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榎本くもり
11,214
Sea Otter2026
38
NAL
97
四話目です 投稿頻度が早いのは数人で物語を書いているからです
四話目もお楽しみください
12歳になった私の身体は、もはや私だけのものではなくなっていた。 母親は完全に「混ざりきって」しまい、2年前にただの肉塊となって崩れ落ちた。それを「病死」として処理した父親も、今では生ける屍のようになり、虚ろな目で家の中を徘徊している。 怪異の次の標的が、私自身であることは明白だった。 鏡の前に立つと、自分の変わり果てた姿に吐き気が込み上げる。 右腕はすでに、少年の瑞々しい肌を失っていた。第12回目の人生で裏切ったあの男の、死後硬直を起こしたかのように青白く、ゴツゴツとした大人の腕へと強引に作り変えられている。太い血管がドクドクと不自然にのたうち回り、皮膚のあちこちから、腐敗した肉の汁がじわじわと滲み出ていた。 そして何より恐ろしいのは、夜が来るたびに訪れる「主導権の喪失」だった。(……動く、な。私の身体だ。勝手に動くな……!) 深夜、ベッドの中で私は心の中で狂ったように叫んでいた。しかし、私の脳が出す命令は、肉体に届かない。 私の右腕が、まるで独自の意志を持った生き物のように、ベッドからむっくりと起き上がった。手の平に埋まったあの『眼球』が、暗闇の中でギョロギョロと狂ったように回転している。 右腕は、私の意思を完全に無視して、枕元に置いてあった錆びた肥後守(折りたたみ小刀)を掴んだ。 ザリ、ザリ、ザリ。 鋭い刃先が、私自身の左腕の肉に突き立てられた。 悲鳴を上げようとしても、声帯まで前世の何者かに握られているかのように、喉からは「カハッ、カハッ」という空気の漏れる音しか出ない。 右腕は、まるでキャンバスに絵を描くような手つきで、私の左腕の皮膚を切り裂いていく。激痛が脳を白く染めるが、意識を失うことすら許されない。刃が肉を削ぐたびに、生温かい鮮血がシーツにドボドボと溢れ、肉の焼けるような、酸っぱい血の臭いが部屋に充満した。 やがて右腕は小刀を置くと、血塗れの左腕の「傷口」に、自らの指をズブズブと突っ込んだ。 肉を掻き分け、骨を指先でガリガリと引っ掻きながら、傷口を無理やり左右に大きく押し広げていく。メキメキと皮膚が引きちぎれる生々しい音が、静寂に響く。 押し広げられた真っ赤な肉の裂け目の奥。そこには、私の骨や筋肉ではなく、信じられないものが詰まっていた。 ――びっしりと敷き詰められた、無数の、人間の『歯』。 それは第45回目の人生で、私が拷問の末に全ての歯を叩き折って殺した、ある政治犯の歯だった。 私の肉体の内側は、とうの昔に、過去99回の人生で積み重ねた「死体の山」で満たされていたのだ。左腕に新しくできた肉の「口」が、血をダラダラと滴らせながら、ガチガチと不揃いな音を立てて咀嚼(そしゃく)の真似事を始めた。 その時、頭の中に直接、あの親友の、そして見知らぬ無数の死者たちの笑い声が響き渡った。『あと少しだ。あと少しで、全員分の肉が揃う』『お前が殺した数、お前が死んだ数、全部混ぜて、新しいお前を作ってやる』 100回目の肉体は、ただの「器」に過ぎなかった。 過去の怨念という濁流に呑まれ、私の自我がドロドロに溶けて混ざり合っていくのを、私はただ恐怖の中で自覚し続けるしかなかった。
コメント
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うわっ…めっちゃ怖い…!😱でも続きが気になりすぎる!! 特に「左腕の肉の裂け目にびっしり歯が詰まってる」描写、脳裏に焼きついて離れない…。第4話で明かされた肉体の秘密、過去99回の人生の“死体の山”で満たされてるって発想がエグすぎてゾクゾクしたよ🫣💦 自我が濁流に飲まれてく感覚、すごく生々しく伝わってきた…!この先どうなっちゃうの!?次も絶対読みます🔥