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#闇バイト
るしゅ
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土橋真二郎
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「これ、ヤバいかもしれない」
海斗の声は震えていた。
俺は思わず周囲を見回した。
住宅街は静かだった。
さっきの子供の姿もない。
車の音だけが遠くから聞こえる。
「どういう意味だよ」
海斗はすぐには答えなかった。
代わりにスマホを見せてきた。
画面には報告項目が表示されている。
・家族構成
・防犯設備
・車両有無
俺と同じだった。
「お前もか」
「ああ」
海斗は唇を噛んだ。
「最初は気のせいだと思ったんだけどさ」
「……」
「俺、前の案件で別の家に行ったんだ」
俺は黙って聞いた。
「その時も似たような内容だった」
嫌な汗が流れる。
「で?」
海斗は視線を家へ向けた。
「三日後、その家がニュースになった」
俺の心臓が止まりそうになった。
「は?」
「空き巣」
その一言で十分だった。
頭の中が真っ白になる。
「いや、待てよ」
俺は首を振った。
「偶然だろ」
そうだ。
偶然だ。
そうであってほしい。
そうじゃないと困る。
海斗は苦笑した。
「俺もそう思った」
その顔は全然笑っていなかった。
「でもな」
海斗は続ける。
「今日の家を見て確信した」
俺は息を呑む。
「俺たち、荷物運びじゃない」
住宅街を風が吹き抜けた。
背中が寒い。
スマホが震える。
反射的に画面を見る。
【情報不足】
【再確認してください】
また同じメッセージだった。
その下に新しい通知。
【報酬減額まで残り10分】
「は?」
思わず声が出る。
減額?
そんな話は聞いていない。
海斗のスマホも鳴った。
同じ通知らしい。
「クソが……」
海斗が吐き捨てる。
俺は家を見る。
普通の家だ。
ただ家族が暮らしているだけの。
それなのに。
今の俺には別のものに見えてしまう。
海斗が小さく言った。
「帰るか?」
俺は答えられなかった。
帰りたい。
今すぐ帰りたい。
でも。
三十万円。
その金が頭から離れない。
情けないと思う。
最低だとも思う。
それでも。
現実は残酷だった。
残高百四十三円だった頃の記憶が消えない。
母さんの病院代も消えない。
沈黙が続く。
その時だった。
住宅の玄関が開いた。
俺たちは反射的に身を隠す。
出てきたのは中年の男性だった。
スーツ姿。
車に乗り込む。
エンジンがかかる。
車はゆっくり走り去った。
そして。
俺のスマホが震えた。
【車両移動を確認】
血の気が引いた。
俺は何も報告していない。
海斗も報告していない。
なのに。
組織は知っている。
車が出て行ったことを。
俺たちは顔を見合わせた。
海斗の顔は真っ青だった。
たぶん俺も同じ顔をしている。
「見られてる……」
誰かが。
どこかで。
俺たちを見ている。
その事実だけが、嫌になるほどはっきりしていた。
(第九話へ続く)
コメント
1件
るしゅさん、第8話読みました…! 「荷物運びじゃない」って海斗の台詞、ゾッとしました。しかも「組織はこっちが報告する前に知ってる」って怖すぎますよ…普通の住宅街なのに、見られてる感がひたすら重くて。初回からこんなに引き込まれるとは。続きが気になりすぎます!