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テラーノベル(Teller Novel)
人間様

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世界を愛せないから

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2024年02月29日

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『それは、少女が見るはずだった物だから』


部屋の中に入ると、広い部屋に移動させられた。私を囲むようにテーブルがあって、名前らしきものが書かれた椅子が23個置かれていた。今からこの部屋に23人来る……なんて言わないよね?人混み…苦手なんだけど?

そんなことを考えている内に扉の空く音が聞こえて、ぞろぞろと人が入ってくる。皆、音が人間じゃない。それぞれ持ち場があるのか椅子の名前をチラッと確認しつつ座っていく。

白い髪に、綺麗な赤色の目を持つ、白い服に黒いマント…?みたいなものを着た少年?少女?どちらか分からない人間ではない人外が、「愚者」と書かれた椅子に座った。

紫髪に少し深い赤色のインナーカラーが入っていて、紫の目に中心に近づく事に赤色が入っているスーツを着こなした青年と思わしき人物が、「魔術師」と書かれた椅子に座った。

そして、ここに案内してくれたスノードロップが、「女教皇」と書かれた椅子に座った。

次に座った人が気になって見てみて、ぞっとした。そこには、人間の国の、私達の姫様が居た。姫様は、「女帝」と書かれた椅子に座った。

そして、姫様の護衛だと思わしき騎士様は、「皇帝」と書かれた椅子に座った。

ふわふわとした白い髪に、緑の目を持つ、露出の少ないドレスのような服を着こなしたお姉さんが、「法王」と書かれた椅子に座った。

ピンクの髪をツインテールにして、薄いピンクの色の目を持つ、黒とピンクを使った可愛らしい服を着たお姉さんが、「恋人」と書かれた椅子に座った。

栗色の髪に、それを少し薄めたような色の目を持つ、いかにもアシッド教関連の人ですという服を着た青年…?と思わしき人が、「戦車」と書かれた椅子に座った。

そして、隣にはいつぞやか出会った存在感の薄い青色のお兄さんが居た。お兄さんは、「力」と書かれた椅子に座った。

黒色の髪に、凄く薄い緑の目を持つ、黒い服に身を包んだお姉さんが、「隠者」と書かれた椅子に座った。

隣の席には「運命の輪」と書かれているが、空席である。……休みかな?

淡い黄緑色の髪に、似たような色の目を持ち風のマークが入った和服を着た美青年が隣を見て少し悲しそうにしながら、「正義」と書かれた椅子に座った。

黒に少し紫を足したような色の髪に、黒い狐のお面をしてスーツを着こなしている少年が、「吊し人」と書かれた椅子に座った。

隣の席には、「死」と書かれた椅子があるがまたしても空席である。座ったら死ぬ椅子とかそういうやつなのかな……?

水色の髪に、それと似た様な目を持つ少年と、青色の髪にそれと似た様な目を持つ和服を着た2人の人が「節制」と書かれた椅子に座った。

青い髪に、毛先だけ赤色が入っていて、右目青色、左目赤色のオッドアイを持つ、1番初めの性別不明の人外と似た様な服を着て首筋に金木犀のマークが入った青年が、「悪魔」と書かれた椅子に座った。

長い黒髪に淡い黄色のインナーカラーが入っていて、インナーカラーと似た様な色の目を持つ、黒く長いワンピースのような物を着たお姉さんが、「塔」と書かれた椅子に座った。

金色の髪に、黒い目で中心に近づくと緑が入っている目を持つ、黒い狐のお面をしている人と似た様なスーツを着たかっこいいお姉さんが、「星」と書かれた椅子に座った。

黒く長い髪に、見る角度で色が異なる所謂虹色と言いたくなるような色の目を持つ、スーツともドレスとも言い難い物を着こなしたお姉さんが、「月」と書かれた椅子に座った。

毛先の方だけ薄い紫が入った栗色の長い髪に、白色の狐のお面をした青年が、「太陽」と書かれた椅子に座った。

隣の席には「審判」と書かれているがそこに置かれているのは氷の棺…?のようなものだ。あれは人間としてカウントしていいのか…?

最後に、白色の髪に、同じような白い目を持ち、いかにも天使ですけど?と言いたげな服装の少年…?青年…?が「世界」と書かれた椅子に座った。

これで、私を囲むように人が座った。最後に入ってきた少女は他の人達より高い椅子に座った。そして、こちらをじろじろと見てくる。そんなに見ないでよ。見られるの慣れてないんだから。

なんて思っていたら、ふと、本能的に嫌な気配がした。まるで、この世のものとは思えない、そんな雰囲気を。


「初めまして。指名手配の殺人鬼の蒼音さん。私のことはどうぞ好きに呼んでもらって構わないよ。少女でも、教祖代理でも、調停者でも。なんでも好きなふうに呼んでもらっていい」


…今、なんて?自分のことを、調停者と言ってもいい?……じゃあ、この少女が、この世界の頂点……なの…?


「ふふ、何が言いたいのかまるで分からないって顔だね。なんでも聞いて。まぁ、スノードロップから少しだけ話を聞いているかもだけど。私に答えられることならなんでも聞いて。答えるよ」


…なんなんだ、この不気味な感じ。今まで感じたことの無い、音。この少女からは、なんの音も聞こえない。まるで死人だ。でも、少女は生きていて今も私の前にいる。これは…どういうことなんだ?


「…初めまして、調停者さん。私の名前は…って、知ってるか。それじゃあ、単刀直入に聞かせてもらうけど、私はどうなる?」


そう、結果的にこれが全てだ。私は、死ぬのか、死なないのか。生きれないなら、私はさっさと死んでしまいたい。


「…そうだね。私としては君を生かしておきたいんだけどね、生憎世界は君のことが嫌いなんだよ。まぁ、簡単に言うと私は君を殺すよ。今、この場で」


あらまぁびっくり。死ぬらしいですよ私。…なんて言ってる場合か!?いや、死ぬのはいいけど今この場で!?誰が!?

……いや、待てよ。ここには調停者と調停者専属部下がいるんだ。……余裕で死ねるのでは?


「さぁ、どうする?最後まで足掻いてみる?それともすぐ死ぬ?貴女にとって死が救いなら、最後まで抗って見せてよ。最後まで、丁寧に苦しんで。そしたら、きっと許される…でしょ?」


なんだ、この少女。私の思考を読んでいるみたいだ。気持ち悪い。…それでも、やるしかない。そうだ、死が救いなら、抗って見せてやる。この世界が、ただ、どうしようもなく、嫌いだから。そんな世界の頂点も、私はきっと嫌いになれる。記憶なんて、捏造してしまえ。都合のいい事か悪いこと、そんな極端な記憶しか人間は残せないのだから。


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