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「……ママ、最近、家の前に変な車が止まってるんだ」
夕食の席で、陽太が不安げに口を開いた。
箸を持つ私の手が、一瞬だけ止まる。
高木常務───
私が裏帳簿の存在を突きつけたことで、彼はついに「一線」を越えてきたのだ。
「大丈夫よ、陽太。ママが守るから。明日からは、塾の送り迎えも警備会社の人が付いてくれるように手配したわ」
「……こわいひと?」
「ううん、信頼できる人たちよ」
陽太を寝かしつけた後、私はリビングで一人、監視カメラの映像をチェックした。
映っていたのは、黒塗りのセダン。
高木は、私が「母」であることを最大の弱点だと思っているのだろう。だが、それは間違いだ。
子供を守るためなら、母親はどんな怪物にもなれる。
私はスマホを取り出し、ある番号をタップした。
「……莉奈さん。準備はいい?」
『……ええ。直樹との面会、終わったわ。あいつ、最初は渋ってたけど……「高木を売れば、お前の刑期が短くなるかもしれない」って言ったら、泣きながら隠し場所を吐いたわよ』
直樹は、自分を捨てた高木よりも
自分を地獄に落とした私よりも、結局は「自分の保身」を選んだ。
裏帳簿のコピーは、高木が所有する別荘の、書斎の床下に隠されているという。
「分かったわ。……莉奈さん、そのまま警察の知人と合流して。今夜、すべてを終わらせる」
私は家を飛び出し、あえて高木の車が待ち伏せしている大通りへと向かった。
囮になるためだ。
私が車で走り出すと、予想通り、黒塗りのセダンが尾行してきた。
人気のない埠頭へと車を走らせる。
車を止め、外へ出ると、セダンから高木が
そしてガラの悪い男たちが数人降りてきた。
「詩織さん、忠告を聞かないからこうなる。……その帳簿、どこに隠した?吐かなければ、お宅の息子さんの安全は保証できないぞ」
高木が冷酷な笑みを浮かべて近づいてくる。
だが、私は震えなかった。
むしろ、哀れみの視線を彼に向けた。
「高木常務。……あなたは一つ、大きなミスを犯しました」
「なんだと?」
「私を監視しているつもりで、自分たちが監視されていることに気づかなかった」
私が指を鳴らした瞬間。
埠頭の倉庫の陰から、数台のパトカーがサイレンを鳴らさずに現れ、高木たちを包囲した。
そして、私のスマホのスピーカーからは、莉奈の声が流れる。
『……詩織さん! 確保したわ。別荘から、本物の裏帳簿と、直樹の署名入りの裏取引指示書。……高木の逃げ場は、もうないわよ』
高木の顔から、一気に血の気が引いた。
「……は、ハメたな……!」
「ハメたのは、あなたたちでしょう? 直樹を使い捨てにし、私の家族を脅かした。……1円の誤差を許さない私が、あなたの人生を『見逃す』なんて、どうして思えたのかしら」
高木は、強要罪と背任の容疑でその場で現行犯逮捕された。
警察車両に押し込まれる高木を、私は冷たい雨の中で見送った。
これで、直樹に関わる全ての「悪」が、檻の中に揃った。
直樹、莉奈、そして高木。
彼らはこれから、狭い檻の中で
互いに責任をなすりつけ合いながら、終わりのない泥仕合を演じることになるのだから。
【残り78日】
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