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まぶたを開くと白い天井が視界に入った。
ぼんやりとした頭の中で、ここが病院だということを思い出す。
すぐそばに看護師さんがいて、〇〇が目を開いたことに気がつくと、優しく声をかけてくれた。
〈あ、目が覚めた?ゆっくり休めましたか?〉
「…はい」
まだ少しかすれる声で。
看護師さんはカルテを確認しながら〈目黒先生呼んできますね!〉と言い、足早に部屋を出ていった。
ほどなくして、相変わらず長身の目黒先生が入ってくる。
『〇〇ちゃん、びっくりしたよね。今はどう?』
「今は…大丈夫です。少し苦しいけど…」
『そっか、無理しないようにね。発作が大きくて今も不安定だから、今日は一日入院しよう。』
突然の入院という言葉に、胸の奥がざわつく。
着替えもない、
というか何も持ってきてない、
家族にも連絡しないと、
(どうしよう…。)
不安を抱えながら病室へ移動した。
白いシーツのベッドに横たわると、廊下の足音やナースコールの音が耳に入ってくる。
心臓の鼓動がまだ少し早くて、眠れそうにない。
ーーその頃ーー
『めめ〜、昼の子大丈夫だった?』
廊下で目黒先生に声をかけるのは、昼に助けてくれた深澤先生。
カルテを片手に、軽く首を傾ける。
《ふっかさん!はい、今は落ち着いています。》
『そかそか、良かった〜』
深澤先生はその返事に安心したように、何気ない足どりで〇〇の病室の方へ向かった。
ドアの小さな窓から、そっと中をのぞく。
ベッドに横たわる少女は、まだ少し不安そうな表情で天井を見つめていた。
『(昼間より顔色良さそうだし、大丈夫そう)』
それだけ確認すると、深澤先生はその場を離れ、自分の仕事へと戻って行った。
ーーーー夜になり、昼間の慌ただしさが嘘かのように静かになった病棟。
消灯時間を過ぎ、廊下には足音もなく、ナースステーションの明かりだけがぼんやりと灯っている。
〇〇はスリッパの音をなるべく立てないように、ゆっくりと歩いていた。
胸の奥のざわつきと、早くなる心臓の鼓動。
ただ、看護師さんを呼ぶのも申し訳なくて、ナースステーションへ行こうとしたそのとき。
『どうかされまし…って、お昼の子!?』
少し先の方から現れた白衣の姿。
深澤先生は夜勤患者のカルテを確認しながら歩いていたが、夜の廊下に患者、しかもそれが見覚えのある姿ということで立ち止まった。
『どうしたの、こんな時間に、!』
驚きと少しの心配が混ざった声。
〇〇は足を止め、両手を前で揃えて小さく言った。
「看護師さんを呼びたかったんですけど、来てもらうのはなんか悪いかなって…なので自分で行こうかと…」
『!!!』
深澤先生は一瞬目を丸くする。
『そんな、いいんだよ、!ナースコール押して教えてくれれば、!』
声は優しいが、その奥に『(何を…言っているんだ、?)』という呆れが少し混じる。
『んで、どした?なんかあった?』
〇〇は視線を床に落とし、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「…ちょっと不安になっちゃって。そしたら心臓がドキドキしてきて、止まらなくて苦しくなってきて…」
その言葉を聞いて、 深澤先生の中で何かが腑に落ちた。
『(やっぱり、この子は人に頼るのが苦手なんだな)』
昼間もそうだった。
あれだけ大きな苦しい発作が出ていたのに、
助けを求める声を出す前に我慢していた。
真面目で、
礼儀正しくて、
多分人に迷惑をかけたくない子。
けど、それが命を危険に晒すこともある。
『そっか…とりあえず1回部屋戻ろう。目黒先生呼ぶ?俺でも大丈夫?』
〇〇は迷いながらも、微かに首を横に振った。
「お忙しくなければ…大丈夫です。」
深澤先生は小さく笑った。
『お忙しくなければ、ね。…じゃ、少し診るね。』
そのまま〇〇を病室まで送り、脈拍、呼吸などを確認。
穏やかな声で『大丈夫、大丈夫』と繰り返すうちに、〇〇の胸の動きも少しづつ落ち着きを取り戻していた。
『(…この子、ちゃんと気にしてあげないと我慢しちゃうからな〜、)』
そう思いながらも、深澤先生は静かに病室を離れた。
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