『あーー。クラス替えしたい』
「それ毎日言ってて飽きへんの?」
『……飽きへん』
新学期からもう一ヶ月ほど経った。身体検査やら一年生の部活見学やらで大変だった日々が去り、やっと落ち着いてきた。
昼休み、購買でいつものフルーツサンドと自販機にて牛乳を購入し、静かな教室に戻る。昼休みを共に歩んできた牛乳ももう残りわずかでズズズズズとラストスパートをかける。
「…きたな。てかぶっさ」
『そんなこと言わんとってよ』
そんなどうしようもないことを毎日聞いてくれて、今若干罵ったのは私の唯一できた女友達、みっちゃんである。みっちゃんとは1年のときから同じクラスで、学校にいるほとんどの時間一緒にいる。まあ、あれだ。親友というやつだ。
「でも侑くんのこと嫌い言うとるけど何やかんや面倒見とるよな」
飲み終わってしまった牛乳のパックをゴミ箱に捨てながらみっちゃんの話を聞く。
『いや、……そう?』
今までのこと…というかここ最近のことを思い出しただけでも見に覚えがありすぎて最後まで否定するのを止めた。
「せや。テスト期間になると毎回バレー部誘ったりして侑くんの勉強みとるし」
『…………』
「調理実習とか馬鹿にしながらもちゃんと教えとるし」
『……なんでみっちゃんそんなみてるん?』
「おもろいやん、自分ら」
親友に指摘され、自分で思っていた以上に侑の面倒を見ていたことに気づく。
「嫌いなら距離取ればいいのになんで一緒におんの?」
グッ……。私の前の席に座り後ろを向きながらメロンパンを頬張っている親友に図星を突かれて何も言えない。
『なんっちゅうか…放っておけへんっちゅうか…』
「弟みたいな?」
『それや』
親友ちゃんの言葉にしっくりきて、何となくスマホを開くとナイスタイミングで角名からのLINEがきた。
<数学の教科書貸して>
<え、忘れたん?>
と返信すると、yes!という角名が送るにしては違和感のある元気なスタンプが返ってきた。しょうがない…数学の先生怖いし。と思い席を立つ。
『ちょ、角名に教科書貸してくるな』
「おー。…てか○○バレー部となんでそんな仲ええの?」
もう食べ終わったらしいメロンパンの袋をゴミ箱に捨てながら質問する親友ちゃん。
『いやぁ…なんっちゅうか…ことの流れっちゅうか』
「なんで今日そないに曖昧なん?分かるように説明しぃ」
今日のお前ダルいで。と不意に関西弁つよつよパンチをくらい、さっきの侑のことやらで私のHPがどんどん削られていく。親友ちゃんには教科書届けたら説明します…。と伝え角名のいる2年1組へと足を運ぶ。
-1年前-
入学式早々喧嘩した女がおるらしいで!と2・3年の先輩方にも伝わり、噂される毎日にも慣れてきた頃、教室の扉から覗く侑の友人らしき人物が侑含め4人見えた。見ていれば何やらコソコソと私のことを言っているようだ。
『あのー、なんですか?』
「あ、気づいた」
私が声をかければ、前に見た侑にそっくりの男が言う。…この距離で気づかない人おらんやろ…。と心の中でつっこむ。
「でもビックリした。もっとオラオラってした人やと思うとった」
かわいいやん。と更に続けるのは少し色素の薄い髪色の男。悪い奴ではないらしい。そして照れる。
『いやー、そんなでも』
「いや、そんなんとちゃう。こいつはゴリラや」
そしてさっきまでダルそうにしていた人がスマホを構える。侑のゴリラ発言にイラッとし、いつものように思い切り殴る。
「いっっっったいわっっ!!!何すんねん!!!!」
『罪と罰や』
「ドフトエフスキーやめろ」
そんな二人の会話を聞いていた3人はおもろ。と笑ったりといつの間にか打ち解けていた。聞くとあの4人はバレー部で結構な実力らしい。
それから1年が経ち、なんやかんやでずっと一緒にいる。そんな思い出話に少しにやけ、同じクラスの治と話している角名に教科書を届けた。角名からはありがと。という言葉が返ってきた。治は何か思い出したように
「あ、なあ○○。今日銀と角名と侑でファミレスでテスト勉強するんやけど一緒に行かへん?」
と告げた。どうやら今日の部活はオフらしい。じゃあ行かせてもらうな。と言うと放課後待っとる、という返事が返ってきた。
それから親友のみっちゃんの待つ2年2組の教室に戻り、さっきのバレー部と仲良くなった経緯を話す。そして昼休みは終わり、放課後を待つ。
コメント
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ああー!!見遅れたー😭やっぱり面白いです!主さんの作品!