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「なぁ純。お前、今日この後……時間あるか?」
豪は奈美の姿を、視線で追い掛けていた。
「あるけど、社に戻らなくていいのか?」
「いや、今日は直帰だ。もし時間があるんだったら…………飲みに行かないか?」
「お前から飲みの誘いなんて珍しいな。いいよ。今日は女と会う予定もないし、豪に付き合うよ」
純が女にだらしがないのは、今も変わらないような口ぶりだ。
「純、お前、相変わらず女を取っ替え引っ替えしてんのか?」
「うるせぇな。お前も女がいない時はワンナイトとかあっただろ? まあ、その辺の話は飲みながらするか」
立川駅周辺にある居酒屋で待ち合わせする事にし、豪は一足先に居酒屋へ向かった。
***
「お疲れ」
「乾杯」
豪と純は生ビールで乾杯して喉に流し込み、適当に注文しておいた一品料理をつまむ。
週末の居酒屋は、一週間の疲れを癒し、ストレスを発散する人たちで賑わっていた。
ヤツと飲むのは、二ヶ月半ほど前だろうか。
あの時は、当時付き合ってた彼女と別れた事を、報告したような気がする。
二人の会話は、工場見学の事もあり、仕事の話からスタートした。
「しかし、向陽商会の方々に、うちのトナーが好評とは。頑張って試作品を作った甲斐があったな」
「低価格でコスパが高いからな。お前に相談して、マジ良かったよ」
「まぁ、これからもよろしくって事で」
再び、ジョッキをかち合わせる男二人。
更に、仕事を通して再会した、豪の好きな女、奈美。
まさか、純が彼女の上司だったとは。
作業場で奈美と再会し、目が合った時の、一瞬にして時間が切り取られた感覚を思い出す。
人と人の繋がりは、もしかしたら『灯台下暗し』なのかもしれない。
(純なら、奈美の事を色々聞き出せるだろうか……?)
こんな事を考える豪は、親友を使った狡いヤツなんだろうな、と呆れてしまう。
「おい豪、さっきから黙ったままだな。どうした?」
純に声を掛けられて、ハッとする。
好きな女の事を、女にだらしない純に聞くのもカッコ悪いかもしれないが、彼女の事をもっと知りたい豪は、恥を忍んで彼に打ち明けた。