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「……殺してくれ。いっそ、殺してくれよ…!」
リビングの床に丸まり、健一はガタガタと震えながら泣いていた。
会社での地位、愛人、そして心の支えだった「ナオミ」
すべてを失い、さらにそのすべてを裏で操っていたのが目の前の妻だと知った衝撃。
彼の精神は完全に砕け散っていた。
私は冷めた紅茶を一口飲み、彼を冷徹に見下ろした。
「殺す? そんな勿体ないこと、するはずないじゃない。健一さん、あなたはこれから、私に一生をかけて償うのよ」
「償う……?会社もクビになって、金もない俺に、何を…」
「まずは、その汚れた体で家の床を汚さないで。今すぐ風呂に入って、明日からは私が指定した『仕事』をしてもらうわ」
◆◇◆◇
翌朝
健一が起きてくると、ダイニングテーブルには一枚の「誓約書」が置かれていた。
一、外出は一分一秒の狂いなく報告すること。
二、私の許可なくスマホに触れないこと。
三、家の中のあらゆる雑用を完璧にこなすこと。
四、これらに背いた場合、即座に両親と元会社、さらにはネット上にすべての恥部を拡散する。
「……これ、本気か?俺を奴隷にするつもりか?」
「あら、あなたは私を『家政婦』としてキープしようとしたじゃない。立場が逆になっただけよ」
私は優雅にメイクを仕上げながら、彼に命じた。
「今日からあなたは、この家の『掃除婦』。這いつくばって、床の隅々まで磨きなさい。……ああ、それから」
「ナオミにも協力してもらってSNSにアップする写真を撮るから、協力してね」
「……っ!!」
健一の顔が屈辱で歪む。
けれど、彼に拒否権はなかった。
里奈に暴かれ、社会的信用を失った今の彼には
奈緒に追い出されれば、行き倒れるか、里奈に刺されるかの道しかない。
「あ、それから、里奈さんから連絡が来ているわよ」
私はスマホの画面を彼に見せた。
そこには『健一の親の連絡先、突き止めたわ。今から乗り込む』という里奈からのメッセージ。
「ひっ……! 奈緒、止めてくれ! 親だけは巻き込まないでくれ!!」
「なら、私の言うことを聞きなさい」
健一は泣きながら雑巾を手に取り、床に膝をついた。
かつて「生活感に押しつぶされそう」と私を笑った男が
今、一番泥臭い生活感の中に叩き落とされている。
私はナオミとして、新しく購入した美しいヒールを履き、その横を通り過ぎる。
「しっかり磨いてね、健一さん。ピカピカになったら、ナオミが『ご褒美』に、あなたの醜い姿を世界に発信してあげるから」
カツ、カツ、とヒールの音が響く。
地獄の二世帯生活。
本当の仮面劇は、正体がバレてからが本番だった。
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#大人ロマンス
#サレ妻