
オンボロ馬車が揺れる。山道を進む。道がちゃんと整備されていないので揺れまくる。先ほどいた街から何時間も経ったが目的地がまだ見えてこない。長い長い道のりだ。森の中は暗く昼間でもそう感じてしまう。夜になると何も見えなくなりそうだ。
森を抜けた。
ガタガタ…ゴト…
「着いたよ…嬢ちゃん」
「はい」
「…この先は危険だから速めに離れていったほうが身のためだよ」
「ご親切にありがとうございます」
ニッコリ
私は、代金を払い。馬車を降りた。馬車は早くこの場を離れたいのかすぐさま走り去ってしまった。もう、豆粒のような大きさになるほど離れている。この先は呪いの地とも言われている。国で最も大きい領地で大公爵が治めている。昔は国で一番の美しい領地で魔法の技術も高く活気に溢れた場所だった。だが、今では領民は数人しか居らず。作物は実りにくく、殺風景な街並みで旅の商人すら寄り付かない場所だ。乗合馬車で来たが本来は領地付近まで行かず手前の街(といっても何時間もかかるほど距離がある)で終点だ。そこを無理を言い代金を多めに払うことでここまで乗せてもらった。寄り付かない一番の理由は怪物大公爵と呪の魔術師だ。噂では人殺しを楽しむ怪物大公爵、死の呪いかける魔法使いがいると言われている。会えば、呪い殺されるか実験台にされてしまう。だからこそ、誰もが呪を恐れ離れていった。
(…哀れだな)
領地に入るための城門を勝手に超えだが本来は門番がいるはずだ。門すら錆びて脆くなっており誰もいなかった。不用心すぎる。これでは、領地を奪われるのも時間の問題だ。それから、誰とも会わずに領地の中央もともと首都ともいえる場所に来た。中央の方で会ったのは子供数名、若者数名、お年寄り数名だけだ。まるで、田舎の村だ。いや、この現状は村よりひどいかもしれない。
「すいません…このあたりにある薬屋に行きたいのですが、どちらにありますか」
私は、家の前にある椅子に腰掛けている老人に話しかけた。
「はて…珍しいこともあるのぉ…こんな所に小さな美しいお嬢さんがいるなんて」
「ありがとうございます。私は旅のものです」
「そうかそうか…薬屋はこの道を進んだ先にある広場の左にあるじゃろう」
「ご親切にありがとうございます」
「あと一つお聞きしますが…大公爵様をここ最近お見かけしたことはありますか」
「そうじゃのぉ…十年近くは見ておらぬ。この地に居るのかも分からぬ」
「そうですか」
老人は懐かしむように答えた。
「…昔は良かったんじゃがな」
「教えて頂きありがとうございます」
「気をつけてな」
教えてもらった道を進み広場へと向かった。その先にある広場は、荒れ果てていた。噴水は止まり苔が生えベンチは壊れ周りの店は閉まっている。
(…!見つけた)
オンボロな店だがここだけしっかりと看板があり店の名前が探していた場所と一致していた。
『薬屋 シオン』
チリン…チリン…
店のベルは壊れてないようだ。これなら…
「こんにちは」
ムッ
だが、店の中はだめだ。広々としているのにホコリが大半埋めている。棚も壊れかけ、薬草などが入っている瓶は雑に置いてある。店とは思えない。
「いらっしゃいませ」
オンボロだが店員はいるようだ。茶髪でオレンジの瞳に背も高くまっとうな人に見える。だが、エプロンを着らずに剣を腰に持ち軽めの鎧を身に着けている。見ただけで分かるほど戦士の男性だ。これでは、戦前のようだ。
(この人…)
「すみません…店主にお会いしたいのですが」
「…私が店主ですが」
違う。どうやら、素直にでてこないらしい。
「こちらにある薬を作った方にお会いしたいのですが」
「そちらは私が作りました」
「そうですか…」
「なにか問題でも」
相手は怪しげにこちらを見ている。
「いいえ…では回復薬とニリンソウをください」
「えっと…銀貨5枚です。どうぞ」
硬化を5枚…スゥ…
握りしめて渡す。
「ありがとうございます…では」
「またのお越しを」
チリン…チリン…
(ふぅ…)
このまま引き下がるわけにはいかない。まぁ、明日には本人が出てくるはずだ。
「…宿を探さないと」
宿を探しながら、街並みを見て回った。どこもかしこも廃墟ばかりだった。なんとか、夜までに宿を営んでいる場所を見つけそこに泊まった。飯付きで安い宿だったのでよかった。女主人は優しく、宿では久々の客だったので喜びのあまり料理人が豪華なご飯を作ってくれた。簡単な材料で作られたご飯はとても美味しかった。その晩、改善点や補給できそうなところを紙にまとめた。
「…ここまで長かったな」
ここまで何日…もしかしたら一ヶ月ぐらいかかったかもしれない。野宿したり宿に泊まったり木の上で寝たり…洞窟で寝たり長い道のりだった。
「…あったかい」
いつでも客が着ていいように宿の人が布団を毎日干していたのでふわっとしていた。あったかく、長旅の疲れにより布団の中に入るとすぐに眠ってしまった。
コンコン…コン
「失礼します。昼間、主様を探している者が店に来ました。どうぞお気をつけください」
「…そうか」
そこは、暗くホコリまみれだが魔素に包まれた空間だ。動物が入れば魔物へと変わってしまうほどの…
この人はそんな場所にずっとおり、時折外を眺めるぐらいだ。
「…おい」
「なんでしょう」
主様は指を差しながら言った。
「…お前その袋に入っているのはなんだ」
「これは今日の売り上げ金です」
「貸せ」
「どうぞ…」
急いで袋から硬貨を取り出しその中の1枚を眺めた。
「この魔力…」
「どうされました」
「お前…嵌められたな」
「え… 」
主様がその1枚の硬貨を握りしめると
フヮ…
硬貨が紙へと変わった。
『明日、店でお会いしましょう。
追伸 店員への教育はした方がよろしいかと
✾ 』
「フッ…」
「主様…」
「…見るがいい」
「これは…」
その手紙を見せてもらった。確かに、これは紙だ先程まで確かに銀貨だった。このような事、主様以外にできる人など見たことがない。
「…明日、店へと行こう」
「…!左様ですか」
「あぁ…」
「これは罠かもしれませんよ」
「フッ…」
何年も長い間家から一歩もでなかった方が出るとは…
あの者は何者だ。
「…それにしても懐かしい花だ」
アイリス…
主様は聞こえないぐらいの声で言った。