テラーノベル
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夜が過ぎ去っていつも通りの朝。昨夜はあの後呉宮先生を見送ってお別れした。お別れと言っても次の日学校では会うのだけど。校門を通る生徒たちに挨拶をしながら自分も職員室に向かう。俺はまだ入ったばかりなのに、生徒たちには懐かれてよく話しかけてくれて嬉しい。
「おい、何ダラダラと歩いているんだ。生徒と話す暇があったら仕事をしろ」
げっ…呉宮先生だ。切り替えすごいな。学校は学校で厳しいモードになるんだ。せっかく喜びを噛み締めていたのに一気に現実に戻されてしまった。でもあの夜の姿を知っていれば前よりかは怖くないかもしれない。
職員室に入り自分の席に荷物を置くと、いきなり背後から声がかけられた
「冴島くん、お願いがあるんだけど」
教頭先生の声だ。滅多に関わることがなかったので少し身構えてしまう。問題児の対応を任されたりするのか?
「はい、なんでしょう」
「今年は校外学習で遊園地に行くんだけど、それの事前調査に行ってくれないかな?」
「自分だけでいってどんな所か確かめるってことですか?」
「うんうん、そんな感じ。でもひとりじゃないよ」
「ほかの先生も来てくれるんですか?」
「それが呉宮先生と二人なんだ」
「え…」
「ごめん、苦手だったかな?」
「いえ、そんなことは無いです。でも何故彼と自分が?」
「呉宮くんは学年主任だからいってもらいたいんだけど、呉宮くんと話せそうな人が冴島くんくらいしか居なそうでね」
「そうなんですか…」
「任せても大丈夫?」
「大丈夫です!ありがとうございます!」
「じゃあ2日後にお願い」
大丈夫なわけが無い。怖い普段の呉宮先生と二人きりで遊園地なんて生き地獄に決まっている。断りたかったけど、これで偉い先生からの信用を失いたくもない。ここは我慢して地獄を味わう道を選んだ。
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「一緒に行くのが俺で悪かったな」
二人バス席に座って遊園地までの道のりを揺られている。呉宮先生の発言にはどう反応していいか分からなかった。
「もっと辛いこといっぱいあるんで大丈夫ですよ」
「ん?そんなに俺といるのが辛いのか」
「あ、違います!!」
「まあいい。俺が嫌われてるのが悪いんだ」
「…俺がいるじゃないですか。そんなに心配しなくても」
「お前とは仲良くならなくていい。」
「ちょっと、酷くないですか。」
「どうしたら冴島みたいに周りの人と話せるようになれるのかが知りたい」
「うーん、呉宮先生はまずオーラが怖すぎますね」
「は?」
「ほら、怖い。もう少し優しい言葉遣いにすれば俺みたいにモテモテですよ」
「全然参考にならない」
呉宮先生の相談に乗っていたらあっという間に遊園地まで到着してしまった。
「遊園地とかほぼ行ったことないから楽しみ方が分からないんだが」
「そうなんですか!?」
「見たらわかるだろう。勉強しかしてこなくて青春を楽しめなかった」
「じゃあ今日は俺と楽しんじゃいましょうよ!」
こういう所の定番といえばなんだろう。まずは呉宮先生に面白いカチューシャをつけさせたいな。
「呉宮先生、あれ付けたら似合うんじゃないですか?」
「正気か?いい歳した奴があんなのつけて気持ち悪がられそうだが」
「平日の午前中だし誰も見てませんよ」
「誰も見ていなくてもだな…」
「あ、俺ですか?先生顔いいんでなんでもにうと思いますけど」
「……お前が言うなら仕方ない」
恥ずかしがりながらも俺が買ってきた猫耳のカチューシャをつけてくれた。一応学校の行事の調査だからスーツを着ている。そのせいで無理やり猫耳をつけられたイケメンサラリーマンみたいで面白い。俺だけだと恥ずかしいと言われて、自分用にくまの耳のカチューシャも買った。
「何します?」
「別に乗り物に乗らなくたって外から調査できるだろ」
「そうですか?もしかして、ジェットコースターとかお化け屋敷が怖いだけじゃないですよね」
「ん、?あぁ」
「じゃあまずはお化け屋敷ですね!」
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