「ねぇ照、今日飲みに行かない?」
休憩中、銅像の様に背中を丸めて動かない岩本に声を掛ける
「……気分じゃ無い」
こちらを見ずにそう答えた岩本は、渡辺とのいざこざをかなり引きずっている様に見えた
「そんなに落ち込んでたって仕方ないでしょ…いつもは照に付き合ってるんだから、今日は俺に付き合ってよ」
深澤は今まで散々、岩本に付き合って飲みに行っていた
そして毎回聞かされるのが、渡辺との惚気話か愚痴だった…
一概に愚痴と言っても岩本の場合【翔太がサウナ行くって会ってくれない】【なかなか好きって言ってくれない】と、惚気に聞こえるものばかりで
深澤は、そんなつまらない話でさえ…聞き流さずにいつも笑顔で聞いてくれた
「………」
「ね、行こ?」
「………」
「はい約束」
自分の小指を無理矢理、岩本のソレに絡ませて…勝手に針千本切ってしまう
「分かった…」
岩本も渋々了解し、今夜2人で飲みに行く事が決定した
◇◆◇◆
「だからさぁ〜俺の何が悪いって言うんだよ〜!」
2人で一緒に個室の居酒屋へ行ったものの…精神的に弱っていた岩本は開始早々に酒を煽り
あっという間にこの状態…
「翔太はさ〜何でそんなに目黒に構うの〜?」
個室とはいえ…酔って見境がなくなった岩本が、プライベートの事を躊躇せずに話し出すので
2人は早々に店を出て、深澤の家に移動した
「ほら、照…水」
「まだ飲めるって〜」
「どう見ても、もう駄目でしょ…ほら、言う事聞いて」
「ん〜」
諭す様に説得して、何とか水を飲ませると…
酒が薄まったのか、30分位経った頃には少しだけ落ち着いて来た様に見えた
「?」
机の上に出したままの岩本のスマホ画面が光っていて、誰かから連絡が来たのだと知らせている
「照ほら、連絡来てる」
渡す際にチラリと見えた表示には【宮舘涼太】の名前があった
「もしもし…?」
どうやら電話だった様で…岩本は、そのままそこで話し始める
「舘さん、何?……は?翔太が?」
聞くつもりは無かったが、同じ部屋に居れば当然話の内容は聞こえて来て…
何処かに移動する訳でもなく、深澤もそのままそこで黙って成り行きを見守っていた
◇◆◇◆
「だから、翔太が目黒の家に行ったんだって…」
スマホの向こう側から、宮舘の声がする
「………」
「俺はすぐに次の現場に移動して、あんまり詳しく聞けなかったんだけど…泊まるとか何とか聞こえたから、気になって照に掛けたんだ…」
「泊まる?翔太が目黒の家に?」
アルコールのせいもあり、頭が上手く整理出来ない…
「何で目黒?…はぁ…」
渡辺の軽率と言わざる負えない理解出来ない行動に、次第に怒りが込み上げて来る
岩本と距離を置くと言っておきながら…その間に、自分は目黒とよろしくやろうなんて…全然理解が追いつかない
「もう良いや…翔太の事は今の俺には関係ないし…」
冷めた様に言い放った岩本に、隣にいた深澤と向こう側に居る宮舘が息を飲んだ
「照、本当にそれで良いの?」
「良いのも何も、俺にはどうする事も出来ないし…」
「………そう、分かった」
岩本の言葉を大人しく聞いていた宮舘は、一瞬何か考えていたのか言葉を区切り
「それなら俺が貰うから…」
「は?」
「照が翔太ともう関係ないって言うんなら…俺が翔太、貰うから」
そう言い切った宮舘は、有無を言わさず電話を切った
コメント
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え、これ第4部で終わるかな…😂