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どう反応すれば良いかわからず、今離れるのは良くないと思い後に続く。
列に並んでからも特に会話はなく無言。
気まずくなってしまった雰囲気のまま次々と列は進む。
僕は耳を傾け待っている。
途中、王族派の子供との挨拶が終わった後は自己紹介と挨拶だけで終わっていた。
いや、詳しくは話す機会を与えられなかったと言うべきか?
挨拶、自己紹介が終了するとあからさまに早くやめろという態度をとる。
アドリアンは八つ当たりをしている。
本当に何やってんだよ王子はと思いつつも状況把握のために聞き耳を立てる。
だが、それからしばらくするとようやくまともな会話内容が聞こえた。
……いや、聞き慣れた声だ。
レイルとアドリアンだった。
『貴様も目が曇っているな。そこの成金を側仕えに置くとは』
『お言葉ですが優秀な人材と友誼を結んで何か問題がおありですか?……それとお間違いないように。クルーガー=ウォーウルフは私の友人ですので』
『け、宰相も苦労しているんだろうな。こんないけすかないやつを友達とは……聞いたぞ?あのユベール家の息子も友人にしたとか……忠告してやるよ。もう少し人は選んだほうがいいぞ?』
『お兄様、そろそろ』
『すまないなクリスタ、無駄な時間を過ごしてしまった』
『ご忠告痛みいります』
『チッ……』
……うん、相当イラついてるわ。
人にあたりすぎだよアドリアン。
この傲慢さは想像以上だ。
宰相閣下が中立派に属しているのが良くわかる。
幼いからだと思うけど、流石に今のアドリアンの言動は目に余る。
クリスタが止めに入らなければ事態悪化の可能性もあったな。
多分貴族派のオーラスが参加しなかったのもアドリアンと話したくなかったからかもしれない。
流石に聞いていてイラつくし。
そう疑問に思いつつも列は進み僕とアレイシアの順となった。
……挨拶早く終わらせて立ち去ろう。
僕は右手を胸に、左手の指先を伸ばし腰につけ浅い一礼をする。
「本日はお招きいただきありがとうございます。アドリアン殿下、クリスタ王女殿下、お初にお目に掛かります。アレン=ユベールと申します」
「……本日はーー」
「別に俺が招待したわけではないがな。貴様の噂は父上から聞いているぞ。相当優秀なようだな」
……こいつ、皮肉ってやがる。
てか、アレイシアの言葉遮りやがったよ。
態度は見るからにイラつきが増している。
僕も少しイラついてしまったが……落ち着こう。レイルに言われていたじゃないか。
「……お褒めに預かり光栄です」
「……チッ」
あ、やべ。落ち着いたらつい皮肉返ししてしまった。
火に油を注いでどうするんだ。でも、少しスカッとしたからいいか。
「アドリアン=グラディオン、妹のクリスタだ」
「紹介に預かりました。クリスタ=グラディオンと申します。以後お見知り置きを」
また何か皮肉を言われると思ったが、しっかりと自己紹介をしてくれた。
アドリアンは早く僕との会話を辞めたいらしい。
雑な挨拶に紹介、クリスタはアドリアンと違い丁寧に対応してくれた。
敵を作るだけのアドリアンと上部だけでも取り繕うクリスタ。見た目以外全く似ていないな。
そう思いつつアドリアンの様子を窺うと僕の右隣にいるアレイシアに声をかけてくる。
「おい、早く名乗ったらどうだ?」
「……大変失礼しました。クリスタ王女殿下、お初にお目にかかります。アレイシア=ソブールと申します。以後お見知り置きを」
挨拶を遮ったのはお前だろ。
内心突っ込みつつ、大丈夫かとアレイシアを心配するも、つらつらと声音を変えることなく一定の言葉で発揮ながらカーテシーをした。
本当に完璧な動作だな。
先程まで様子がおかしかったが杞憂だったかもしれない。
とりあえず、挨拶はこれで終わり。
これでお役目ごめんだ。
早く終わらせて端っこで適当に時間を潰そう。
……そう思考した時だった。
「相変わらず無愛想だな。もっと愛想良くできないのか貴様は?」
アドリアンは今度はアレイシア矛先を変えやがった。
「愛想のない奴は嫌われるぞ?」
僕は毎回何かを仕出かすらしい。またも失念をした。
ただでさえイラついているアドリアンがアレイシアに何を言うのか冷静になれば気づけていた。
アレイシアはアドリアンの最後の言葉を聞くなり僕と目が合い……振り返りその場から立ち去ってしまった。
「アレイシア」
攻略対象は独特なキャラが多い。
俺様系で我儘。それがアドリアンのキャラで王族、多少の事は許される。
だが今回の件は限度があると思う。
僕のことはいくら悪く言おうが気にしない。聞き流せばいいのだから。
でも、アレイシアのことを悪く言うのは許せない。
僕は前世を含め今までで一番怒っているかもしれない。
怒鳴ろうとしてーー。
「殿下、今の発言はどうかと思いますよ?」
レイルの言葉で少し冷静になる。
ふと、レイルに視線を向けると怒っている様子がわかった。
レイルは僕とアドリアンの間に割って入ってくる。
「あとは私に任せて君は彼女の元へ」
その言葉を聞いて少し冷静になった僕は会場を出たアレイシアの後を追った。