テラーノベル
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あの日から、一週間が過ぎた。
俺は何度も、あの町を歩いた。
図書館。
川辺。
ひまわり畑。
俺が依鈴を案内した場所を、一人で歩いた。
けれど、どこにも依鈴はいなかった。
「……本当に帰ったんだな」
図書館の窓際。
依鈴が座っていた席を眺めながら、俺は小さく呟いた。
机の上には、あの日話していた小説家の本。
ページを開いてみる。
けれど、文字は頭に入ってこない。
目で追っているはずなのに、思い浮かぶのは依鈴のことばかりだった。
初めて見たときの横顔。
図書館で見せた笑顔。
俺と歩いた田舎道。
そして、夏祭りの夜。
――「……どうかな」
あの言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
来年も、ここにいるのか。
聞いたのは、それだけだった。
もっと聞けばよかった。
どこに住んでいるのか。
いつ帰るのか。
連絡先くらい、聞いておけばよかった。
「……俺、何やってんだろ」
自分でも呆れてしまう。
たった数日、一緒に過ごしただけだ。
それなのに、どうしてこんなに気になるんだろう。
スマホを取り出す。
連絡先に依鈴の名前はない。
当然だ。
俺は彼女の名前しか知らない。
それでも、もう一度会いたいと思った。
やがて、祖母の家から帰る日が来た。
最後に俺は、あの神社へ向かった。
石段を登る。
頂上から見える町は、夕焼けに染まっていた。
あの日、依鈴と並んで見た景色。
俺はしばらく何も言わずに眺めていた。
「……また来年」
誰もいない神社で、そう呟いた。
返事はない。
それでも、来年もここへ来ようと思った。
依鈴がいるかどうかなんて分からない。
それでも、あの夏を忘れたくなかった。
――だけど。
結局、俺は次の夏にも、その次の夏にも、この町へ戻ることはなかった。
大学生活に追われ、友達と過ごし、勉強をして、普通の日々を送った。
それでも、ふとした瞬間に思い出す。
夏風に揺れる黒い髪。
少しだけ笑う横顔。
そして、あの日の言葉。
「……どうかな」
あれから二年。
俺はもう、依鈴に会えるなんて思っていなかった。
あの夏は、もう終わったのだと思っていた。
――このときの俺は、まだ知らなかった。
二年ぶりに見ることになる、あの黒い髪と綺麗な横顔を。
そして、その再会が。
止まっていた俺たちの時間を、もう一度動かし始めることを。
コメント
1件
もう読んだよ〜〜〜😭💦 第5話、めっちゃ切なくて胸がぎゅーってなった…! 主人公が一人で町を歩いて、依鈴のいない図書館の席を眺めるシーン、映像が浮かぶみたいに鮮明でエモすぎた。。「連絡先くらい聞いておけばよかった」って後悔、わかるよ〜〜😭💔 それから2年経っての再会フラグ、この先どうなるのか気になって仕方ない!次話が待ち遠しすぎるよ、純恋さん!🌟
#溺愛
星キラリ

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大根おろし
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#再会
イツカ
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#もしも神様が居るなら
赤虎 鉄馬
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